雨を止めるための祈りの儀式
祭りの起源は約700年前にさかのぼる。元亨元年(1321)、武蔵の国が大干ばつに見舞われた際、厳正寺の住職だった法蜜上人がわらで龍像をつくり、7日間雨を降らせる祈祷を行った。雨を降らせることに無事成功したものの、今度はその2年後に雨が降り止まず、田畑はことごとく海となり人々が水害に悩まされることに。そこで上人は獅子の仮面を3つ作って「水止(しし)」と呼び、農民たちに被せて舞わせたり、笛太鼓を叩かせほら貝を吹かせたりして天に向かって踊らせた。すると見事に雨は止み、空は晴れ渡ったという。
これ以降、人々は感謝の舞として「水止舞」を奉納するようになった。「水止舞は雨を止ませる儀式。雨を降らせる雨乞いの祭りは全国にもありますが、雨を止ませるための祭りというのは珍しいのでは」と話すのは厳正寺水止舞保存協力会の鳴嶋さん。
わらでぐるぐる巻きにした男たちを転がす!?
祭り当日は言い伝えに則って、雨乞いの儀式である「道行(みちゆき)」と、雨を止ませるために奉納する「水止舞」の2部構成で行われる。「道行」は13時に大森第一小学校前をスタート。龍に見立ててわらの縄で巻き上げた2本の筒の中に龍神役となる男性が入り、男たちによってゴロゴロと路上を転がされる。沿道にはたっぷりと水が入ったバケツが置かれていて、龍神役をめがけて容赦なく水が浴びせられ、そのたびに龍神役はほら貝を吹き鳴らす。
都心で目を疑うような光景が繰り広げられるが、これは龍神に水を掛けることで雨乞いをしているシーン。鳴り響くほら貝の音は、龍神が喜んで雄叫びを上げている様子を表現しているのだそう。ちなみに、祭りの参加者だけでなく、見守っている見物客にも水は掛かるので、見学の際はずぶ濡れ覚悟で臨もう。
厳正寺に到着すると、次は雨止めの儀式が始まる。男たちが龍神役の入ったわら筒を舞台へ運び、しめ縄を解いて舞台を取り囲むように置く。その中で赤い面の雄獅子(大水止)、黒い面の若獅子(中大止)、金の面の雌獅子(女水止)の3匹の獅子が笛と唄に合わせて演目を行う。このように鎌倉時代に法蜜上人が行った、雨乞いの儀式から雨止めの儀式までが再現され、今日まで大森の地に脈々と受け継がれている。1963年には東京都無形民俗文化財にも指定された伝統芸能をぜひ現地で見学しよう。
開催概要
「水止舞」
開催日:2026年7月12日(日)
開催時間:13:00~15:00ごろ
会場:厳正寺(東京都大田区大森東3-7-27)
アクセス:JR京浜東北線大森駅東口から京浜急行バス「森ヶ崎」行きなど15分の「大森東中学校」下車6分
【問い合わせ先】
厳正寺水止舞保存協力会☎080-4931-4321
公式HP:https://www.mizudome.com/
取材・文=香取麻衣子 ※写真は主催者より提供






