『焼きそばの果てしなき旅』

「ウマウマウー!」という意味深長な雄叫び

小野瀬雅生 著/ ワニ・プラス/ 1430円+税

クレイジーケンバンドのリードギタリストにして、日本ロック史上最高のグルマンである著者(愛称はのっさん)の新作のテーマは「焼きそば」。父親がつくる「マルちゃん焼きそば3人前」を原風景として育ち、アンテナショップで出合った北海道美唄市の「角屋の焼きそば」に衝撃を受け、茨城県筑西市の『中山屋』の焼きそばに神の導きを感じ、この果てしなき旅にハマっていったのだそうです。
正直、すきっ腹でページをめくるのは体に毒。五反田『やわらなバー』の沖縄そばでつくるモチモチソース焼きそば、伊勢佐木長者町『龍鳳』のブラボー海鮮焼きそば、高島平『あぺたいと』の美しき両面焼きそば、有楽町交通会館『おかめ』で知る焼きそばの品格、神保町の大人気店『みかさ』ではソースと塩の豪華ダブルヘッダー(2回行ったってこと)と、ソース&ジャンクの応酬。のっさんの写真の腕前は本職のギターの足元に遠く及ばないけれど、必ず至る雄叫び「ウマウマウー!」に異論はございません。
ん? でもちょっと待て。西浅草の『花家』が載っているではないですか。ここの焼きそばは、正直ちょっとあれです。マニアックというか味が薄いというか味がないというか。でも不思議と寄ってしまう店。のっさんも念願かなって来店し、「語るストーリーはシンプル。ずっとここにある」の結論に至ります。そして2021年5月、コロナ禍のなか惜しまれつつ閉店。名残を惜しむ何枚もの貼り紙も目に沁(し)みました。それでもやっぱり「ウマウマウー!」とくるのです。(武田)

クレイジーケンバンドのリードギタリスト、小野瀬雅生で御座います。ふとしたきっかけで焼きそばにハマってしまった2020年夏。自分の焼きそば遍歴を思い出しつつも新たに重ねた焼きそば愛の成果が2021年9月に書籍『焼きそばの果てしなき旅』としてリリースされました。懐かしい味もお馴染みの味も新しい味もそれぞれに愛おしい東京の焼きそば10選。まだまだ未体験の味も膨大にありますので、これからもずっと果てしなき焼きそばの旅を続けたいと思います。焼きそばスキスキスー!

『東西寄席演芸家名鑑2 東京かわら版 編』

東京かわら版/ 2200円+税

6年ぶりの発刊。落語家・講談師・浪曲師から色物まで東西の寄席演芸家が1200人以上掲載されている。今回は芸人の写真が大きくなり、芸人を亭号と名前で探すことができる索引もあり、見やすく使いやすくなった。さらに各芸人の趣味や特技など「何か一言」も掲載され、親しみが持てる。現役演芸家子弟系図も便利。(土屋)

『アートプロジェクト文化資本論 3331から東京ビエンナーレへ』

中村政人 著/ 晶文社/ 2530円+税

アーティスト・中村政人が『アーツ千代田3331』や「東京ビエンナーレ」の活動を通して語るアートと社会の共存のための原理論。アートの枠組みを街へと拡大し、街で変化や違和感を抱かせる事だってアートの力だ。すると、これって散歩とかなり相性がいい事に気づく。この秋は、「美術館巡り」ではない、アート散歩を。(高橋)

『東京の古本屋』

橋本倫史 著/ 本の雑誌社/ 2200円+税

東京の10軒の古本屋に3日間密着し、その仕事と暮らしを記録したルポルタージュ。『BOOKS青いカバ』や『古書往来座』など散歩の達人でもおなじみの古書店の、それぞれの地続きの生活模様に引き込まれる。密着取材をしただけあって、日記のように綴られる日々の記録から垣間見える、筆者のまなざしがあたたかい。(吉岡)

『散歩の達人』2021年11月号より

『散歩の達人』本誌では毎月、「今月のサンポマスター本」と称して編集部おすすめの本を紹介している。2020年も年の瀬にさしかかり、いよいよそれを一斉公開する時が来たと言えよう。ひと月1冊、選りすぐりの12冊を年末年始のお供に加えていただければ幸いである。