ポンティ独自の空間世界を堪能できる
20世紀イタリアのモダニズムを代表する建築家、ジオ・ポンティ(1891-1979)。1960年竣工の「ピレリ高層ビル」や1957年に発表した超軽量の椅子「スーパーレジェーラ」など、薄さ、軽やかさを表現した名作で知られる。さらに近年、知られざる名作家具やプロダクトの数々が復刻。多面的な魅力が浮き彫りになってきた。
彼がミラノ、デッツァ通りの自宅のためにデザインした家具から、モルテーニにより復刻されたアームチェア、コーヒーテーブル、ブックシェルフ、また床に大胆に導入されていたセラミックタイルの再現を通して、ポンティ独自の空間世界がインスタレーションされるのが、本展の最大の見どころだ。
また、およそ60年にわたる巨匠の仕事を振り返る大パネルでは、1920年代のリチャード・ジノリの磁器製品やオリジナルドローイングの展示のほか、フランチェスカ・モルテーニ監督によるドキュメンタリー映像『Amare Gio Ponti』が紹介されている。
展覧を通して、ジオ・ポンティの視線の先にある未来が見えてくるはずだ。
軽やかにジャンルを超える「眼」で生み出した数々のデザイン
87年の生涯で2つの世界大戦を生き抜き、時代のイズムに留まることなく、また建築やプロダクト、グラフィックといった分野の細分化にも与せず、統合的に自身の「眼」を追求したポンティ。彼の眼で世界を視ると、大量生産対アートと工芸、ミニマリズム対装飾といった、世の中に横たわる二元論を軽やかに超え、住まいの風景が未来に向けて開かれてくる。
また2012年に誕生したモルテーニの「ジオ・ポンティ コレクション」にも注目。ジオ・ポンティ・アーカイヴスと共に行った長い調査と研究を経て、ポンティが個人住宅や特別なプロジェクト、小規模なシリーズのためにデザインした歴史的な家具が復刻された。
オリジナルを尊重しつつ、生み出された新しいアイテムは、最新技術を駆使して製造され、モルテーニのトータル・リビング・コンセプトと現代的なライフスタイルにふさわしい形で現代に蘇っている。
約70年を経たデザインが現代にも新鮮な魅力を放つ理由が、見えてきそうだ。
開催概要
「ジオ・ポンティの眼:軽やかに越境せよ」
開催期間:2025年3月19日(水)~31日(月)
開催時間:10:00~19:00(入館は~18:30)
休館日:3月25日(火)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3(東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン)
アクセス: 地下鉄日比谷線・大江戸線六本木駅から徒歩5分、地下鉄千代田線乃木坂駅から徒歩5分
入場料:無料
【問い合わせ先】
MOLTENI&C TOKYO(モルテーニ東京)☏03-3400-3322
公式HP https://www.arflex.co.jp/gioponti_exhibition_japan/
取材・文=前田真紀 画像提供=Gio Ponti Archives, Molteni&C, 愛知県陶磁美術館