見た目はカメラ屋? 下北沢の風変わりなカレーショップ
下北沢駅から5分ほど歩いた通りに、レトロな雰囲気のカメラ屋の看板が目に入る。お腹が空いているときに、この看板を見て「昔ながらのカメラ屋だろう」と通り過ぎてしまうのはもったいない。なぜなら、『カレーの惑星』という正真正銘のカレーショップだからだ。
表の看板は雰囲気を出すために後から付けられたものなどではなく、実際にもともとカメラ屋だった店舗を改築している。店内は、あえてカメラ屋だった頃から大きく造りを変えず当時の趣を残しているそうだ。
そんな店の雰囲気にマッチするよう、店内の小物などもアンティークで揃えられた。カウンター、テーブル席を合わせても9席というこぢんまりとした店内ながら、こだわりがギュッと詰まった空間となっている。
『カレーの惑星』の店長である星野さんは、この店のことを「“ギャップ”だらけな店」だと話す。店の外から見たイメージと中に入ったイメージのギャップはもちろんだが、どうやらカレーの味わいにもギャップがあるそうだ(そちらは後ほど紹介する)。
店のコンセプトは、日常にちょっとした贅沢をプラスすること。コンセプト通り、ひねりの利いた遊び心のあるメニューの数々は「頑張ったときのちょっとしたご褒美」や「いつもと少し違うデート」にぴったり。この店を経営する株式会社ヒネルの社名も、“頭をひねる”という意味から来ているというので面白い。
まるで小惑星! ガツンとスパイスが効いた2種盛りカレー
そんな『カレーの惑星』で定番なのが、異なる2種類のルーを選べる2種盛りカレー。初めて来店した人におすすめの組み合わせは、店で一番人気の合い挽き肉のスパイシー焦がしキーマ(写真左)と、ひよこ豆とレンズ豆をしっかり煮込んでまろやかな味わいに仕上げた2種類豆と季節野菜のポタージュカレー(写真右)。
キラキラとした華やかな見た目は女性に好まれやすいかと思いきや、意外にも男性ファンが多いと言う。それもそのはず、特にキーマはガツンとスパイスが効いた強めな味付けで、さらにカレーは全種類ご飯の大盛り・おかわり無料。見た目に反し、ご飯をもりもりとかき込める“ガッツリ系”カレーなのだ。
「ご飯が足りなくなっておかわりする方が多いんですよ」という星野さんの言葉どおり、たしかにキーマカレーはガツンとスパイスが効き汗がにじみ出る辛さだった。
キーマは玉ねぎをしっかりと炒めて旨みを凝縮し、あえて粗挽きの肉を使うことで肉々しさを残して食べ応え抜群の一皿に仕上げている。また、スパイシーなキーマの味わいを和らげてくれるのがポタージュカレー。豆と野菜のほんのり優しい風味を感じ、とろみがありながらも後味はあっさりしている。この2種類が合わさることで、強すぎず弱すぎないバランスの良い味わいとなっている。自然とご飯が進むので、思わず“追い飯”してしまう人が続出するのも納得だ。
トッピングにおすすめしたいのは、これまたインパクトのある見た目のスパイシーたまご150円。 5種類ほどのスパイスを使い、酢と炒めた玉ねぎなどを合わせたタレで卵を漬け込むことにより、酸味のある奥深い味わいのたまごに仕上がっている。さらなるアクセントが欲しいときには、追加注文してみてはいかがだろう。
また、同店は“五感すべて”で楽しめる店を目指しているため、カレーを盛る器はすべて職人の手で一枚一枚作られたオーダーメイドのものを使用している。食べるだけではなく、目で見て手で触れることでもこだわりを感じてみてほしい。
肩ひじ張らず、忙しいときでもサッと立ち寄るだけでちょっとした特別感を感じられるのが同店のカレーだ。店長の星野さんは、この店を「老若男女関係なく、地元の方を始め色んな方から愛される店にしていきたい」と意気込む。
見た目で楽しめて、食べても満たされる。まるで惑星のような深い魅力が『カレーの惑星』には詰まっていた。
取材・文・撮影=稲垣恵美