野菜、肉、海の幸をいっぺんに楽しむ贅沢トッピング
神田駅北口を出て神田警察通りを渡る横断歩道の正面のビルにカレー専門店『Komi’z』がある。2020年の12月にオープンしたばかりのニューフェイスだ。さっそく看板メニューのひとつKomi’zカレー1を注文。
オーナーの小美野(こみの)隆大さんは「野菜、肉、海の幸を一度に食べてもらいたくて、やっちゃいました」と笑う。
約20cmのエビフライはしっかり太く、大きくて食べ応え抜群。カラッと揚げられていてカレーに合う! 「細くてショボいエビフライが出てくるとがっかりしますよね。そういうのすごく嫌で」と、太っ腹。牛すきは甘辛い味つけ。カレーと一緒に口に含めば幸せ気分。
緑が鮮やかな長ねぎは茨城県水戸市のブランドねぎ「柔甘(やわらか)ねぎ」を使用。やわらかくて甘い長ねぎは生産者から直接仕入れているためみずみずしい。カレーと長ねぎの組み合わせってどうなんだろう? ちょっとドキドキして食べてみると、臭みがなく、さっぱりしていておいしい。長ねぎ、エビフライ、牛すきを少しずつ混ぜながら食べていけばいつまでも飽きない。
遊び心がきいた個性的なメニューも試したい!
メニューを見ていると、どうしても気になるものがチラホラ……。
その名の通り丸ごと茹でた玉ねぎがライスの横にドーン! と添えられている、まるごと玉ねぎカレー。玉ねぎの存在感とあり得ない見た目に思わず笑ってしまう。
一口サイズに玉ねぎを切り崩し、ルーとご飯を一緒に一口。トロトロでうま味が詰まった玉ねぎの自然な甘さが、ルーと引き立てあって美味。見た目の衝撃とは裏腹に、とてもやさしい味だ。
季節ごとに変わるという限定メニューも気になるところ。『Komi’z』では、常に3つほどの限定メニューが提供され、取材時(2021年5月時点)では、大人のチョイ辛BLACKカレー750円、照り焼きチキンと春キャベツのカレー800円、そして漬け初鰹のたたきと水菜のカレー1000円が登場。
食べてみると、特製タレに漬け込まれた初鰹のさっぱりとしたうま味がカレーと合う! 清涼感のある水菜のシャキシャキ食感、すりおろされたショウガの風味もいい感じ。どんな食材も引き立てる『Komi’z』のルーだからこそ、ふだんカレーとは合わせない食材もおいしくなるのだろうなぁ。
意外なカレーと出合える店『Komi'z』に来たらワクワクする!
『Komi’z』はふたりの男性が“ダブル店主”の体制で営む。ホール兼オーナーの小美野隆大さん、キッチン担当の清水雅彦さん。ふたりともが店主という珍しいパターンだ。同じ飲食店で働いていたふたりは同い年ということもあり意気投合。「いつか一緒に店をやろう」と清水さんが小美野さんを誘うかたちで『Komi’z』がはじまった。
清水さんに当時どんな気持ちで小美野さんを誘ったのか聞いてみたところ、「ん~、ノリ(笑)」と一言。一方、ノリで誘われた小美野さんは、自身を完璧主義と言うこともあり、出店までに計画的に貯金。そして、『Komi’z』で出そうと思っていたカレーのような正統派のカレー店を徹底的に食べ歩き、売れる店・売れない店の違いを研究したそう。「23区の店を全部食べてみないと気が済まなかった」とのことで、訪れた店の数は300を超えるとか!
正反対なタイプに見える “ダブル店主”でも、ふたりが会話をする様子は、まさに気の合う友人同士。この関係性が肩ひじ張らない居心地のいいお店の空気を生んでいるのだろう。そしてふたりとも「自分たちで自由に楽しくやりたいから店を持った」と言うのだから、常識にとらわれない、おもしろいメニューが登場するのも納得だ。
「『Komi’z』に来たらこれまでに見たことのないカレーと出合えると思ってほしい。カレーがおいしいのはもちろん、お客さんがワクワクする場所でありたい」というふたり。次はどんなカレーで驚かせてくれるのか、待ち遠しくなる店だ。
構成=フリート 取材・文・撮影=宇野美香子