隠れ家みたいでわくわく! 路地裏に佇む名店
目黒駅西口から、恵比寿方面へ。googleマップで場所を確認し、線路沿いに行けばたどり着けるだろうと適当に考えながらてくてく歩く。途中“白金桟道橋”を渡って、線路の反対側へ。知らない道を歩くのはちょっとわくわくする。
しばらく進むと道が線路から反れてちょっと不安に。ぐーんと住宅地を大回りすると、前方に跨線橋が見えてきた。跨線橋まで行ったら行き過ぎのはず……。手前の路地を入ってみよう。
民家の角を曲がり、住宅が並ぶ路地をズンズン進んでいくと、どん突きの右側に猫の看板が見えてきた。たどり着きました、『薬膳スープカレー・シャナイア』。
薬膳のきっかけは女性の冷え性を何とかしたいという思い
お店を切り盛りするのは、田部井淳さん・朝子さんご夫妻。キッチンカーでの移動販売を経て、2013年に店舗をオープンしたとのこと。以前は日本画家である朝子さんのお父様がこの場所でアートギャラリーを開いていたそうで、店内のそこここにその名残が見られる。
学生時代を過ごした札幌でスープカレーにはまったという淳さん。大学卒業後IT企業に就職、SEとして働いていたが、スープカレーのおいしさを広めたいとの強い思いから脱サラ。調理師専門学校で基礎を学んだ後、フランス料理店で修業し、自分の味を究めていったという。
また、サラリーマン時代に、まわりの女性の多くが寒がりだということに気づき、女性の冷え性対策として何かできないかと考えたことが薬膳を取り入れるきっかけになったのだとか。中華の薬膳レストランで働くなどして知識を身につけ、“薬膳スープカレー”が完成した。
薬膳のイメージを覆す、深みのあるまろやかなスープ
注文したのは一番人気のチキンと野菜のスープカレー。スープはオリジナル、トマトベース、焼きえびベースの3種類、辛さは10段階から選べる。初めてなので、まずはスタンダードにオリジナルスープをセレクト。辛さは1辛が市販の家庭用ルーの甘口、2辛が中辛、3辛が辛口ぐらいに調整されているそう。
「初めての人は辛さ控えめに注文してもらって、テーブルにあるスパイスで少しずつ辛くして試してみて」と淳さんのアドバイス。では3辛で。コロナ対策で取り入れたというタブレットで注文する。
ところで、スープカレーってどうやって食べるのが正解なんだろう? 前々から疑問に思っていたので、淳さんに聞いてみた。
「スプーンでライスをひと口すくってスープに浸すのがいちばんよくある王道の食べ方ですね。ライスを口に入れて次にカレーを口に入れて、と交互食べるのもありですよ」。ふむふむ。では今日は王道でいってみます。
そして運ばれてきたスープカレー。大きな野菜がごろごろ、色彩豊かでなんと美しい!
さあ、まずひと口。ふわっと甘さを感じた後に、辛さが追ってくる。野菜の甘みも相まってか、とても深みのあるスープだ。“薬膳”でイメージする苦みや食べづらさはまったくない。
野菜はレンコン、ニンジン、大根、ブロッコリー、カボチャ、きくらげ、白きくらげなどに旬のものも加わって、たっぷり10種類以上。ゆでる、素揚げするなど、一つひとつ丁寧に下ごしらえされて盛り付けられる。どれも大きくカットされていて食べ応え十分。
そして、秘伝の黒酒で旨みを熟成させ、圧力鍋で炊かれた骨付きチキンレッグ。スプーンで突っつくだけでほろほろと骨からお肉が離れる。
生薬は紅花、陳皮、クコの実、ナツメなどが入っており、女性の冷え性はもちろん、生理不順にも効果があるとか。さらにスパイスも13~14種類がブレンドされていて、体をポカポカさせる効果抜群。たくさんのスパイスが入っているのにケンカすることなく、バランスのとれたまろやかな仕上がりになっている。
おいしくて体がポカポカになる薬膳スープカレー。スープのベースやトッピングなど、もっともっといろんな組み合わせを試すために、リピート必至!
取材・文・撮影=丸山美紀(アート・サプライ)