現代美術界で存在感を強めるアボリジナル女性作家の作品が集結

マリィ・クラーク《私を見つけましたね:目に見えないものが見える時》(部分)2023 年、顕微鏡写真・アセテート、作家蔵(ヴィヴィアン・アンダーソン・ギャラリー) Installation view of Between Waves, Australian Centre for Contemporary Art, Melbourne. Photo;courtesy Andrew Curtis (C)Maree Clarke。
マリィ・クラーク《私を見つけましたね:目に見えないものが見える時》(部分)2023 年、顕微鏡写真・アセテート、作家蔵(ヴィヴィアン・アンダーソン・ギャラリー) Installation view of Between Waves, Australian Centre for Contemporary Art, Melbourne. Photo;courtesy Andrew Curtis (C)Maree Clarke。

今日のオーストラリアのアートシーンを牽引し、国際的な現代美術の舞台でも存在感を強めているアボリジナル女性作家たち。現代アボリジナル・アートが興隆した1970~80年代は、男性が制作の中心で女性は作家として認められなかったという。そんななか、いかにして彼女たちはその立場を逆転し、後のアボリジナル・アート、またオーストラリア現代美術の方向性を握るようになったのか。オーストラリア現代美術の現在地を、所蔵作家4 名を含む7 名と1 組による計52 点の出品作品を通して読み解いていく、日本初の展覧会となる。

現代アボリジナル・アートの特徴のひとつが、制作手法や作品のテーマ、そして用いられる素材の多様性である。その豊かな表現力の拡がりに、女性作家が大きく貢献している。それまで芸術作品として受容されていなかった創作を、彼女たちは芸術表現に昇華させた。また、社会問題、環境問題、過去の歴史、失われた文化の復興など、幅広いテーマが扱われているのも特徴である。

本展では、彼女たちの多様な創作活動を丁寧に追うことで、アボリジナル・アートの「いま」に迫る構成となっている。

ジュリー・ゴフ《ダーク・バレー、ヴァン・ディーメンズ・ランド》2008 年 フィンガル・バレー(タスマニア)産石炭 ナイロン 北ミッドランド(タスマニア)の落角、タスマニアン・オーク 『ニューサウスウェールズ州立美術館』(C)Julie Gough Image (C) Art Gallery of New South Wales。
ジュリー・ゴフ《ダーク・バレー、ヴァン・ディーメンズ・ランド》2008 年 フィンガル・バレー(タスマニア)産石炭 ナイロン 北ミッドランド(タスマニア)の落角、タスマニアン・オーク 『ニューサウスウェールズ州立美術館』(C)Julie Gough Image (C) Art Gallery of New South Wales。
ノンギルンガ・マラウィリ《バラジャラ》2018年、天然顔料、再利用されたプリンター用インク・樹皮、ケリー・ストークス・コレクション (C) the artist ℅ Buku-Larrŋgay Mulka Centre。
ノンギルンガ・マラウィリ《バラジャラ》2018年、天然顔料、再利用されたプリンター用インク・樹皮、ケリー・ストークス・コレクション (C) the artist ℅ Buku-Larrŋgay Mulka Centre。

広い国土が生み出すアボリジナル・アートの多様性に着目

ジュディ・ワトソン《赤潮》1997 年 顔料 パステル・カンヴァス 『ニューサウスウェールズ州立美術館』(C) Judy Watson / Copyright Agency, Image (C)Art Gallery of New South Wales。
ジュディ・ワトソン《赤潮》1997 年 顔料 パステル・カンヴァス 『ニューサウスウェールズ州立美術館』(C) Judy Watson / Copyright Agency, Image (C)Art Gallery of New South Wales。

アボリジナル・アートの多様性は、オーストラリアの広い国土に由来するという。伝統文化が深く根付くコミュニティ出身の作家から、エミリー・カーマ・イングワリィ、マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ、ノンギルンガ・マラウィリ、そしてコレクティヴとして活動するジャンピ・デザート・ウィーヴァーズが出品。また、都市部出身もしくは都市部を拠点に活動する作家にも注目し、マリィ・クラーク、ジュリー・ゴフ、イワニ・スケース、ジュディ・ワトソンが出品される。

さまざまな素材や趣向で生み出される多様な作品から、その奥深さに触れられる。

ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ《タンギ(ロバ)》2021 年 映像 ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ、NPY ウィメンズ・カウンシル(C) Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council。
ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ《タンギ(ロバ)》2021 年 映像 ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ、NPY ウィメンズ・カウンシル(C) Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council。
イワニ・スケース《えぐられた大地》2017 年、ウランガラス(宙吹き)、『石橋財団アーティゾン美術館』(C) Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY。
イワニ・スケース《えぐられた大地》2017 年、ウランガラス(宙吹き)、『石橋財団アーティゾン美術館』(C) Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY。

アーティストによるギャラリートークなど関連プログラムも

6月27日(金)アーティストによるギャラリートークが開催

6月27日(金)15時30分~16時30分/18時30分~19時30分、出展作家のマリィ・クラーク、ジュリー・ゴフ、イワニ・スケース、ジュディ・ワトソンらを迎え、「アーティストによるギャラリートーク」が『アーティゾン美術館』5階6階展示室にて開催される。各作家の登壇回などはHPにて確認を。申し込み不要。

7月19日、8月23日、土曜講座が開催

7月19日(土)14時~15時30分、講師に芦屋大学学長・窪田幸子氏を迎え、「オーストラリア先住民とアート ―1970年代からの展開―」が『アーティゾン美術館』3階レクチャールームで開催される。

8月23日(土)14時~15時30分、『アーティゾン美術館』学芸員・上田杏菜氏による「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術について」が『アーティゾン美術館』3階レクチャールームで開催。各日事前申し込み制。詳細はHP(https://www.artizon.museum/program)にて。

開催概要

「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」

開催期間:2025年6月24日(火)~9月21日(日)
開催時間:10:00~18:00(金は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:月(7月21日・8月11日・9月15日を除く)・7月22日(火)・8月12日(火)・9月16日(火)
会場:アーティゾン美術館 5・6階展示室(東京都中央区京橋1-7-2)
アクセス:JR東京駅から徒歩5分、地下鉄銀座線京橋駅から徒歩5分、地下鉄日本橋駅から徒歩5分
入場料:WEB予約チケット1800円、窓口販売チケット2000円、学生無料(要WEB予約)
※中学生以下はWEB予約不要。
※日時指定予約制(予約枠に空きがあれば、美術館窓口で購入可)。
※同時開催の展覧会すべて観覧可能。同時開催「石橋財団コレクション選 コレクション・ハイライト」

【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP https://www.artizon.museum/exhibition_sp/echoes_unveiled/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=アーティゾン美術館