「家族で楽しめる店」として赤羽の街にオープン
赤羽の街を歩いていると、あることに気が付く。
リーズナブルな価格で楽しめる居酒屋は駅前に多く軒を連ねるが、ちょっとした通りに1本入るだけで、和食から中華、そしてこだわり満点の多国籍料理店など、数々の飲食店が見えてくる。どれもこれもエッジの利いたお店ばかりで、ついつい目移りしてしまう。
『赤羽スペインバルCirco』があるのもまさにそんな通り沿い。赤羽駅東口から1番通りを過ぎて少し歩くと、小さいながらもどこか賑やかそうな雰囲気のあるお店が見えてくる。
「赤羽って街は“飲み屋街”というイメージで、子連れのファミリーがゆったりと食事を楽しめるお店が当時はあまりなかったんです。なので、僕らもそうだし、僕らの子供たちの友達ファミリーが気軽に集まれて、食事ができるお店をという思いで始めたんです」と語ってくれたのが、『赤羽スペインバルCirco』のオーナー、溝口良さんだ。
店名の「Circo」とはスペイン語でサーカスの意味。「みんなでワイワイと楽しめる空間にしたい」という溝口さんの願いを込めた店名だが、オープンから6年以上がたった今、お店には子連れのファミリーがやってきて本格的なスペイン料理を楽しんでいるという。
スペイン料理に和のテイストを入れてアレンジ
ディナータイムになると、スペインオムレツやアヒージョなどのアラカルトメニューが人気を誇る『赤羽スペインバルCirco』だが、リーズナブルな価格で楽しめるランチも当然大人気。中でも今回はスペイン料理の王道かつ、お店自慢の特製パエリアのランチセット1580円をいただいた。
お店の自慢とも言えるパエリアは1人前ずつ作るという本格派。「カリカリのお焦げの部分こそ、パエリアのおいしいところですから」と溝口さんが語るように、鍋にはカリカリに焼かれたパエリアのお焦げが。ゆっくりとこそげ取って食べるのはまさに至福のひと時と言えるだろう。
エビやイカ、ムール貝などのシーフードがふんだんに盛られ、見栄えもするパエリアはその味わいも深いもの。魚介類のエキスをたっぷりと吸い込んだご飯もおいしく、さらにパエリアの醍醐味、お焦げの部分もカリカリ。これは大人も子供も喜んで食べることは間違いない。
そして付け合わせとなっている2種類の料理も絶品。この日はジャンボマッシュルームのステーキとスペインオムレツだったが、マッシュルームの食べ応えは抜群で、特製ソースとの相性も◎。そして自家製のアリオリソースとともに楽しむスペインオムレツはニンニクの風味も効いている。緊急事態宣言下で酒類の提供がないため実現できなかったが、お店自慢のスペイン産ワインをついつい飲みたくなるほどだった。
どれを食べても絶品でまさに本場スペインに来たかのような雰囲気のお店だが、溝口さんのこの料理のこだわりについて伺うと「敢えてスペイン料理っぽくしすぎない」と答えてくれた。
「もちろん、ベースそのものはスペイン料理なのですが、やってくるお客様に合わせて日本人好みの味わいに少しずつ和のテイストを入れるなど、アレンジを加えてあるんです」
例えば、スペインオムレツにかけてあったアリオリソース。通常のままだとニンニクの味わいが少々強く出ているが、このお店ではクリームを入れてマイルドな味わいに。そうした想いが大人も子供も幅広い世代に愛される理由になっているのかもしれない。
「ファミリーに居心地のいい空間」がお店のこだわり
「赤羽の街に家族でくつろげるファミリー向けなお店を」という想いで営業してきた『赤羽スペインバルCirco』。溝口さんのそうした想いの通り、お店にはファミリーの常連客が多くやってくるようになり、最近始めたというテイクアウトも地元の方々を中心に大好評。この取材中も絶品のパエリアを求めてやってくるお客さんが後を絶たなかった。
赤羽のスペイン料理店として見事に根付いた『赤羽スペインバルCirco』だが、最後にお店のこだわりについて溝口さんに話を伺った。
「料理のこだわりと同じくらいに、居心地の良さを意識しています。店内の雰囲気も落ち着けるようにといろいろ工夫してみたり、子連れのお客さんたちがゆっくりと食事できるように、食事に飽きてしまった小さな子供向けのオモチャなども用意してあります。今は新型コロナウイルスの影響で、なかなか楽しいことがないのですが、せめてご飯を食べている時くらいは楽しくおいしい思いをしてもらいたいという思いで営業しているので、気軽に来ていただけると嬉しいです」
構成=フリート 取材・文・撮影=福嶌弘