タンタンメンの専門店? いえいえ本格的な四川料理が揃ってます
店内に入ると、所狭しとメニューが貼ってあった。ピータン豆腐やバンバンジーなどおなじみのメニューにまぎれて、マーラーアヒル首、豚足の塩コショウ炒め、豚軟骨と長芋煮込み、などちょっと変わったメニューもある。店名からするとタンタンメンの専門店のようだが、実際は3人の中国人が営む本格的な四川料理の店だ。
オーナーのセキさん、料理人のヨウさん、ホール担当のシンさんの3人は、中国各地から別々に来日し、横浜の中華街で働いているときに出会った。そして、セキさんが中心となってオープンしたのがこの店だ。
なんでタンタンメン?と聞くと、「横浜に住んでいたとき、タンタンメンの店をたくさん見ました。日本ではタンタンメンがすごく人気がある。名前に入れればきっとたくさんの人が来てくれると思って」
その目論見は大成功。刀削麺を使ったこの店のタンタンメンは、定番の人気メニューになった。タンタンメンを目当ての客も、何度か来店するうちに麺以外の四川料理のメニューも頼んでくれるようになり、やがて常連に。というケースも多いという。
四川料理といえば、やっぱりコレ! 代表格の麻婆豆腐
辛そう! 大丈夫だろうか…。と心配しつつ、ぐつぐつと泡立つ油から立ちのぼる、辛みのある蒸気が食欲をそそる。
四川料理が専門の料理人・ヨウさんは、この道20年のベテラン。「本場の味を大切にしながら、辛さと油を減らして、日本人でもおいしく食べられるようにしているので大丈夫」と話す。
一口食べてみると、熱い! 辛い! そして最後にビリビリも来た! しかし後引く辛さと旨さに、ついついまた一口。特製の辛いタレが牛挽き肉のコクのある脂ととても合う。濃い味付けだが、豆腐のなめらかさがいい。これは白いごはんが欲しくなる。もしくはビールが飲みたくなる味だ。
「本場ではもっともっと辛くするよ」とセキさん。日本人に合わせて抑えめにしているので、辛いのが好きな人は「辛くして!」と頼んでみよう。
刀削麺がリズミカルに宙を舞う
刀削麺は、幅や厚みにばらつきがあるのが特徴。幅の広い、びろびろと波打った部分にはスープが絡みやすいし、厚い部分はもっちりした弾力が楽しめる。一度に何度もおいしいお得な麺だ。
実際にヨウさんが調理するのを見せてもらった。小さなまな板に乗った麺ダネの塊を専用の器具で削ぐ。削ぐ瞬間、しゅっと音が立ち、麺がきれいな放物線を描いて湯の中に入っていく。次々と削いだ麺が同じ軌道を辿るのを見て、技術の高さを感じた。
お湯に麺が浮いてきたらできあがり。汁ありならばスープを注ぎ、汁なしならば鍋で炒めて完成だ。
汁あり・汁なし、どちらも大人気の刀削麺
タンタン刀削麺が定番人気ならば、隠れた人気なのがニンニク刀削麺。ほかではあまり見ないメニューだが、ニンニクたっぷりのスープがクセになると評判だ。
運んでくる最中から、ふわ〜っとニンニクのいい香り。具は豚の挽き肉、キクラゲ、青梗菜。ニンニク入りのスープで煮込み、かきたまにしてある。
まずスープを一口。ガツン! としたニンニクのパンチで、一気に食欲のスイッチが入った。麺はもっちりした弾力だが、波打った部分にはスープが染み込んでいておいしい。麺の太さの違いにより、食感の変化が楽しめる。スープが染みたふんわりの玉子に、コリコリっとした食感のキクラゲがいいアクセントになっている。スープには少し赤みがあるが辛味はなく、ニンニクと豚挽き肉の脂の甘さが見事に調和して止まらない旨さだ。
汁無しネギ油かけ辛味刀削麺は、最近人気が出てきたメニューだ。刀削麺を焼きそばにした感じで、汁ありとはまた違ったおいしさが味わえる。
炒めた刀削麺はもっちり度が上がり、辛味のある濃い味付けとぴったり。回しかけたネギ油の香りが食欲をそそる。ボリュームがあるので何人かでシェアするのもいい。
これからも、大好きな赤羽でお店を続けたい
赤羽に店を構えるため住まいも移した3人。住んでみると、周りの人がとてもやさしく、気に入っているという。
「お店も多いし、便利だし、以前住んでいた横浜よりずっと楽しい!」とセキさんは笑う。
「本物の四川料理が楽しめて、家にいるみたいにほっとする店にしたい」と話す。これからも本場の味を楽しませてほしい。
取材・⽂・イラスト=ミヤウチマサコ 撮影=中華タンタンメン、ミヤウチマサコ