かつて一帯は栗の名産地だった

大國魂神社は111年の創建といわれ、1900年以上の歴史を誇る東京屈指の古社。その昔、武蔵国を拓いたとされる大國魂大神(おおくにたまのおおかみ)を守り神として祀り、また武蔵国の総社として古くから人々の厚い信仰を受けている。毎年9月27・28日に行われる「秋季祭」は、元文2年(1738)に太々神楽(だいだいかぐら)といわれる神楽の創立をきっかけに始まった。一時期中断されていた期間もあったが再興され、現在まで引き続いて行われている。

この秋季祭は別名「くり祭」とも呼ばれる。かつてこの辺りでは上質な栗がよく採れ、保存食としても重宝されていたことから徳川家に献納されていた。栗の収穫の時期と太々神楽が行われる時期が重なっていたことから、やがてそう呼ばれるようになった。参道に栗を売る露店が出るのも名物で、秋の味覚をお持ち帰りすることができる。

旬の栗を売る店が参道に並ぶ。ほかの祭りでは見られない光景だ。
旬の栗を売る店が参道に並ぶ。ほかの祭りでは見られない光景だ。

行灯の明かりが境内をやさしく照らす

境内には約260本の行灯が掲出され、周囲が暗くなってくる17時以降、ろうそくに火をつけて行灯に明かりが灯される。行灯には府中市芸術文化協会や府中市書道連盟、ボーイスカウトなどの地域の各団体によって奉納画が描かれ、ひとつずつ見て回るのも一興だ。春のくらやみ祭は太鼓や神輿が出るにぎやかな祭りに対して、秋季祭は幽玄な雰囲気ただよう境内をお参りする静かな祭りといえよう。

境内の神楽殿では、27日(土)17時~は薪狂言の奉納が、28日(日)17時~と19時~は神楽の奉納が行われる。また28日(日)は、けやき並木通りに12基の山車が集まってお囃子(はやし)の競演も。さらに神社参道には約120の露店が立ち並び、食べ歩きも楽しめる。「夕方ぐらいから行灯がきれいに灯るので、その幻想的な雰囲気を楽しんでもらえれば」と大國魂神社の北山さん。行灯の明かりに照らされた静かな境内で秋の夜長を楽しもう。

境内は行灯の明かりに包まれ、幽玄な雰囲気を醸し出す。
境内は行灯の明かりに包まれ、幽玄な雰囲気を醸し出す。

開催概要

「秋季祭くり祭」

開催期間:2025年9月27日(土)・28日(日)
開催時間:9:00~21:00
会場:大國魂神社(東京都府中市宮町3-1)
アクセス:JR南武線・武蔵野線府中本町駅、京王電鉄京王線府中駅から徒歩5分

【問い合わせ先】
大國魂神社 ☎042-362-2130
URL:https://www.ookunitamajinja.or.jp/

 

取材・文=香取麻衣子 ※画像は主催者提供