観音さまパワーのなせるわざ?観音堂と天然温泉
JR宇都宮線東鷲宮駅から徒歩3分、電車で気楽に来られる日帰り温泉施設。開店は朝8時なので朝風呂もOKだ。同じ敷地内に、百体の観音さまが安置される観音堂があるのが特色。というよりも、観音堂のあったところに温泉が湧いた、大変に霊験あらたかな温泉なのだ。
百カ所の観音霊場をめぐる「百観音霊場巡り」が盛んだったのは江戸時代。しかし、霊場めぐりで全国を旅するのは今よりもずっと難しい時代だったのが想像される。百観音温泉の会長である白石さんのご先祖は観音信仰にとても篤く、自ら板東三十三札所、西国三十三札所、秩父三十四札所の百観音を巡り、各所のお札と砂を集め、自宅に観音堂を建立したほど。ここだけで百観音が巡れるとあって地元で評判となり、今でも地元の人の信仰は篤い。
その後、観音堂はなくなったものの、観音さまを受け継いできた白石さん。若い頃から常に温泉に興味があったそう。通産省や科学技術庁のデータを丹念に調べ、かつて観音堂が建っていた場所には100%温泉源がある!と確信。反対していた家族を数年かけて説得し、1999年掘削を開始した。掘削は思いのほか順調で、予想通り温泉が噴出!しかも、そのお湯は質が高く、全国でも有数の湧出量を誇る。これはもう観音さまのご利益と言わざるを得ないだろう。白石さんは、敷地内にあらためて観音堂を建立し、以前にもまして大切に祀ることにしたという。
すべての項目で5つ星!ハイグレードなお湯がたっぷり楽しめる
日本温泉協会が評価するのは、源泉・泉質・引湯・給排湯方式・加水・新湯注入率の6項目。こちらのお湯は、なんと全てが満点の5つ星というすばらしいお湯。ここまでハイグレードなお湯は全国でも20件に満たないのでとても貴重だ。
泉質は、なめるとちょっとしょっぱいナトリウム-塩化物強塩温泉(高張性・弱アルカリ性・高温泉)。この源泉を薄めることなく適温に冷まして浴槽に注ぐため、成分濃度が高く、さらに温泉成分が吸収されやすいという特長を持つ。これは高い効果が期待できる。
浴室は大きく分けて2つ。阿弥陀の湯と菩薩の湯があり、週毎に男女が入れ替わる。まずはどちらにもある晴天風呂という屋外エリアから紹介しよう。大きな石風呂には天然温泉が満々と張られていた。広い空のもと、自然豊かなお湯に入る開放感。思わずほうっとひと息。贅沢にたっぷりかけ流される湯で、体の芯からあたたまる。熱くなってきたら、隣にある寝転びの湯にごろん。つるりとしたタイルの上で足を伸ばして寝そべると、体の前面では風を感じ、背中は温泉で温かい。適度なクールダウンにぴったりだ。
このほかに、高濃度炭酸泉が楽しめる露天の岩風呂、立ち湯、阿弥陀の湯には全身浴のできる湯船、菩薩の湯には半身浴ができる湯船と、どちらにも3つの露天風呂がある。特筆すべきは立ち湯。施設内最高温度の湯船となる46℃で本当に熱い!もっとも源泉に近いお湯ということなので、そーっと入ってみたものの、足先だけで断念。全身浸かることはできなかった。次回はもう少しチャレンジしてみたい。
ぬるめでゆっくりしたいなら高濃度炭酸泉の岩風呂へ。入浴すると、まるでサイダーの中に入ったようにシュワシュワの泡が肌につく。はじめはくすぐったいと思ったが、慣れてくると軽いタッチでマッサージされているような心地よさ。ぬるめだから長湯でき、思わず眠くなってしまうほどリラックスできる。
個室付きの貸切風呂で宿泊気分を味わう
日帰り温泉施設に個室付きの貸切風呂が5部屋もあるのは珍しいのでは。オーダーすれば食事も部屋で食べられるので、部屋風呂のついた温泉旅館に宿泊した気分だ。風呂から上がってすぐ畳に寝転べるのも魅力で、自分のペースで贅沢な時間が楽しめる。
浴槽は客ごとに清掃と温泉の入れ替えをするため清潔で安心。子どもや高齢の方と一緒に、ゆっくりと温泉を楽しめるのもうれしい。
やさしく見守る観音さまが各所に
風呂上がりは、リクライニングチェアと畳のスペースがあるお休み処へ。癒やしのリラックスタイムを十分楽しんでお腹が空いたら1階のお食事処「松竹亭」へ。旬の食材を使った料理が評判でメニューも豊富。たっぷりと栄養を取って、日頃の疲れを回復しよう。
ふと見回すと、随所で観音さまがやさしい眼差しを向けていることに気づいた。入浴後ずいぶん経ってからも、肌はしっとりすべすべ、体はぽかぽか。さすが観音さまの霊験あらたかな湯だなあと実感した。
取材・⽂=ミヤウチマサコ 画像提供=百観音温泉