おいしい!とマクロビが共存する、みんなにやさしい野菜料理
ヴィーガンと非・ヴィーガンが、一緒に食事できる店がなかなかない、というのはよく聞く。この店は、肉、卵、乳製品などの動物性食品と白砂糖は不使用だけど、どちらの人にも楽しんでもらえる、というのがコンセプト。なるべくオーガニックのものを使い、ヴィーガンやベジタリアンに対応しながら、ベジタリアンでない人のために魚料理の提供もしている。味付けも、付けるべき食材にはしっかり付ける。
「いくら健康によくても、おいしくなかったら続かない。だから『おいしい』ってとても大切なんです」と店主の藤野さんは話す。
今日のごはんをいただきながら、食材について聞いてみた
「ひるの定食」は、3種のメインのおかずから1品、「本日のおそうざい」4種から2品、または3品セレクトでき、玄米ご飯と味噌汁、おしんこと健康茶がセットになる。食材へのこだわりを交えながら、一つずつ紹介しよう。
まずは玄米ご飯。有機無農薬の玄米を圧力釜で炊き、おひつで保管する。今回は秋田県産のあきたこまちだったが、週替りで玄米の種類もかわるので、変化を楽しみにしている人も。
味の方は、というと、食感がとてももちもちしていて、噛めば噛むほど甘みがある。玄米のイメージがちょっと変わってしまうほどだ。
メインは、なんちゃって鶏の唐揚げ。乾燥状態の大豆ミートに、ニンニク、生姜などで味をつけながら戻し、一番搾りの菜種油でからっと揚げた、人気のメニューだ。豆乳で作ったタルタルマヨネーズがかかっている。食べてみると、もちもちとした弾力のある歯ごたえで、「肉の代用品」というより、「おいしい唐揚げ」。しっかり味が付いていて、ご飯がすすむおいしさだ。
いんげんのおかか和え、ポテトサラダわさび風味、サラダ、紅大根の甘酢漬けは、契約農家から直接送られてくる野菜を使っている。産地は千葉県や三重県、栃木県などさまざまで、有機栽培や自然農法を取り入れている。その中に混じって、世田谷産もある。「採れたてを送ってくれるので、鮮度がとてもいいんです」とのこと。
ポテトサラダの絶妙な塩味とピリッとしたわさびの風味や、ちょうどよく茹でられた、みずみずしいインゲンには醤油の香りなど、昔ながらの製法で作る調味料やてんさい糖が、素材のよさが引き立たせる。そして、比較的しっかり味の厚揚げのチリソース炒めがいいアクセントで、まったく物足りないとは思わなかった。
心と体のリセットになるような店でありたい
もともとこの場所には自然食のスーパーがあったとのこと。病気ではないものの体調が悪く悩んでいたという藤野さんは、客としてスーパーを利用していた。そこで教えてもらった自然食を取り入れてから約2年で、体調は大きく改善したと話す。
こうしてマクロビに興味を持ったことがきっかけとなり、会社を辞め、スーパーのスタッフになった。この間、マクロビの学校にも通い、知識を増やしていったが、残念ながらスーパーが閉店することに。
地元である蒲田で店を作りたいと思っていた藤野さんが、思い切ってスーパーの跡地に店を開いたのが2011年。とくに大きな宣伝をしなかったが、客が客を呼び、常連も増えていった。お弁当も提供しており、自分たちの行ける範囲で配送もしている。
「ときどきでもいいので、心と体のリセットに来てもらえたらうれしいです」
朝6:30に店に入り、仕込みを始めるという藤野さん。誠実さや丁寧さが、おいしくて健康になる料理の味を作っている。
取材・文・撮影=ミヤウチマサコ