階段を上った3階、明るくゆったりした客席と高座、上手にはお囃子さん用の小窓まで設しつらえてあって、落語テンションは一気に上がる心憎い演出。広い楽屋も演者にはうれしい。この居心地よい空間のオーナーが、高円寺で長年落語会を開催するダイニングバー『ノラや』の松本さんと知って、すべて合点がいく。新年の杮こけらおとし落公演3日間のラインナップが、古今亭菊之丞と桃月庵白酒、橘家文蔵と柳家小せん、入船亭扇辰と三遊亭天どんという豪華さは、ただ事じゃないと思ってたから。
「山手線沿線に落語会の場所を」そして「若手に使ってもらいたい」という松本さんの思いが結実し、(高田)馬場の(落語の)場という意味が込められた『ばばん場』。基本は昼公演、夜は若手に格安で提供する。
当面の間は週末を中心に催しを行う予定だそうだが、午前中の会や連続講座形式など、演芸を知りつくした松本さんならではのアイデアはいっぱい。超人気の噺家が、普段寄席ではできない噺をかける、“人の勉強会”的な企画も進んでいる。
常駐する番頭さんは、グラフィックデザイナーで、歌舞伎座の裏方経験もある千葉晃永さん。落語会のチラシ作りはお手の物。定期的な落語開催の場が少なかった高田馬場に待望の寄席が生まれた。昼間のちょっとした時間に落語を楽しむプチ贅沢。目の前が神田川というのもいい。講談浪曲漫才コントも……と落語以外の演芸の公演も計画中。
「大人が楽しむ場所になって欲しいんです!」
『ばばん場』詳細
取材・文=高野ひろし 撮影=吉岡百合子(編集部)