東京の菜食カフェとしては古株?多様さを受け入れる高円寺でオープン

高円寺のエトアール通りにあるスーパー、西友の斜向かいにある建物の2階。入り口の階段を登る前からほんわかした雰囲気が感じられる。店内に入ると木を多用した暖かみのあるインテリアと、ドライフラワーや幼児用の椅子が並んでいるのにも和む。

『meu nota』のオーナーシェフ、伴奈美さんはさまざまなジャンルのレストランやカフェなどで料理人としての腕を磨き、飲食店の立ち上げや商品開発を経験。長く住んでいて、住みやすさに魅力を感じていた高円寺で『meu nota』をオープンした。

オーナーシェフの伴奈美さん。
オーナーシェフの伴奈美さん。

以前働いていた飲食店はベジタリアンメニューに力を入れた店だった。業務の知見を得るために訪れたニューヨークで、印象的だったのがヴィーガンのレストラン。野菜や穀物を中心としたヴィーガン(菜食)の料理なら、どんなレベルのベジタリアンでも、アレルギーの人も、お肉が好きな人も一緒に食事ができる。そんな空間を東京にも作りたいと、ヴィーガンカフェとして目標だった独立を果たした。

当時の日本ではベジタリアンやヴィーガンといった言葉はまだあまり知られていなかった。「高円寺は個性的なお店が多いから、菜食のお店もすんなり受け入れてもらえそうだと思いました」と伴さん。長く住んでいた高円寺には、新しいものや少し変わったものがなじみやすい空気があることを感じていたのだ。

いろんな調理方法や思いがけない組み合わせで飽きない人気ランチ

ヴィーガン ミールス1380円。野菜のココナツカレーと焼き芋とキノコのカレーがメイン。
ヴィーガン ミールス1380円。野菜のココナツカレーと焼き芋とキノコのカレーがメイン。

ランチの人気メニューはヴィーガン ミールス1380円とベジ&グレイン デリ プレート1250円。どちらもワンプレートだが、その日によって内容は異なる。

ヴィーガン ミールスは南インドでよく食べられるカレーがメインの定食で近頃日本でも人気。カレーが2種類にアチャール、そして豆を使ったチップスのようなパパドなどが並ぶ。よく見かけるスタイルだが、中身をひとつずつ見るとおもしろい。例えば、カレーのひとつは焼き芋とキノコのカレー。甘味が増すからとわざわざさつまいもを焼き芋にしてからカレーにしている。また総菜の中にはピーマンのコリアンダーシードと白味噌のソテーというのもある。和の食材である白味噌とコリアンダーシードを合わせるとは、そう簡単に思いつきそうにない。

ベジ&グレイン デリ プレート1250円。自家製の豆腐やかぼちゃのスープのほか、ブロッコリーのスパイス揚げなどボリュームも。
ベジ&グレイン デリ プレート1250円。自家製の豆腐やかぼちゃのスープのほか、ブロッコリーのスパイス揚げなどボリュームも。

ベジ&グレイン デリ プレートも、玄米ご飯を囲むように総菜が並ぶワンプレート。総菜は、はっとする組み合わせのものが多い。例えば千切りのにんじんといえば、オレンジ風味のサラダが定番だが、海苔と合わせて磯和えに。水菜と油揚げといえば煮浸しがお決まりのところ、水菜は生のままマリネに。ブロッコリーで衣にスパイスを加えた揚げ物はボリュームもある。そのほかカブはオーブン焼き、豆腐は自家製。茹でたり、蒸したり、和えたり、揚げたり。バラエティ豊かな料理が盛り付けられている。

もこもこしたヴィジュアルに心惹かれるビターマサラチャイ500円と色鮮やかなフレッシュフルーツタルト450円。
もこもこしたヴィジュアルに心惹かれるビターマサラチャイ500円と色鮮やかなフレッシュフルーツタルト450円。

スイーツももちろん動物性の食材を使っていない。フレッシュフルーツのタルトは、自家製の豆腐クリームを使っている。ビターマサラチャイは、フォームした豆乳がこんもり。野菜や穀物だけでお腹を満たした後なら、写真映えもするドリンクとスイーツも罪悪感なくいただけそうだ。

ライブに料理教室、YouTubeまで。開かれた居心地のよさも魅力

伴さんの著書。台湾版が出版されたものもある。
伴さんの著書。台湾版が出版されたものもある。

自分でも肉を食べることはあるという伴さん。「ヴィーガンというと、厳格なイメージを持つ人もいるかもしれません。でも、私は野菜が好きでおいしく食べる方法を色々考えているので、野菜が足りていないなと思う時に来てもらえたら」と話す。

音楽好きな伴さんが家族と共有するギターも店内に。
音楽好きな伴さんが家族と共有するギターも店内に。

その言葉の通り、主なお客さんは和めるカフェでヘルシーな食事をしたい人たち。一方で店ではレシピ本の著書もある伴さんによる料理教室が開催されることもあるし、コロナ禍に入ってYouTubeチャンネルも開設。レシピ本やYouTubeを見たことをきっかけに店を訪れる人も少なくない。

野菜不足を感じる人はもちろん、自宅での野菜料理がマンネリ化しがちな人にもおすすめしたい。飽きずに続けられるヘルシーな食生活のヒントが得られるはずだ。

住所:東京都杉並区高円寺南3-45-11 2F/営業時間:12:00~21:30LO/定休日:月・火/アクセス:JR中央本線高円寺駅から徒歩4分

取材・撮影・文=野崎さおり