1945年以降の日韓美術の関係史をひもとく

李禹煥《線より》1977年 『東京国立近代美術館』蔵 (C)Lee Ufan。
李禹煥《線より》1977年 『東京国立近代美術館』蔵 (C)Lee Ufan。

音楽、ファッション、メイクなど、いまや日本人にとっても身近でなくてはならないものとなっている韓国のカルチャー。そんな隣の国のことを、アートを通して新しく発見しようと試みる本展は、日韓の国公立美術館が3年にわたる共同リサーチを経て実現した共同企画として、横浜に続き、2026年5月からは韓国・ソウルの『国立現代美術館果川』でも開催予定だ。

日韓両国から50組以上の作家による約160点の作品が集結し、韓国の国立現代美術館の優品19点の来日や日本初公開の作品、本展のための新作も展示。1945年以降の日韓美術の関係史をたどる国際的にも初の試みとして、現在地とともに生きる未来を、アートを通して見つめることができる機会となる。

中村政人《トコヤマーク/ソウル》1992年 韓国製床屋マーク、鉄他 個人蔵。
中村政人《トコヤマーク/ソウル》1992年 韓国製床屋マーク、鉄他 個人蔵。

アートから浮かび上がる両国の関係性

富山妙子《光州のピエタ》1980年 スクリーンプリント『横浜美術館』蔵(坂田棗氏寄贈)。
富山妙子《光州のピエタ》1980年 スクリーンプリント『横浜美術館』蔵(坂田棗氏寄贈)。

1945年の日本の敗戦からの両国の歩み、視点を5章に分けて展開。1章「はざまにー在日コリアンの視点」では、1945年の日本の敗戦、朝鮮戦争と半島の分断、そして、日本と大韓民国の国交が正常化する1965年までの約20年間を、日本と朝鮮半島の「はざま」にいた在日コリアンを軸にたどる。2章「ナムジュン・パイクと日本のアーティスト」では、世界的なビデオ・アーティストとして知られるナムジュン・パイクが、同時代の日本の美術界とどのようにかかわったのか、日韓アーティストたちのつながりに着目して紹介。3章「ひろがった道 日韓国交正常化以後」では、1960年代後半から80年代を中心に、両国の同時代美術が相手の国にどのように紹介されていたのか、また、いかに刺激を与えあっていたかが探られる。

4章「あたらしい世代、あたらしい関係」では1992年にソウルで開催された中村政人と村上隆による伝説的な2人展「中村と村上展」を起点に、同時代にソウルで活動を始めていたイ・ブルの作品が紹介される。5章「ともに生きる」では1987 年に韓国では民衆の力により軍事独裁政権が終わりを迎えたが、その民主化に連帯するアート界の動きに注目。韓国国内だけでなく、国外在住のアーティストの間にも広がった、社会問題が結びついた作品が紹介される。

アート作品によって見過ごされがちな社会の問題を提起することは、現在のアーティストたちにも受け継がれ、いまやアートの大切な役割のひとつになっている。

現在、そして未来を「ともに生きる」ための気づきを、作品からみつけられそうだ。

百瀬文×イム・フンスン《交換日記》2015-18年 ビデオ 64分 個人蔵。
百瀬文×イム・フンスン《交換日記》2015-18年 ビデオ 64分 個人蔵。

開催概要

横浜美術館リニューアルオープン記念展「いつもとなりにいるから 日本と韓国、アートの80年」

開催期間:2025年12月6日(土)~2026年3月22日(日)
開催時間:10:00~18:00(入館は~17:30)
休館日:木・12月29日(月)~2026年1月3日(土)
会場:横浜美術館(神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1)
アクセス:JR根岸線・横浜市営地下鉄ブルーライン桜木町駅から徒歩10分、横浜高速鉄道みなとみらい線みなとみらい駅から徒歩3分
入場料:一般2000円、大学生1600円、高校・中学生1000円、小学生以下無料、ペア券(一般2枚)3600円
※障害者手帳を持参の人、および付き添いの人1名は無料。

【問い合わせ先】
横浜美術館☏045-221-0300
公式HP https://yokohama.art.museum/exhibition/202512_jkart1945/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=横浜美術館