カブトムシ狩りの基本

いつ、どこで、どうやって?

カブトムシは、どこにでもいるわけではない。かと言って山深いところに住む生き物でもない。街と山がゆるやかに重なる里山や雑木林が彼らのパラダイスだ。

カブトムシ狩りには、大きく分けて、罠を仕掛けて回収する「トラップ採集」、カブトムシが光に集まる習性を利用した「灯火採集」、樹液に集まるカブトムシを探して捕まえる「樹液採集」がある。

トラップ採集」は、潰したバナナ等の果物と焼酎(アルコール)を混ぜ合わせ2〜3日放置して発酵させた誘引剤を、木に付けたりストッキングに入れて吊るすることにより、カブトムシを誘き寄せるトラップ(罠)システムである。
私も当然試したことはあるが、あらかじめ準備しておかなければならないので今夜カブトムシを狩りに行こうと急に思い立っても難しかったり、日中に仕掛けて夜間に回収する手間がかかったり、設置・回収時に手がベタベタになるなど、スムーズさに欠けるので好まない。トラップはそれなりの効果はあるが、天然の樹液には敵わないので、樹液の出ている木を探す方が手っ取り早いと思っている。興味のある方は、「バナナトラップ」で調べれば色々と出てくる。

続いての「灯火採集」は、カブトムシが光に集まる走光性を利用し、夜間カブトムシがいそうな場所で、白い布を張り、そこに強力なライトを照らすことでカブトムシを誘き寄せるシステムだ。この方法の良い点は、セッティングさえすればあとは待つだけで何もしなくて良いことに尽きる。しかし、強力な光源や電源が必要で、何より待っているだけなので「狩り感」がまるでない。光に集まった獲物を回収するだけで業者感が漂う。つまり面白みに欠ける。

やっぱりカブトムシは、雑木林を「カブトムシはどこだ〜」と言いながら歩き回る「樹液採集」が一番楽しい。カブトムシは基本的に夜行性なので、夜間に真っ暗な雑木林の中を、ライトで木々を照らし丹念に探しながら歩く。すなわち夜の散歩と言えよう(「大人の夏休み」シリーズ三回目にしてやっと「散歩」というキーワードが出現!)。

物の本には、明るい日中に雑木林を歩いて、カブトムシが集まりそうな樹液の出ている木を探しておくと良いなどと書いてある。もちろん合理性があり安全面でも理にかなっている。しかし、私は夜間一発勝負派だ。夜の雑木林を彷徨うという非日常こそが、ワクワクを演出してくれるのに、昼間に下見をしたら興醒めだ。デートの下見をする男はモテない。と昔『恋のから騒ぎ』で誰かが言っていた。古今東西、狩人は夜の一発勝負に賭けるのである。

持ち物と服装。軽装厳禁!

ライトは明るさが命。予備のバッテリーも忘れずに。

いざ夜の雑木林に出かける前に、まずは準備。採集に必要な捕虫網と虫かごを用意しよう。捕虫網はセミ捕りの際に改造したロング捕虫網が今回もオススメだ。虫かごは一般的なものでよい。ただし、透明の容器に蓋だけ網状になっている飼育ケースは、歩くたびにカブトムシが滑って寿命を消耗するので避けよう。

夏になったら、セミを捕らずにはいられない。私はそういうタイプの人間だ。夏が来る→セミが鳴く→捕まえる。それを繰り返してきた人生も不惑目前。そう言うと大抵の人には変な目で見られるけど、セミ捕りは楽しい。子供の遊びと侮るなかれ、わずか数センチの昆虫を捕まえるのに、全方位的に耳を澄まし刮目開眼。発見したら抜き足差し足忍び足。サッと網を振れば捕れた逃したで一喜一憂。気がつけば夢中になって木々の間を歩き回る自分がいる。失った童心が蘇る!  世の大人たちよ、休日にクーラーの効いた部屋でゴロゴロしている場合では無い!  網を持て!  公園へ繰り出すのだ!と打ち合わせの合間にのたまったら、リモートワークで籠りがちな編集部N女史が「セミ捕りしたい」と言い出した。さすが北海道の大地が生んだ元自然児!  すばらしい感性!  ならばと一緒にセミ捕りに興じることになった。

夜間の雑木林は当然真っ暗。ライトは必携。カブトムシを探す為に木を照らすライトと、前方確認用のヘッドライトの最低二種類は持って行くべきである。前者が強力であればあるほどカブトムシ発見率が高まる。500ルーメン以上をオススメする。

服装は長袖長ズボンが絶対。肌を晒していては草や枝で負傷することもあるし、蚊などの吸血昆虫の餌食になる。夜間はあまり活動しないスズメバチもうっかり巣を刺激してしまったら、一斉攻撃を受ける羽目になるので、肌は極力出さないようにする。マムシが出るエリアでは足元を守るために長靴を履くなど対策を考えよう。

最悪、毒虫に刺されたり噛まれたりした時用に、ポイズンリムーバー(毒を吸い出す簡易的な道具)等の救急セットの携帯もオススメする。

夏の夜、雑木林を長袖長ズボンで歩くと、想像以上に発汗するので、脱水症状対策として飲み物も必ず持ち歩くこと。

また、土地勘が無い雑木林では迷子になることもある。地図やスマホのGPSロガーアプリ等の準備を忘れずに。特に山に繋がる場所では、迷子がそのまま遭難に繋がる。カブトムシ狩りをしてたら遭難してしましたという事態は絶対に避けたい。夜間の一発勝負は入念な準備があってこそ。

夜の雑木林を彷徨う

しっかり準備が整ったところで、いざ雑木林へ。今回のフィールドは、都心から車で約1時間の埼玉県狭山市だ。散策路がある場合は、迷子を防ぐために散策路を外れないように。恋もカブトムシも深追い厳禁である(経験者は語る)。そんな私の甘酸っぱい注意をよそに、N女史は早速周囲の木々をライトで照らし始めた。

しかし、恋(自称)もカブトムシも百戦錬磨の私からしたら、「そんなところに獲物はいないよ」という木ばかり照らしている。この広い世界に運命の人がそこら中にいないのと同様、カブトムシもこの雑木林のどこにでもいるわけではないのだ。

カブトムシは「クヌギ」や「コナラ」等の樹液に集まってくる。よって、カブトムシ狩りの第一歩は、クヌギとコナラの木を探すことから始まる。

クヌギとコナラを覚えよう

大事なのは、クヌギとコナラの見分け方ではなく、樹液の出るブナ類の特徴を掴むこと。樹液は甘酸っぱい匂いがするから、視覚だけではなく嗅覚も利かそう。ブナ類の実であるどんぐりも重要なサイン。クヌギ・コナラ以外にも、ヤナギ・ブナ・ミズナラ・シラカシ・アキニレ等の樹液にも、カブトムシは集まるぞ。


クヌギとコナラがわかったところで、ライトで照らし雑木林の散策路を歩き進む。途中、クヌギとコナラを何本も見つけるが、カブトムシの姿が無い。生命体が見つかっても、ガかカミキリムシの類ばかりで「この雑木林にカブトムシが本当にいるんですか?」というN女史の視線が1000ルーメン位の勢いで私に発せられてくる。

クヌギやコナラも全ての木から樹液がドバドバ出ているわけではなく、樹液は何らかの理由で傷ついた樹皮の傷口から出るものであって、無傷のクヌギやコナラに、カブトムシは集まらない。合コン会場で「この子彼氏にフラれたばかりで傷ついてるから癒やしてあげて」という幹事役の一言で、一気に男子がその子に群がる現象と同じ基本原則である。

樹液を出すクヌギとコナラを求め、雑木林を彷徨う我々一行。蒸し暑さに汗で服がじっとり濡れる。歩を進めれば蜘蛛の巣にかかり、振り払っても振り払ってもなお顔の周りを飛び回る虫の大群。「これがカブトムシ狩りの趣なんだよ」と伝えると、あの時出なかった「いい加減にしてください」の一言が「なんですかこの状況!」のリード付きでN女史の脳裏をかすめていく。

カブトムシの捕まえ方

一刻も早くカブトムシを発見すべく、しらみつぶしに木々をチェックすると、どこからともなく、あの芳醇な香りが鼻をかすめる。間違いない!  近くに樹液を出している木があるはずだ。頭上を見上げると、数匹のカブトムシが樹液を求め集まっていた。N女史も安堵の表情だ。そうとなれば、カブトムシをライトで照らし、捕獲するN女史をアシストするのみ。

早速、カブトムシに捕虫網をかけるものの、セミとは違い反射的に飛び立たたないので、それだけでは網の中に入らない。網の縁を使って、樹皮からカブトムシを剥がし取り網の中に落とすというテクニックが必要になる。言うのは簡単だが、これがまた少々難儀で、カブトムシを剥がそうとしても、爪でしっかり樹皮を掴んでいるカブトムシはそう簡単には剥がれてくれない。しかも、無理に剥がしたら脚がちぎれてしまうのではないかという恐怖も襲い、おいそれと力を込められない。網の縁で軽く小突いて、カブトムシが動く=脚を浮かす瞬間にやや力尽くで剥がすと、捕りやすい。この力加減は慣れである。

総力戦でハイになる

今回のように相方がいる場合は、追い込みスタイルが良いだろう。一人が網を樹皮に固定し、もう一人が、網の外側もしくは、捕虫網を逆さまにした棒の先端部分でカブトムシを小突いて、固定している網に誘導・捕獲するスタイルだ。これは実に盛り上がる。カブトムシを小突いたところで素直に網に向かってくれず、「もっと右!」とか「もっと上から!」「この下手くそ〜」などと大の大人が深夜の雑木林で汗だくになって叫び合う。しかも昆虫相手に。もう正常な精神では無い。カブトムシがうまく捕れなくてハイテンション。捕れたら捕れたでハイテンション。妙な一体感とグルーヴ感に包まれる。カップルで行えば愛が深まり、親子では絆が深まる。冷め切った夫婦では離婚が撤回され、編集者と執筆者で行えば原稿料が5割増しになる。そんな効果があるに違いない。

昆虫の王様!

チームプレーの甲斐あって最初のカブトムシを無事ゲットした我々は、その木に集うカブトムシを狂喜乱舞で捕獲し終え、次のポイントに移動した。道中新たなカブトムシの餌場は無いかと木々をライトで照らしていると、新ポイントを発見!  ここにも数匹のカブトムシ。しかもクワガタムシもいるではないか!  カブトムシを狩ると謳ったタイトルであるゆえ、ここまでしれっとスルーしてきたが、カブトムシのいる木には、かなりの確率でクワガタムシもいる。

カブトと来たら、クワガタも。

ノコギリクワガタ。大きなアゴがかっこいい。

雑木林夜場所、西の横綱がカブトムシであれば、東の横綱はクワガタムシ。タイトルのことは一先ず置いて、クワガタムシも捕獲する。コクワガタとノコギリクワガタをゲット。カブトムシも良いが、クワガタムシも魅力的だ。玄人筋になるとカブトムシには目もくれずクワガタムシ(それもサイズの大きいもの)だけを求める向きがある。けれど私は、カブトムシ狩りの旗を振りつつクワガタムシも狩りたいタイプ。二兎を追うものは一兎も得ずなんて言葉、カブトムシ狩りには関係無い!  そもそも昆虫であって兎じゃないし、忠臣ではないから二君に仕えるタイプだし。という姿勢でクワガタムシ捕獲モードに。

樹液の出る木の根本の土が柔らかくなっていたら、その中にクワガタムシが隠れている場合がある。そっと土を掘ってみよう(掘ったあとは必ず戻す!)。

ツノのあるカブトムシとは違って、クワガタムシはソリッドボディ。樹皮の隙間(うろ)に潜んでいる場合もある。樹皮にうろがあれば内部をチェックしよう。幸運にもうろに獲物が潜んでいたら、「ピンセット」や「ひっかき棒」で捕獲する。ピンセットは摘んで引きずり出し、ひっかき棒はその名の通り、引っ掻いて出す道具。専用品が売っているようだが、私は100円ショップの「バーベキュー串」の先端をペンチで曲げたものを使用している。

屍がサイン……

樹液の出る木を探さねばと、上ばかり向いて歩くようでは、まだまだである。雑木林を歩くと、カブトムシやクワガタムシの死骸片が転がっている場所がある。カラスやタヌキに捕食され、硬くて食べられない部分が残されているのだ。その無惨な光景に「俺たちのヒーローがぁ」とショックを受けているようでも、まだまだである。死骸があるということは、『そこにカブトムシがいた=樹液の出る木があるからだ=新たなカブトムシがいるはずだ』という公式を冷酷無情に導き出せてこそ一人前のカブトムシハンターと言える。

「かわいそうですね」と憂いの目でうつむくN女史。タヌキだって腹は減る!  顔を上げるんだ!  見上げろこのクヌギの大木を!  そう激励しながら樹皮にライトを当てると、見事に予想的中!  頭上ではカブトムシが樹液に夢中だ。しかし今回の獲物は、手持ちのロング捕虫網で届くかどうかの高所にいる。試しに網を伸ばすも届かない。なんたる悲劇だ。目の前に(正しくは頭上に)獲物がいるのに捕れないなんて。ライトを当てて見れば見るほど、悠々と樹液を舐めるカブトムシたちが、こちらを嘲笑っているかのようで悔しい。

秘密兵器投入。

ところがどっこい、こちらも海千山千雑木林千のカブトムシハンター。指を咥えて終わりではない。ということで、秘密兵器を投入する。その名も『セキスイ 継ぎっこ φ 16』。

この字ヅラだけではなんのこっちゃな秘密兵器は、捕虫網のロング化に使用した園芸用支柱(セキスイ 若竹 φ16 1.5m)を延長するグッズ。使い方は実に簡単で、捕虫網の末端(園芸用支柱の末端)と、相方の捕虫網から取り外した園芸用支柱を、継っこを間に挟むように差し込むだけ。

すると、驚異の全長4m65cmの捕虫網が完成する。これで、あのカブトムシ達の優雅なディナータイムも仕舞いになろう。

スペシャルウェポン! 『セキスイ 継ぎっこ φ16』、名前はダサいが実力十分! しかも1個あたり60〜70円程。対費用効果抜群!

早速、N女史の捕虫網末端と私の捕虫網から外した園芸用支柱をドッキング。意気揚々と振りかざす。さすがに4m65cmにもなると、棒部分がしなって扱いのハードルが上がる。狙いどころに網部分を持っていくのが難しい。

私「もう少し右から!」
N女史「わかってます!  けど、しなって思い通りに行かないんです!」
私「しなりを利用するんだ!  今度はもう少し左から!」

文字にすると昭和のスパルタ感が滲み出るが、実際はふらつく捕虫網になぜか笑いが止まらない例のハイテンション状態。その後も、ああでもないこうでもないと言いながら、捕虫網を操った末、見事に捕獲成功。

これがスーパーロング捕虫網!

真夜中の雑木林を彷徨って、カブトムシもクワガタムシも沢山捕れた。N女史もホクホク顔。チームプレーが功を奏して、原稿料5割増しも間違い無いだろう。めでたしめでたし。

と終わらないのが生き物相手の遊びである。毎度のことながら、捕まえた獲物をどうするかという問題。持ち帰って飼育をしたい場合は、ホームセンター等で飼育セットを揃えることが出来る。カブトムシの寿命はひと夏。クワガタムシは種類と環境によっては越冬可能で数年生きるものいる。飼育の醍醐味は繁殖で、オスとメスのペアを正しく飼えば、翌年新しい個体が生まれてくる。

カブトムシパラダイスを求めて

飼育自体はそれほど難しくは無いものの、相手は生き物。きちんと世話をしなければ悲しい結果が待っている。自身の世話もロクに出来ない私は、「楽しかったよ、ありがとう」の言葉と共に、雑木林に返すのが常だ。

遠い昔に図鑑で見た光景。どこかの林のどこかのクヌギに、これでもかと言う数のカブトムシが集まっている写真。夢のような情景だった。いつか自分もこんな木を見つけてみたい。そう思い続けて大人になった。けれど未だかつてあの写真を超える密集カブトムシツリーを見つけたことはない。

となったら、自分で再現だ。最後のお別れは、捕まえた全てのカブトムシを一本の木に放って、あのカブトムシパラダイスを再現する。これぞ壮観!  こんな木をいつか見つけてみたい。それまでは夜の雑木林散歩がやめられない。

カブトムシは逃した途端に上に向かって猛烈ダッシュ。クワガタムシは根本に向かって下っていく。性質の違いが興味深い。

取材・文・撮影=小野広幸

*昆虫採集の禁止されている公園・地域もあります。ルールを確認して楽しみましょう。私有地の雑木林には無断で立ち入らないように。

夏になったら、セミを捕らずにはいられない。私はそういうタイプの人間だ。夏が来る→セミが鳴く→捕まえる。それを繰り返してきた人生も不惑目前。そう言うと大抵の人には変な目で見られるけど、セミ捕りは楽しい。子供の遊びと侮るなかれ、わずか数センチの昆虫を捕まえるのに、全方位的に耳を澄まし刮目開眼。発見したら抜き足差し足忍び足。サッと網を振れば捕れた逃したで一喜一憂。気がつけば夢中になって木々の間を歩き回る自分がいる。失った童心が蘇る!  世の大人たちよ、休日にクーラーの効いた部屋でゴロゴロしている場合では無い!  網を持て!  公園へ繰り出すのだ!と打ち合わせの合間にのたまったら、リモートワークで籠りがちな編集部N女史が「セミ捕りしたい」と言い出した。さすが北海道の大地が生んだ元自然児!  すばらしい感性!  ならばと一緒にセミ捕りに興じることになった。
大きなハサミに深紅のボディ。お金を出して買う必要もなく、身近なところで採取可能。与えたエサは何でも食べて、哺乳類たる人間からしたら神秘としか思えない脱皮までする。子供たちの興味をそそらないわけが無い。そう、アメリカザリガニ(以下、ザリガニ=アメリカザリガニ)である。しかし、夏休みにドブ川でザリガニ釣りに興じた少年たちの姿も今は昔。現代の子供は、夏期講習やらプログラミング教室やらでザリガニ釣りをする時間もなければ機会もないらしい。嗚呼、これは由々しき問題。子供の遊び相手である一方、昨今は生態系を脅かす外来種として悪の権化代表でもあるアメリカザリガニは、放っておくと、どんどん増殖して美しき日本の自然環境を破壊してしまう。ここはひとつ令和の少年少女諸君に代わって、昭和の人間が脱皮の如く一肌脱ぐしかないだろう。と、もっともな理由をつけて、前回のセミ捕りで外遊びに開眼した編集部N女史を連れ、ザリガニ釣りへ行くお話。