池袋西口でおいしいピッツァを堪能するなら迷わずこの店へ
池袋にイタリアンの店は数あれど、本格ピッツァが売りという店の噂はあまり聞かない。ピザを専門に扱うピッツェリアとなれば、なおさら希少だ。
池袋駅西口から徒歩6分、立教大学近くにある『PIZZA BORSA』は、2014年7月にオープンした本格ピッツァ専門店。人通りの多いエリアではないが、ランチタイムなどは行列ができることもある。
『BORSA』とは、イタリア語で「袋」を意味する単語。麻布に本店を持つ有名店『Savoy(サヴォイ)』で修行を積むうちピッツァの魅力にのめり込んだというオーナーの、遊び心から生まれた店名だと教えてくれたのは、この店の責任者である昆野敦規さん。イタリアンの店でキャリアを磨いた後、『BORSA』に入り、ピッツァの奥深さにハマったという。
店のこだわりを聞くと、「ピッツァのすべてです」という答えが返ってくる。
「生地を伸ばして焼くだけのシンプルな料理に見えるかもしれないが、窯の温度や発酵具合など、一つでも見誤れば、おいしく焼き上げることができません。日々、生地との闘いです」
生地は丸1日低温発酵させるが、気温や湿度をはじめ、さまざまな要因によって状態が変わってくる。粉をこねる時の水温や発酵具合などを肌感覚で感じながら、常に一定の状態に保てるよう気を配らなければならない。
肉などの生鮮食品は国産だが、チーズやトマトソース、オリーブオイルなどはイタリアのものを厳選。こだわり食材で仕上げた生地は、オーブンではなくイタリア製の窯で焼き上げる。
500度近い熱で1分半! 薪窯で焼き上げた本格ピッツァの魅力
ピッツァの生地はカウンター席の正面のスペースで伸ばしていく。独特な食感を楽しめるよう、厚みの微調整も忘れない。その後、トマトソースを乗せ、モッツァレラチーズ、バジルをトッピングして、オリーブオイルと塩で仕上げをしたら、あらかじめ薪で温度を上げておいた窯へ勢いよく投入。1分から1分半ほどで本格ピッツァが完成する。
オーブンと窯の決定的な違いは、熱する温度だ。200度程度の温度でじわじわ焼くオーブンに対し、窯は500度近い高温で一気に焼き上げる。
「高温でサッと焼いたピッツァは、水分の蒸発を最小限に抑えることができるため、内側はもちっと外側はサクッとした食感に仕上がります」とは、昆野さんの言。オーブンでももちっとした食感を出すことは可能だが、その場合は生地が若干厚くなるという。
その差は、トマトソースにも如実に現れる。オーブンでじわじわ熱すると、トマトソースからも水分が抜けてしまう。一方、窯でサッと焼き上げられたトマトソースは、みずみずしい風味や独特の酸味がそのまま残っている。
じわじわ熱すると香りも若干飛んでしまうが、窯焼きならほどよく開いた香りをたのしむことができる。その差を実際に、堪能してみよう。
人気はマルゲリータ。もちっ、サクッ、ふわっ! 絶妙な食感がたまらない
オーダーしたのは定番のマルゲリータ。その直径は25〜26cmと、宅配ピザのMサイズ(10インチ)に相当する大きさだが、周囲以外は薄めに仕上げてあるので、女性でもぺろりとたいらげるという。
カットしているそばから、モッツァレラチーズの濃厚な香りとトマトソースのフレッシュな香りが、鼻の周りにやさしくまとわりついてくる。食欲全開。ピーチティーで口の中をリセットしてからと思ったが、矢も盾もたまらずかぶりついた。もちっ、ふわっとした食感の後、チーズの香りがブワーっと広がるが、2口目に外側にたどりつくと、今度はサクッとした軽い食感。やや多めに振りかけてあるものの、質のいいオイルはさっぱりしている。塩気もほどよく、一切のひっかかりがないまま次の一片を手に取った。今度は、バジルの香りが口いっぱいに広がった。ヤバい、めまいがするほどウマい!
多くの店では1枚の生地に具を均等に乗せていくが、『BORSA』では均等にしていないため、6カットや8カットに切り分けたうち、場所によって微妙に味が変わってくるという。
「こっちはチーズが多かったり、バジルが入っていたり、塩気が少しだけ違っていたり。この微妙な味の変化をたのしんでもらいたいですね」
実際、ピッツァを注文する人はほとんどの人が1枚ぺろりとたいらげていく。もちろん、複数オーダーしてシェアすることも可能だが、残す人はまずいないという。
平常時はワインやカクテルと一緒に楽しめるほか、容器代プラス100円でテイクアウトも可能だが、この店の売りはなんといっても平日限定のランチメニューだ。マルゲリータを含む定番2種と日替わり2種、計4種のピッツァの中からお気に入りをチョイスし、サラダとピーチティーとともにいただくAセットは950円とリーズナブル。これにコーヒーと日替わりのデザートがついたBセットは1200円、こちらも人気だ。
構成=フリート 取材・文・撮影=村岡真理子