各国で再評価高まる映画監督・森田芳光の作品に迫る

愛用の8mm機材 森田芳光事務所所蔵。
愛用の8mm機材 森田芳光事務所所蔵。

8mm映画の自主制作を皮切りに、商業映画デビュー作『の・ようなもの』(1981)以来、独立独歩のフィルムメーカーとして1980年代以降の日本映画に絶え間なく話題作を提供してきた森田芳光(1950-2011)。作家的評価を高めた『家族ゲーム』(1983)や『それから』(1985)、新しいメディアに着目しながら普遍的なコミュニケーションのドラマを描き出した『(ハル)』(1996)、ベストセラー小説を独自の解釈で映画化した『失楽園』(1997)や『黒い家』(1999)など、ジャンルの垣根を取り払い、時代の世相も巧みに取り入れながら、一作ごとに異なるスタイルや意表をつく演出を手掛けた森田監督。それらの作品群は、時に社会現象となるほどの大きな反響を呼び起こした。

近年、森田芳光の作品はアメリカ、フランス、韓国、台湾など、世界の各地で上映されており、国際的な再評価が活発になっている今、没後15年となる2026年を前に開催。10月14日(火)からは上映企画も連動企画として開催される。

企画担当者は「映画監督・森田芳光の史上初となる回顧展です。『森田組』スタッフ全面協力のもと、森田の作品世界さながらのユニークな空間のなか、劇中の小道具や本人の愛蔵品など多彩な展示が広がります。なかでも『家族ゲーム』の食卓は、当時の美術監督の監修で再製作された特別なもの。実際に座って沼田家の一員として写真撮影も可能です。他にも愛読書が並ぶ書斎の再現セット、秘蔵資料がひしめく引き出しケースなど、見どころ満載です」と語る。

『家族ゲーム』(1983年)小道具  インテリアコースター 森田芳光事務所所蔵。
『家族ゲーム』(1983年)小道具 インテリアコースター 森田芳光事務所所蔵。

森田組スタッフ全面協力による独創の展示空間は必見

自主映画時代のアイデアノート 森田芳光事務所所蔵。
自主映画時代のアイデアノート 森田芳光事務所所蔵。

特に注目なのが、森田組スタッフの全面協力のもとしつらえられた、森田映画の独特な作品世界を思わせるユニークな展示空間だ。本展のために再製作された『家族ゲーム』の食卓や、監督の創造の場となった書斎の再現セット、愛聴盤が一同に会するレコードギャラリー、監督作品のポスターギャラリーのほか、作品を彷彿させる森田芳光の世界観が目の前に出現する。

『未来の想い出 Last Christmas』(1992年)劇中キャラクターのぬいぐるみ 杉山泰一氏所蔵。
『未来の想い出 Last Christmas』(1992年)劇中キャラクターのぬいぐるみ 杉山泰一氏所蔵。

森田作品と人物像を深く知るためのトークイベントも!

2025年8月23日(土)には、初期からの森田映画フリークであり、大著『森田芳光全映画』(リトル・モア)を刊行したラッパー、ラジオパーソナリティのライムスター宇多丸氏を講師に迎え、展示の見どころについて語るトークイベントが開催。2025年10月18日(土)には、森田と大学時代に知り合い、以来公私にわたるパートナーとして共に作品を送り出してきた映画プロデューサーの三沢和子氏を講師に迎え、トークイベントが開催。いずれも『国立映画アーカイブ』7階ロビーにて。詳細はHPにて確認を。

10月14日(火)~26日(日)・11月4日(火)~23日(日)には、本展と同タイトルの特集上映も開催。自主映画時代の8mm作品、鮮烈な商業映画デビューを飾った『の・ようなもの』、社会現象を巻き起こした『家族ゲーム』、遺作となった『僕達急行 A列車で行こう』(2012)など森田の監督作品をたどるだけでなく、脚本を担当した『ウホッホ探検隊』(1986、根岸吉太郎監督)といった作品を上映し、脚本家・森田芳光の功績を再検証する。上映作品の多くは、今回の特集のためにニュープリントが作製されるのも注目だ。

開催概要

展覧会「映画監督 森田芳光」

開催期間:2025年8月12日(火)~11月30日(日)
開室時間:11:00~18:30(入室は18:00まで)、9月26日(金)・10月31日(金)・11月28日(金)は~20:00(入室は19:30まで)休館日:月、8月26日(火)~9月5日(金)、10月7日(火)~12日(日)
会場:国立映画アーカイブ 展示室(東京都中央区京橋 3-7-6)
アクセス:地下鉄銀座線京橋駅から徒歩1分、地下鉄浅草線宝町駅から徒歩1分、地下鉄有楽町線銀座一丁目駅から徒歩5分、JR東京駅から徒歩10分
観覧料:一般500円、大学生300円
※65歳以上・高校生以下及び18歳未満、障がい者手帳をお持ちの方と付き添い1名まで無料。

【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP  https://www.nfaj.go.jp/exhibition/morita2025/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=国立映画アーカイブ