飲食店に「革命」を起こす!という心意気で2019年にオープン
まわりはスナックばかり、という蒲田のディープエリアの中の、小さな間口が『KAKUMEI Burger&Café』蒲田店だ。もともとは小料理屋だった物件を、自分たちの手でリノベーションして、2019年にオープンした。
オーナーの百瀬(ももせ)さんは、カナダでハンバーガーショップを経営した経歴の持ち主だ。テリヤキなど、和風のハンバーガーが海外の人の口にも合うことに大きな可能性を感じると同時に、どうしても味の濃いものが受け入れられやすい、とも感じていたという。
「より繊細で、日本らしさのあるハンバーガーを提供したい」との想いをもって帰国。日本での店の立ち上げに誘ったのが、高校の同級生である北見さん。北見さんは店長を務めている。
食べ歩いて行き着いたのが「ステーキ肉をまとめただけのハンバーガー」
北見さんは働いていたアパレルを辞め、ハンバーガーショップでの修業をスタート。仕事をしながら、日本中のハンバーガーを食べ歩いたと話す。そうして行き着いたのが、この店の原点である「KAKUMEI BURGER(カクメイバーガー)」だ。
肩の付け根の赤身肉であるチャックテンダーから脂肪や筋を丁寧に取り除き、1cm大にハンドチョップした肉を塩と混ぜ、手でぎゅっと握ってまとめる。パティはとても壊れやすいので、鉄板の上にそーっと置き、レア気味に焼く。
バンズの上にのせ、野菜やクリームチーズなど、トッピングしたらできあがりだ。
箸とお茶が似合うハンバーガー。いざ実食。
肉の焼けたいい匂いが漂ってきた。パティの上にはクリームチーズとかいわれ大根、そして味噌麹ソースがたっぷりかかっている。
袋状のバーガー袋に入れて、いよいよ待望のひと口。
かぶりつくと、「ごろり」と口の中に肉が転がり込んできた。大きめの肉の塊が、噛むほどにほろり、ほろりとほどけていく。圧倒的な肉々しさだ。赤身の肉を使用しているので脂っこさはなく、噛みごたえと弾力がたまらない。まろやかな特製味噌麹のソースが肉汁やクリームチーズと混じり、コクと爽やかさをプラスする。かいわれ大根がみずみずしく、時折ピリっとするのがいいアクセント。
パンズは、ブリオッシュという軽い口当たりのちょっと甘めのパンだ。若干お菓子のようなパンで、ハンバーガーに使うことはあまりない。
「少し甘めのバンズの方が、うちの肉々しいパティを包み込んでくれる気がするんです。パティとバンズの一体感を楽しんでいただければ」と北見さん。
付け合せは日替わりの和前菜。この日は、水菜と菜っぱの煮びたし、人参と大根のきんぴら、ゆず大根という完璧に和の総菜だ。どれも自然な風味でハンバーガーとの相性もよく、いい箸休めになっていた。「毎日でも食べられるように」との配慮から、野菜を使った総菜には力を入れていると話す。
健康的なほどよいサイズ感で、女性でもなんなく食べられる。付け合せをフライドポテトにしたり、パティを追加してボリュームアップすることも可能なので、物足りないと思う人は、自分の好みに合わせてオーダーするのもいい。
最後に、お茶っ葉から淹れたお茶で、ほっとすっきり。なんだかいい定食をいただいたような心持ちだ。
新商品はいつでも試行錯誤。スタッフだけでなく、お客さんの協力も
毎月期間限定のマンスリーバーガーも好評だ。毎回スタッフとアイデアを出し合い、試食を繰り返しながら作り上げる。プロの視点ではなく、「普通の人」がどう思うかもポイントなので、ときには常連客に試作品を食べてもらうことも。たくさんの意見を反映して、一つひとつ商品を作っている。
もともとはアパレルで働いていた北見さん。飲食店で働き始めた頃は「向いてないのでは……」と思ったこともあるそう。しかし、「ミシンからハンバーガーに変わっただけで、ものを作ることは同じかなって」と話す。
店の立ち上げが縁で関わるようになった蒲田という街。この街の人も、まわりの飲食店も、みんなあたたかくて大好きだという。蒲田の楽しさが伝わるような店にしたい、と語った。
取材・文=ミヤウチマサコ 撮影=KAKUMEI Burger&Café、ミヤウチマサコ