祭りのにぎわいを感じる温浴施設
西武秩父駅に直結した複合型温泉施設。改札の先に物販エリアの「ちちぶみやげ市」、その奥にフードコートの「呑喰処 祭の宴」、最奥部に温泉エリアの『祭の湯』があり、3つのエリアを総称して『西武秩父駅前温泉 祭の湯』と呼ぶ。
秩父地域には、京都祇園祭、飛騨高山祭とともに日本三大曳山祭の1つに数えられる秩父夜祭をはじめ年間300以上の祭がある。この施設は、秩父の名物ともいえる“祭”をコンセプトにしており、随所に祭りのにぎわいを感じさせる意匠が施されている。
赤いのれんが掛かり、唐破風(からはふ)屋根をのせた玄関から館内に入れば、板張りの床や天井など木を多用した内装が気持ちよい。フロントで下足キーを預け、リストバンドを受け取る。これで館内の精算ができるので財布を持たなくてもいい。
入館料にタオルは含まれていないので、持っていない場合はタオルセット1220円(入館料+フェイスタオル・バスタオル付き、土・日・祝・特定日は1330円)、または館内着セット1360円(入館料+フェイスタオル・バスタオル+館内着付き、土・日・祝・特定日は1470円)の利用を。岩盤浴を利用する場合もここで申し込む。390円(岩盤浴着付き。土・日・祝・特定日は450円)。
武甲山が見える露天風呂は広々として開放感抜群!
浴室は2階にあり、内湯には女湯6つ、男湯5つ、露天には男女各4つの風呂(サウナを含む)がある。特筆すべきは広々とした露天エリア。秩父の名峰・武甲山が眺められ、時折聞こえてくる駅のアナウンスにも旅情を誘われる。
地下約2000mから湧出した温泉は含よう素-ナトリウム-塩化物冷鉱泉。露天の岩風呂にこの温泉が利用されている。このほか露天エリアには花見湯、寝ころびの湯、つぼ湯があり、最も大きな花見湯では全国各地の有名温泉の湯が再現されている。露天エリアには外気浴にピッタリなイスやベンチが置かれているので、ひと休みしながら湯巡りを楽しむといい。
高濃度人工炭酸泉でくつろぎ、岩盤浴で発汗する癒やしのひと時を
内湯のメイン浴槽は高濃度人工炭酸泉。文字どおり炭酸が濃いため、入浴するとすぐに気泡が肌にまとわりつく。体内に浸透した炭酸ガスは血管を拡張する効果があり、血行促進や美肌効果が期待できるという。ぬる湯なのでゆっくり浸かれるのも気持ちよく、のんびりした気分で入浴できる。
このほかシルク湯、ジェットバス、水風呂、サウナがあり、女湯には塩サウナも備える。洗い場も広く、1つの洗い場ごとに仕切りがあるので、隣に人がいても気兼ねなく利用できる。
湯上がりは館内でひと休み? それともフードコートで食事?
湯上がりはテレビ・コンセントが付いた全38席のリクライニングシートが並ぶくつろぎ処へ。リクライニングは電動で深く倒すことができるので、ゆったりとくつろげる。隣接する寝ころび処は畳敷きなので仮眠するならここへ。
プレミアムラウンジは座席指定制の有料ラウンジ。男女共用13ブース・女性専用8ブースがあり、半個室型のリクライナーを設置しているので周りを気にせず休憩できる。中学生未満は利用不可。2時間550円(土・日・祝・特定日は770円)。
湯上がりの一杯や食事を楽しむならレストラン「秩父湯台所」へ。秩父名物わらじかつ丼やもりそばなどのほか酒肴も多い。
フードコート「呑喰処 祭の宴」には、わらじかつ丼や炙り味噌豚丼、武蔵野うどん、秩父そば、ラーメン、味噌ポテト、ジェラートなどの秩父名物の店が並ぶ。秩父は酒処としても知られるが、地酒やワインなどが豊富にそろう「酒匠屋台」には立ち飲みコ-ナーもあり、軽く一杯やることもできる。
仕上げは秩父の特産品や銘菓などを販売する「ちちぶみやげ市」で買物を。駅に隣接しているので、列車の出発時間間際まで買物を楽しめる。
「駅前にあり、気軽に立ち寄れます。周辺には秩父夜祭が行われる秩父神社や夜祭の山車(だし)や笠鉾(かさほこ)を展示する秩父まつり会館などがあり、羊山公園の芝桜やいちご狩りなど季節の花やイベントも楽しめます。秩父観光にお越しの際はぜひ、温泉で疲れを癒やしてください」そう話すのは事業統括部の宮内靖代さん。
かつて秩父には手軽な日帰り温泉がないといわれていたが、2017年4月に『西武秩父駅前温泉 祭の湯』がオープンしてから、行楽の形態が変わったとさえいわれる。つまり、日帰り温泉に立ち寄ってから帰途に就くということができるようになったのだ。
この施設の最大の特徴は、観光地の拠点駅にあるということ。つまり、客の大半は行楽帰りなので訪れる時期や曜日、時間帯が重なり、どうしても行楽シーズンは混雑する。露天風呂から眺める武甲山は混雑していても訪れたいほどの魅力があるが、純粋に温泉・入浴を楽しむなら、できれば平日を選びたい。
取材・文=塙 広明 写真=西武秩父駅前温泉 祭の湯