奥浅草にある知る人ぞ知る名店
『めん処おばた』があるのは、台東区橋場。都営浅草線の浅草駅からはけっこう離れていて、最近では「奥浅草」といわれているエリアだ。古くから皮革産業が盛んで、最近はおしゃれな工房も多い。
はっきりいって、飲食店は少ないエリア。人通りも少ないのだが、『おばた』には途切れることなく人が入っていく。知る人ぞ知る、人気店なのだ。
『おばた』を経営しているのは、『小幡製麺工業株式会社』という製麺会社。ここで製麺業を始めたのは、大正14年頃のこと。『おばた』を始めたのは1995年頃だという。もともと製麺がメインだったわけだから、駅から離れていても、なんの問題もなかったのだ。そしてこのような立地だから、客のほとんどは地元民かドライバー。地域密着の店である。
ボリュームたっぷりのそば!
製麺会社ならではの気前の良さというべきか『おばた』のそばは、やたらと気前がいい。かき揚げの乗る天ぷらそば410円は丼に麺がたっぷりと盛られ、メインのかき揚げ以外にたっぷりのわかめとネギ、そしてかまぼこまでついてくる。
ずっしりとしたかき揚げは、衣が厚めのタイプ。しかし、ずっしりしているのは、具もたっぷりだからだ。玉ねぎにねぎ、小エビに春菊がちらほら入り、しめじまで加えられている。
このかき揚げをすっきりめのツユにひたしてガブリ。そして細めでのどごしのいいそばをズズッとすするのだが、食べても食べてもそばが減らない。大人の男性でも、そば一杯でかなり満足できるのではないだろうか。
聞いてみると、もともとはここまで量は多くなかったのだという。お客様に喜んでもらえればと、少しずつ増やしていったら、今のようなボリュームになってしまったんだとか。
メニューにはそばうどん以外にも、製麺所直営らしくきしめんやラーメンもあり、丼などのセットものも充実している。毎日、通っても飽きない。『おばた』はそば店ではあるが、町の食堂としても機能しているのだ。
寒くても冷たいそばがおすすめ
さて、製麺所直営、作りたてが食べられるのなら冷たいそばも食べておきたい。評判のいいしいたけそばを頼んでみたら、やはりこちらもゴージャスな仕上がりだった。
しっかりと味のしみたしいたけにキュウリ。さらに温泉玉子が乗ってくるのがうれしい。コシがあって喉越しのいいそばは、ほんのり香りもあって素晴らしいおいしさ。それを玉子の黄身に絡め、さらに今度はしいたけを黄身に絡めと食べすすめると、けっこな量にもかかわらず、ペロリと食べてしまった。
営業時間が9時から14時で土日祝が休み。さらに最寄り駅からそれなりに歩くという、かなりハードルの高いそば店だが、行ってみる価値は十分にある。むしろ、しっかり歩いたほうが、このボリューミーなそばを、おいしく食べられていいのではないだろうか。
取材・文・撮影=本橋隆司