12の版元を通してひも解く浮世絵のもうひとつの物語
大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』で江戸の版元、蔦屋重三郎の生涯が描かれていることから、2025年は各地で蔦重や江戸時代の出版をテーマにした展覧会が数多く開催された。ドラマも佳境を迎える秋、浮世絵を専門とする『太田記念美術館』でも版元という視点で展覧会が開催される。
蔦重だけでなく、浮世絵草創期から明治時代にいたる約230年にわたり、時代を彩った12の版元に注目。それぞれの企画力や戦略により浮世絵がどのように発展していったのか、版元の眼差しを通して浮世絵の歴史を振り返る。
主幹学芸員の赤木美智さんは、「喜多川歌麿や東洲斎写楽をプロデュースした蔦屋重三郎をはじめ、浮世絵の名品を生み出した12の版元とその作品をご紹介します。葛飾北斎『冨嶽三十六景』を手がけた老舗版元の西村屋与八、新興版元ながら歌川広重『東海道五拾三次之内』を大ヒットに導いた竹内孫八、小林清親とともに明治の新しい版画表現を模索した松木平吉など、名作誕生の背景にあった版元の出版戦略や、絵師たちとの人間ドラマにも触れてみてください」と見どころを語る。
知られざる名版元が手掛けた業績が一堂に
喜多川歌麿や東洲斎写楽のほかにも、北尾重政や勝川春章、また鳥居清長など、時代を代表する一流絵師たちの作品を手がけた蔦屋重三郎。本展では蔦重とトップ絵師による名品の数々が展示される。なかでも歌麿作品では美麗な狂歌絵本や、女性の顔を大きくとらえ一世を風靡した「美人大首絵」の名品を、また写楽は、世界で『太田記念美術館』だけが所蔵する「七代目片岡仁左衛門の紀の大臣名虎」を含め、前後期あわせて所蔵品15点すべてを観覧できる貴重な機会となる。
また、最初の浮世絵師である菱川師宣(ひしかわもろのぶ)とタッグを組んだ鶴屋喜右衛門や鱗形屋(うろこがたや)、葛飾北斎に目をかけ「冨嶽三十六景」シリーズも手がけた西村屋与八、さらに新興版元ながら歌川広重「東海道五拾三次之内」シリーズを成功させた竹内孫八(たけのうちまごはち)といった語り継がれる名作を出版した、版元たちの業績が一堂に会し、圧巻だ。前期、後期で全展示が入れ替わるので、合わせて楽しみたい。
開催概要
「蔦屋重三郎と版元列伝」
開催期間:2025年8月30日(土)~11月3日(月・祝)
《前期》8月30日(土)~9月28日(日) 《後期》10月3日(金)~11月3日(月・祝)※前後期で全点展示替え
開催時間:10:30~17:30(入館は~17:00)
休館日:9月1日(月)・8日(月)・16日(火)・22日(月)・29日(月)~10月2日(木)・6日(月)・14日(火)・20日(月)・27日(月)
会場:太田記念美術館(東京都渋谷区神宮前1-10-10)
アクセス:JR山手線原宿駅から徒歩5分、地下鉄千代田線・副都心線明治神宮前駅から徒歩3分
入場料:一般1200円、高校・大学生800円、中学生以下無料
※障害者手帳を持参で本人と付き添い1名100円引き。
【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP https://www.ukiyoe-ota-muse.jp/
取材・文=前田真紀 画像提供=太田記念美術館





