戦後間もない隅田川で始まった灯籠流し

お盆の時期に各地で行われる「灯籠流し」は、海や川に灯籠を流して先祖の魂を弔う日本の伝統行事だ。隅田川でも毎年8月中旬に東京都台東区と墨田区の連携事業として「隅田川とうろう流し」が行われている。

「隅田川とうろう流しは、関東大震災や東京大空襲など隅田川で亡くなった方々の霊を弔うために、1946年に行われた浅草復興祭での戦災殉職者、水難者の回向法要として始まりました」と教えてくれたのは浅草観光連盟。その後年々盛んになり、最盛期には平和を願う声とともに隅田川に約3000個の灯籠が浮かんだという。

ところが1966年の春、高潮防止のため両岸に防潮堤の整備が行われることになり、恒例行事となっていた灯籠流しも1965年を最後に惜しまれながらも中止にせざるを得なかった。時は流れ、隅田川親水テラスの整備も整い、2005年に浅草の新たな観光スポットとして隅田川の水辺空間を観光客の憩いとにぎわいの場として広く利用するために、浅草観光連盟が40年ぶりに「隅田川とうろう流し」を復活させた。2018年には「墨田区・台東区観光分野における連携に関する協定」が結ばれたことを記念して2019年に2つの区の連携での第1回が行われ、現在にいたっている。

実際に日本の伝統行事を体験しよう!

当日台東区側は隅田川親水テラスの浅草側の東武鉄橋の辺りで、墨田区側は隅田川親水テラスの区役所前うるいおい広場から灯籠流しが行われ、多くの地元住民や観光が集まる。2つの区を合わせて約5000個(予定)の灯籠が用意され、親子連れやカップル、海外からの観光客がそれぞれの願いを込めた灯籠を流灯台から流す。「7月の花火大会とは趣を異にして、静寂の川面に無数の灯りが漂う様子は情緒満点です」と浅草観光連盟。

灯籠は当日14時から会場でも1個2000円で販売されるが、数に限りがあるため公式サイトからの事前購入がスムーズ。1個1700円(別途、送料として5個まで420円がかかる)で購入できるので、自宅で灯籠を組み立ててじっくりと思いをしたためるのもいい。そのほかに浅草観光連盟事務所や観光センター、松屋浅草では対面販売も実施する。先祖への供養やそれぞれの思いをのせて隅田川に灯籠が浮かぶ光景を間近で見て、夏の夜に思いを馳せてみては。

一般の流し始めは18時45分~。思いを込めた灯籠が流灯台から隅田川へ流れていく。
一般の流し始めは18時45分~。思いを込めた灯籠が流灯台から隅田川へ流れていく。

開催概要

「隅田川とうろう流し」

開催期間:2025年8月16日(日)
開催時間:18:30~20:15(当日販売は14:00~なくなり次第終了)
会場:隅田川親水テラス吾妻橋付近(東京都台東区花川戸)
アクセス:私鉄・地下鉄浅草駅から徒歩5分(台東区側)

【問い合わせ先】
浅草観光連盟☎03-3844-1221
URL:https://e-asakusa.jp/culture-experience/105386

 

取材・文=香取麻衣子 画像提供=浅草観光連盟