選べるカレーは外れなし! 3種を選べるプラックセット
秋葉原駅と神田駅の中間を東西に走る靖国通り。どちらの駅からも5分ほど歩くこの通り沿いの地下に『PLUCK』は店を構える。
食券を購入し、プラックセットを注文。レギュラーメニューのカレーからお好みで3つのカレーを選べる。
PLUCKチキンカレーを一口食べると、はじめは甘く、喉を過ぎるころには辛さが広がってくる。また一口食べて甘さを感じ、飲み込むころに辛さを感じる。するとまた次の甘い一口が欲しくなる……。スパイスの生みだす確かな味のリズム。そのリズムにのってどんどん食べ進めてしまう。しっかりスパイスがきいて、じわじわと辛いのにやめられない味。
チキンを食べてみるとカレーとは違ったスパイシーさでびっくり。カレーと同じ味付けの肉もおいしいけれど、『PLUCK』のチキンはカレーより濃厚な味で、仕事の丁寧さを感じる。
お次はポーククルマカレー。ヨーグルト仕立てのコクのある甘さの中に、わずかにピリッと辛味を感じる。甘口ながらちゃんとスパイスの風味を堪能できる仕上がり。ブリンと小気味よい歯ごたえのポークは旨味が濃厚。
ココナッツミルクのマイルドなコクがありつつ青唐辛子のフレッシュな辛味がきいて、飽きないタイ風グリーンカレー。豆乳入りで、あと味はほどよくさっぱり。じんわりとあとをひくおいしさで食欲がどんどんわいてくる。
タイプの違う3種のカレーに大満足。次に来たときはほかの味も試したい。けれど今回食べた3種のカレーもまた食べたい!
6種のカレーを3時間で仕上げる。その手腕はゲームで鍛えた⁉
『PLUCK』では、PLUCKチキンカレー、タイ風グリーンカレー、なすとひき肉のカレー、和風カレー、ポーククルマカレー、チキンキーマカレーの6種類が常時スタンバイ。そのほか、週ごとにスペシャルカレーが登場する。合わせて7つのカレーはベースがそれぞれ違っていて、ひとりで仕込むなんて相当大変なのでは……?
「いえ、3時間あればすべて仕込み終えます」。あっさりと答えてくれたのは店長の道上(みちかみ)英俊さん。ええっ、でもこれイチから作っているんですよね?
「そうですけれど、作業の工程、時間の制限、味の追求、すべてを攻略していくんです。自分にとってのカレー作りはゲームでいう“やりこみ要素”ですね」
「森羅万象はゲームですよ」と言う道上さん。よく話を聞いてみれば、『PLUCK』の店長・道上さんは知る人ぞ知る有名格闘技ゲーマーだったとか!
道上さんは調理の専門学校時代、クラスの仲間とカレーを食べ歩くことにハマり、カレー作りにも凝るようになった。当時のゲームセンターでよく遊んでいた仲間に自作カレーをふるまい好評だったことで、自分の店を開こうと考えはじめたそう。
格闘ゲーマーとして名を馳せた道上さんを慕って、声優や作家、イラストレーターや歌手など、ゲームやアニメ関係のお客さんが来店する『PLUCK』。各界のプロが集まることで秋葉原系・池袋系のサブカルチャーコンテンツと『PLUCK』のコラボメニューも実現した。秋葉原も近く、オタクフレンドリーな『PLUCK』だが、この店の味をひいきする神田のオフィス街で働く人々など“非オタク”な常連さんも多い。
一流店で修業後、ますますカレーを“やり込んだ”店主
20代のころの道上さんはカレーの『SITAARA(シターラ)』で、30代も『erick curry(エリックカレー)』(現・エリックサウス)で修業を積んだ。どちらも一流店として知られる店だ。『シターラ』ではインド人のシェフに交じって現地のレシピに忠実な高級レシピを覚え、『エリックカレー』では日本人の舌に好まれるようなアレンジレシピを学んだ。
道上さんいわく「カレーは特に “やり込み要素”が多い料理」。スパイスとハーブをふんだんに使ったカレー料理は古くから世界で愛されている。しかし環境や作る人、ほんのちょっとの材料の違いによって仕上がりはまったくの別物になる。だからこそ道上さんはカレー作りにゲームのような魅力を感じ「楽しくなって、どんどんやり込みたく(=究めたく)なったんですよね」。
一流店のレシピを学んだ店主がさらに磨きをかけた『PLUCK』。全メニューをコンプリートしたくなる名店だ。
構成=フリート 取材・文・撮影=宇野美香子