「飛び出し看板」を分類してみよう
全国的に最も有名な飛び出し看板は、赤い服を着た男の子の「飛び出し坊や」であろう。滋賀県八日市市(現・東近江市)で約50年前に制作されたものがはじまりとされ、今や全国に普及している。この「飛び出し坊や」のような、板を人型に切り抜いたタイプの看板は、以前各地に設置されていた立体の「横断旗人形」(横断歩道に設置された、横断旗を入れられる樹脂製の人形)に代わるものと考えられる。ドライバーの注目も集めやすいため、さまざまなバリエーションが作られている。
一方、普通の四角い看板についてはどうだろうか。川崎・小向に設置された看板は、文字のみで「危ない!! とびだしは事故いつぱい 車はきゆうに止れない」と大書され、緊迫感を与える作りになっている。
しかしこの言葉は、ドライバーに向けてというよりは、飛び出す側の子どもに向けたものなのかも知れない。北砂の看板も「あぶない!とびだし」の文字とともに怒る子どもの顔が描かれており、これも子どもに向けた注意とみてもよい。
とはいえ全体的に見れば子どもに向けた飛び出し看板は稀であり、ドライバー向けのものの方が圧倒的に多い。そこで、こうしたドライバー向けの「飛び出し看板」を分類してみよう。「飛び出し」という言葉を用いていなくても、徐行を促す看板については、広く「飛び出し看板」に含めても良いと思われる。
基本要素は「ボール・子ども・車」
まず「飛び出し看板」に必ずと言っていいほど描かれるのは、子どもの絵である。タヌキが飛び出す益子の看板や、ピクトグラムでデザイン化された祐天寺の看板などの例もあるが、ごく少数である。
また女の子は数が少なく、圧倒的に男の子が多い。
看板に描かれる場面で最も多いのが、「ボールを追いかける」である。
やはり飛び出しが起こりやすい状況だからであろうか。
狛江や六浦の看板は、昔から各地で見かける絵柄だ。
子ども単体で描かれる場合もあれば、八広の看板のように驚くドライバーとセットで描かれることもある。
ドライバーが省略され、車自体が擬人化されている絵柄もよく見られる。
飛び出すほどの焦りは何なのか
他に見られる絵柄は「走る子ども」である。何に急いでいるのか分からないが、一生懸命走っている子どもが描かれている。高尾の子どもの走る姿はほのぼのしているが、自由が丘や四谷の子どもは帽子を飛ばして、汗を流して、何をそんなに焦っているのか。
特に意味はないのかも知れない。子どもは得てして意味のない行動を起こしがちである。大人のドライバーは、そうした予測も込めて注意を払わなければならないことを、飛び出し看板により思い知らされるわけだ。
近頃ではボール遊びを禁じる公園も少なくなく、外で遊ぶ子どもの数も減りつつある。しかしドライバーはいつ何時でも飛び出しには気を付けなければならない。ドライバー達の自覚を促すためにも、飛び出し看板は今後も残り続けていって欲しいものだと思う。
絵・取材・文=オギリマサホ