激戦区で行列ができる店はハズレがない
秋葉原といえば、JR山手線・総武線・京浜東北線に東京メトロ日比谷線、つくばエクスプレスが乗り入れ、都営新宿線岩本町駅からもすぐという、都内でも屈指の交通の要所。通勤通学や乗り換えで利用する人も多く、駅周辺には数え切れないほどの飲食店が立ち並んでいる。
そんな中で、ハズレなしの大満足ランチが食べたい! と思ったら、やっぱり繁盛していて回転のよい店が狙い目だ。というわけで、よく行列ができていると聞く『秋葉原漁港 快海』に向かうことに。
秋葉原駅から昭和通りを北に向かって進む。3分ほど歩くと、快海と大きく書かれた看板や提灯が見えてきた。開店前でもあり、この日は運よく一番乗りだった。
開店を待ちながら、店先にある手書きのメニューで本日のランチをチェックすると、見事に魚・魚・魚のオンパレード。店のプライドがビシビシ伝わってくるラインナップに、早くも胃袋が反応している。
ウナギ丼も含めて、ほとんどの定食や丼が1000円以内、煮物や揚げ物に小刺盛がついている。本日の目玉、サワラフライ定食やあら煮定食にもそそられるけれど、この日は評判の高い特選海鮮丼と心に決めて訪れた。
店内に足を踏み入れると、シンプルで落ち着いた佇まい。ランチ時は開店10分で満席になることもあるけれど、男性サラリーマンが多いためか、行列していても回転はよいとのこと。時間の限られるランチ時、回転のよさは味や価格とともにはずせない店選びの条件だ。
特選の名にふさわしい豪華な海鮮丼
特選海鮮丼は、直径20㎝はあろうかという大ぶりの丼に、まずすし飯を敷き詰める。白い大海原のようなたっぷりのすし飯に刻みのりをぱらりと振り、その上に並ぶのは豊洲市場から毎朝届く魚を店で仕込んだ鮮度抜群の刺し身だ。
「その日の仕入れによって、特選海鮮丼の中身は変わります。マグロ、タイ、ハマチ、ヒラメ、赤エビ、サワラ、ホタテ、サーモンなど、10種類以上は並びます」と店長の髙安さんは語るが、実物はそれをはるかに超える大盤振る舞い。
大きな丼を埋め尽くす刺し身の種類の豊富さに圧倒される。まさに特選の名にふさわしい、豪華な海鮮丼だ。
ランチでしか味わえない特選海鮮丼には、さらにたっぷりの生野菜サラダとみそ汁も付く。豪華なのは見た目だけではない。毎朝豊洲市場から届く鮮魚を店で仕込んで作られた海鮮丼をじっくりと味わってみてほしい。普段食べているお手頃な海鮮丼との違いに驚くはずだ。
しかも、タイは生だけではない。脂ののった皮目を香ばしく焼いた炙りと両方が楽しめる。食べても、食べても、まだあるというボリュームと満足感も半端ない。この特選海鮮丼のためならば、わざわざ足を運びたくなる。なるほど、行列が絶えないわけである。
とびきりの鮮魚を低価格で存分に味わおう
それにしても、決して大きくない店構えなのに、魚の質と鮮度は高級料理店にも引けを取らないのはなぜなのか。
「『快海』の社長の石居は、もともと鮮魚店を営んでいました。こんなに新鮮で旨い魚を、もっともっと多くの人に食べてもらいたいという想いが募り、小伝馬町に1人で切り盛りできる店を開いたのです。12人も入れば一杯という小さな店は繁盛して、この秋葉原店、さらには日本橋にも店舗が増えました」と髙安店長。
『快海』のコンセプトとは、豊洲市場で新鮮な魚を毎日仕入れて、自店で仕込んで安く提供すること。素人は、どこの店も生魚を買ってきて仕込むのではと思うけれど、加工品を使っているところも少なくないのだとか。
「低価格の海鮮丼は、真空パックにされた冷凍品の切り身を必要な分だけ解凍して並べるだけ。そうすれば、ロスもでないし人件費も抑えられる。だから、あの値段で提供できるのです。うちは、魚のプロである石居が選び抜いたものを毎朝店でさばく。生にこだわっています」と髙安店長。
そのこだわりが味の違いとなって、常連客の胃袋をがっちりとつかむのだ。値段と見栄えに引きずられて、いつの間にか魚の本当の味を忘れていたかもしれないと、ふと思う。
豊洲市場から魚が届くのは、毎朝10時半過ぎ、ときには11時近くなることもある。そこから11半の開店までは、息つく間もないほどの忙しさ。男たちの真剣勝負が始まる。
「銀座の割烹に行って食べる料理を、うちみたいな居酒屋で。同じものとは言わないけれど、近いものを低価格で味わってほしい」と胸を張る髙安店長。その心意気に痺れる。
生にこだわりながら低価格を維持するため、頭やアラ、カマなども、徹底的に生かす。そこから生まれるメニューにも載らない超目玉の裏メニューがあるという。
「その時しか提供できない、表のメニューには載せられないほどの数量限定。ときどきTwitterでつぶやいていますよ」と、とっておきの情報を教えてもらった。
お宝メニューに遭遇した常連さんのつぶやきも有力情報。秋葉原でランチできるときは、忘れずにチェックして訪れたい。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=松本美和