Googleマップを見ても道に迷う理由
まず、方向音痴を代表して、方向音痴じゃない人に言いたいことがあります。
方向音痴じゃない人って、「道に迷う」という悩みに対して「Googleマップ見ればいいじゃん」って言うじゃないですか。
……見てないとでも?
Googleマップは当然見てます。見ても迷うんです。
Googleマップで目的地を検索すると、目的地は赤いピン・自分が居る場所は青い丸で表示されますよね。そして、経路を検索すると、目的地と現在地をつなぐ最短ルートが表示されます。
しかし!
それを見てもなお、第一歩目をどちらに進むべきかわからないんです。
現実の風景と地図が、脳内でうまく照合されないんですよね。
わからないので、いちかばちか勘で歩き出します。
地図上の青丸が思い通りの方向に動けば「こっちで合ってた!」と安堵し、反対側に動けば「違った!」と戻る。
この高度に文明が発達した現代において、「実際に歩いてみる」という非常に原始的な手段でしか方向を確認できない私。なんとも情けないです。
「じゃあナビ機能を使えば?」と言われそうですが、私の場合、ナビ機能を使っても迷うことが多々あります。
なぜならあのナビ機能、方角で指示してくるじゃないですか。
「南に進む」とか言われても、こちとら南がどっちかわからないんですよ。方角じゃなく左右で言ってほしい。
いや、私の向きによって左右が変わってしまうことくらいはわかります。だけど現在のテクノロジーなら、スマホを持ってる人間の向きを判断するとか、できそうじゃないですか?
それと、最大の難関は駅です。
首都圏の大きな駅って、難しすぎませんか?
上京してきた地方出身者は、一度は駅構内で迷ったことがあるはず。ちなみに私は札幌出身なんですが、地元のまあまあ大きな駅でも迷います。
まぁ、そんなときこそGoogleマップの出番。
……しかし!
駅の構内で迷っているときにGoogleマップを見ても、「巨大なピンクの空間を青丸がうろうろしている」ようにしか表示されないんです。
渋谷駅や横浜駅など、駅ビルがいくつも合体している巨大な駅は、構内から脱出するだけで一苦労です。
恐怖! 気づけば元いた場所に戻っている
数年前、後輩とラーメン屋さんに行ったときのことです。
そのお店は最寄り駅から徒歩30分。車で行く人が多いのでしょうが、我々は車を持っていないため徒歩で目指しました。
方向感覚には強いと豪語する後輩。駅でGoogleマップを確認し、頷きながら「なるほど」とつぶやきます。
出た! 方向音痴じゃない人が地図を見たときによくやるやつ!
何が「なるほど」なのかわからない私としては、一度でいいからやってみたいものです。
後輩いわく、「めちゃくちゃ簡単な道」とのこと。実際に後輩は、そのあと一度も地図を見ることなくラーメン屋さんにたどり着きました。
さて、ラーメンを食べ終わって駅に戻るとき。
私が方向音痴だという話をしたからか、後輩は
「帰りはサキさんのナビで駅に戻りましょう。自分は何も言いません。Googleマップも見ちゃダメです」
と提案してきました。
いやいや、いくら私でも来た道を戻るだけだからわかるよ。
……と歩き出したものの、わりと早い段階で道がわからなくなりました。
「ごめん、ヒントちょうだい。駅の方向だけ教えて」
そう言うと、後輩は右斜め前方を指して「あっち」と言います。
「なるほど」
私は「あっち」に近づこうと、道を右折しました。
その後も、曲がり角に出くわすたび「あっち」を目指して曲がります。
しかし、いつの間にかラーメン屋さんに戻ってきていました。
「駅=右斜め前方」と刷り込まれてしまった私の脳は、右斜め前方を求めて右折を繰り返していたんです。
後輩は「……本気ですか?」と怯えた表情をしていました。
編集部をザワつかせた「目的地が動く」発言
このとき私の脳内で何が起きていたのか、図で説明しましょう。
まず、最初の段階ではこうでした。
駅は右斜め前方にあります。
しかし、いったん右折すると……
こうなります。
これを私の視界から見ると……
駅は左斜め前方になりますね。
このとき私の脳は、右斜め前方にあったはずの駅が、左斜め前方に移動したように錯覚してしまうんです。
もちろん、駅じゃなく自分が動いていることは理解しています。
なのにどうしても、右折・左折のたびに目的地が動くように感じて混乱してしまう。その結果、馬鹿のひとつ覚えで右折を繰り返してしまったんです。
……という話を担当編集の中村嬢にしたら、ものすごく途惑った表情をさせてしまいました。
おそらく、「この人はいまだに天動説を採用してるのかな?」と不安になったことでしょう。
さらには、次に会ったとき
「この前の目的地が動く話、編集部がザワついてました」
と報告されました。本当にすみません。
はたして、こんな私でも方向音痴を克服できるのか?
方向音痴の人は「わかるー!」と頷きながら、方向音痴じゃない人は「何言ってんの」と笑いながら読んでください。
文=吉玉サキ(@saki_yoshidama) 図=絵と図 デザイン吉田(@etozudeyoshida)