江戸時代から現代まで、人々を魅了し続ける『水滸伝』に迫る

仇英(きゅうえい)(款)《九成宮図》(部分)、明時代(16世紀)、『大阪市立美術館』(阿部コレクション)【会期中場面替えあり】
仇英(きゅうえい)(款)《九成宮図》(部分)、明時代(16世紀)、『大阪市立美術館』(阿部コレクション)【会期中場面替えあり】

北宋時代の史実をもとに成立した長編小説『水滸伝』。その内容は、12世紀、徽宗(きそう)皇帝の治世を舞台に、腐敗した政権に不満を抱いた宋江(そうこう)率いる108人の豪傑が梁山泊(りょうざんぱく)に集うというもの。

日本に伝わった『水滸伝』は江戸時代に一大ブームを巻き起こし、オリジナルとは違った新たな物語や表現が生み出されていく。曲亭馬琴(きょくていばきん)は葛飾北斎の挿絵で『新編水滸画伝』を出版、さらにその日本版ともいえる『南総里見八犬伝』を著し、その後多くの翻案作品も生まれる。

担当学芸員の田中晴子さんは「『水滸伝』の誕生の背景と展開を美術館で追うということで、逸品揃いの内容です。歌川国芳の出世作『通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)(つうぞくすいこでんごうけつひゃくはちにんのひとり)』全74図を揃えるなど錦絵展示も多く、『水滸伝』の豪傑たちが活躍した舞台を物語る《清明上河図》(重要文化財)をはじめとした高度で洗練された中国の名品、中国と日本の貴重な版本、江戸の粋を語る刺子半纏、昭和期の挿絵原画、現代アート、テレビドラマの舞台の衣裳など、まさに見どころ満載です」と語る。

北宋〜清の多彩な中国美術、および江戸〜現代にいたるまでの日本美術を多角的に展観し、『水滸伝』がなぜ今も人々の心を掴むのか? その秘密を浮かび上がらせる。

曲亭馬琴作・葛飾北斎画 『新編水滸画伝』 初編 巻之十、江戸時代・文化4年(1807) 刊、浦上蒼穹堂
曲亭馬琴作・葛飾北斎画 『新編水滸画伝』 初編 巻之十、江戸時代・文化4年(1807) 刊、浦上蒼穹堂

歌川国芳が描いた連作74枚を一挙公開!

歌川国芳 《通俗水滸伝豪傑百八人之一個 九紋龍史進 跳澗虎陳達》 江戸時代(19世紀)、個人蔵
歌川国芳 《通俗水滸伝豪傑百八人之一個 九紋龍史進 跳澗虎陳達》 江戸時代(19世紀)、個人蔵

中国で生まれた物語『水滸伝』は日本に伝わり、長く愛されてきた。その世界を鮮やかに描き出したのが、江戸時代後期の浮世絵師・歌川国芳。国芳の出世作「通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)」では、豪放な好漢たちが、筋骨たくましい姿で躍動している。現在74枚が確認されているこの連作すべてが一挙公開されるのも、大きな見どころだ。

また、『水滸伝』は現代にいたるまで読み継がれ、文学や美術だけでなく、映画、ドラマ、漫画、ゲームなど多様なメディアで新たな解釈が重ねられてきた。梁山泊の豪傑たちが、時代ごとにどのような姿で描かれているのか、見比べてみるのも面白い。小説を彩った挿絵や漫画原画、白髪一雄のアクション・ペインティング、連続ドラマ「北方謙三 水滸伝」の衣裳から、小林勇輝のパフォーマンスまで、さまざまな豪傑たちの姿を楽しめる。『水滸伝』が現代日本の文化・芸術の中でどのように展開し、忠義や抵抗といった主題がどのように変容してきたのかにも注目だ。

さいとう・たかを《『水滸伝』原画》 1996年 (C)さいとう・たかを/さいとう・プロダクション
さいとう・たかを《『水滸伝』原画》 1996年 (C)さいとう・たかを/さいとう・プロダクション

開催概要

「水滸伝」

開催期間:2026年9月19日(土)~11月8日(日)
※会期中、一部作品の展示替えあり。
開催時間:10:00~18:00(金は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:月(9月21日・10月12日・11月2日は開館)、10月13日(火)
会場:東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1-9-1)
アクセス:JR東京駅丸の内北口直結
入場料:一般1600円、高校生・大学生1100円、中学生以下無料
※身体障害者手帳などの手帳をお持ちの方は一般1100円、高校生・大学生900円、その付添いの方(1名まで)は無料。

【問い合わせ先】
東京ステーションギャラリー☏ 03-3212-2485
公式HP:https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202609_suikoden.html

 

取材・文=前田真紀 画像提供=東京ステーションギャラリー