大人のセミ捕りは、網の改造から始まる

短ければ、長くすればいい

いざセミ捕りへ向かう前に、道具の調達。必要なものは「捕虫網と虫かご」以上!  シンプルで安価だから子供の遊びの代表なのかもしれない。けれど、我らは大人。子供の遊びを超えて楽しむのだ。

まずは捕虫網。ホームセンター等でよく売っているお手頃価格な捕虫網でよいけれど、実際セミ捕りをすると、「うぅ〜セミを見つけたのに高所すぎて網が届かない〜」と苦虫を噛み潰すことが多々ある。そう、よくある捕虫網では短すぎる場面があるのだ。

というわけで、大人は棒部分が長い捕虫網を用意する必要がある。リッチな大人は昆虫の殿堂『志賀昆虫』で本格派の長い捕虫網を買えばことが済むが、如何せん高級だ。形から入りたい人にはオススメするが、そうでない人は、セルフで棒部分を長くするべし。子供と違ってお金かアイデアで問題解決するのが真の大人というもの。ちなみに、虫かごに関しては、一般的なタイプを用意すればOK!

準備するもの

捕虫網「エーワン 昆虫網のびっこNEO」と、園芸用支柱「セキスイ 若竹φ16×1.5m」の組み合わせは径がちょうど合う。昆虫網のびっこNEOは、網部分を取り外し可能で棒部分は伸縮式。若竹は1.5mのほかに1.8m / 2.1m / 2.4mのサイズバリエーションあり。スーパーロングを目指したい人は2.4mを選択するのも良いが、携帯性・取り回しを考えると1.5mが最適。

園芸用支柱は「第一ビニール すくすく竹 イボ付φ16」も、のびっこNEOと径が合う。

ロング捕虫網のつくりかた

③で捕虫網が細すぎてスカスカな場合は、捕虫網の末端にビニールテープを巻いて太さを調節しよう。

番外編

支柱側に穴をプラスすれば、段階固定式になるぞ。

セルフで捕虫網をロング化すれば、ちょっとした夏休みの自由工作。これでますます夏休み感アップ!

これで高所のセミも一撃!

準備万端、いざ出陣!

セミ捕りのいいところは、わざわざ遠出をしなくても、近所の公園ですぐできるところ。理想を言えば、ちょっと広めでいい感じに木が生えていて……って色々あるけど、まぁ気にしない。セミの鳴き声が聞こえる近場の公園へ行こう。

今日は都内の公園にやってきた。
真夏の公園は暑い! 日差しキツい! 蚊が多い! と大人が忘れかけていた現実のオンパレード。帽子とか日焼け止めとか、虫除けスプレーとかはしっかり準備はしていこう。熱中症対策の水分も忘れずに!

さあ、準備万端さっそくセミを見つけ出そう!  セミ捕りの基本は

  1. 耳を澄ましてセミの鳴き声がする方向を定める。
  2. 鳴き声が聞こえてくるあたり(木の表面)をくまなく探す。

というプロセスを経て見つけ出す。聴覚と視覚をフルに使うことで、普段は意識しない感覚器官がビンビンに働いて、それだけで眠っていた野生の勘が騒ぎ出す。

捕虫網を振り回す小学生たちに混じって、N女史もセミの鳴き声に耳を澄まし、居場所を見つけ出すと捕虫網をひとかぶり。といきなりアブラゼミを捕獲!  幸先の良い出だしだ。

セミを発見!
悟られぬように気配を消して距離を詰める。

その後しばらく「セミ発見→捕獲・セミ発見→捕り逃し」を繰り返しながらコンスタントにセミを捕り続けると、高い木に止まるセミを発見!  ついにロング化したこの捕虫網の真価が発揮される時が来た!

おもむろに棒を伸ばすと、近くにいた小学生がまじまじとこちらを見つめる。ギャラリーの視線を感じながらN女史が狙いをつけて〈ロング捕虫網〉を振りかざすと、目当てのセミを見事捕獲。これぞロング化の成果!  冷静を装っても隠しきれないドヤ顔感がにじみ出る。

高所に止まるセミを発見。ロング捕虫網の出番!

その後、勢いに乗った我々は親の仇のごとく次々にセミを捕獲し、子供たちの「そんなに捕まえてちょっと大人気ないんじゃないでしょうか」という無言の視線を、「だったら君たちもロングな捕虫網でやりなさい」と大人気のなさに拍車をかけたテレパシーで返し、小一時間でで20匹程捕獲した。虫かごも満員御礼になったし、木陰のベンチで小休憩。

さてさて、この捕まえたセミはどうしようとN女史。私は普段ひとしきり捕獲を楽しんだら、虫かごから放してしまうけど、子供の頃はセミに糸を結んで、犬の散歩のように飛ばし遊んだりしたものだ。大抵最初のうちはぶんぶん飛び回って楽しいのだけれど、数分で元気がなくなり地面に墜落するようになり、程なくして飛ばなくなる。そこで少年だった自分は「なんか可哀想なことをしてしまったな。ごめんね。セミ」とセンチメンタルな気持ちになって、急いで糸を外して逃してあげるのだった。きっと今それをやっても同じ気持ちになるだろうから、N女史にはエピソードトークだけで済ませセミの観察をすることにした。

なんの種類が捕れたかな

アブラゼミと戯れる。

今回、一番多く捕れた種類はアブラゼミ。都内では最も数の多いセミではないだろうか。やたらに捕まえられるから、後半はちょっと食傷気味になるけれど、翅が不透明で色付きの種は少ないから、実はレアキャラなんだと自分に言い聞かせる。(日本に生息するセミの中で前翅も後翅も不透明で茶色いのはアブラゼミとリュウキュウアブラゼミの2種のみ。世界的にも珍しい。)

我ら関東人にはおなじみのミンミンゼミ。

続いてはミンミンゼミ。都内ではアブラゼミに次ぐ勢力を誇るが、前者が圧倒的なので、数は3割程度。グリーン基調の胴体に透き通った翅がカッコイイ。関東では都市部にも生息しているが、西日本では山林に住んでいる。関東人には「ミーンミーン」という鳴き声が夏の風物詩サウンドだけれど、クマゼミ優勢の西日本都市部の人にとっては、違うのかもしれない。

私が幼少の頃(30年以上前)は東京でクマゼミを見ることはなかったが、どういうわけか最近は都内でもクマゼミを発見するようになった。温暖な気候を好むクマゼミが関東に進出してきたのは温暖化だったり、根に着いた幼虫ごと木の移植がされたりと色々な説があるが、確実なことはまだわかっていない。ミンミンゼミとクマゼミは主に午前中に鳴き、同じ地域にその二種が生息する場合は、お互いの鳴き時間をずらすと言われるが、東京のミンミンゼミは午後も平気で鳴いているし、その近くでもクマゼミが鳴いていたりする。都会のセミはルール無用なのか。

オスの胴体中央に発音器官がある。

セミはオスしか鳴かない。子供向けの図鑑には「オスは鳴くことにより、結婚相手のメスを呼び寄せています」なんて書いてあったけど、これ人間界に置き換えたら「ねぇねぇ、そこのねぇちゃん、今夜俺とどう?」くらいのセリフを大声で叫びまくってるとんでもないナンパ野郎ではないだろうか。しかも、何年もひとり淋しく土中に暮らしやっと地上に出てきたと思ったら生存期間は数週間。交尾にかける情熱は相当のものだと思う。白昼の公園はほぼ乱痴気騒ぎの舞台、控えめに言っても欲望渦巻く合コン会場と思って間違いない。

にじり寄るカップル。この木が本当のセミダブルベッド。

そんなアダルトな酒池肉林にあって人間がセミを捕るのも妙竹林。とは思うものの、セミの本能がそうさせるように、我々の奥底に眠っていた狩猟本能が覚醒してしまうのが、真夏の公園なのだ。

もうおわかりだろうか、セミ捕りが子供の遊びではないことを。さぁ、あなたも大人の遊びをご堪能あれ。

最後は優しく返そうね。

取材・文・撮影=小野広幸

※昆虫採集の禁止されている公園・地域もあります。ルールを確認して楽しみましょう。