10年ぶりに蘇った『田村町 木村屋本店』のレトロで素朴なケーキたち
内幸町A2出口からすぐのところに明治33年(1900)創業の老舗喫茶店『田村町 木村屋本店』がある。2023年4月にリニューアルオープンした店内は、ダークブラウンの木目をベースに置き、喫茶スペースは落ち着きがあって居心地がいい。
ガラスケースには名物のバナナケーキやモンブランなど昔ながらのケーキのほか、色とりどりのフルーツが乗ったオシャレなケーキも健在。昔ながらの製法に倣い有塩バターを使ったバタークリームのケーキは、10年ぶりに復活したもののひとつで、一度製造を辞めていたがよそにはなく、「食べたい」というお客さんのニーズに応えたという。
周辺には官庁やテレビ局・新聞社やプレスセンターが集まっていることから、創業当初からマスコミ人や作家・芸能関係の常連が多いことでも知られ、喫茶スペースには有名人たちの寄せ書きなどが掲げられている。その中には岡本太郎のイラストもあり、オリジナルブレンドのドリップオンコーヒーのパッケージにも採用されている。
『田村町 木村屋本店』店舗詳細
日本茶専門カフェ『チャヤ1899東京』で、急須で飲む煎茶のおいしさを実感
新橋駅から徒歩10分、ブティックホテル『ホテル1899東京』1階に『チャヤ1899東京』がある。「街の茶屋で、ゆるやかな時間を日常に」をコンセプトに、抹茶、ほうじ茶、和紅茶など、日本茶のスイーツやパン、ラテ、ランチメニューが楽しめる。
一煎目の旨味をしっかりと楽しめるようにスタッフが淹れてくれる深蒸し煎茶 六煎茶800円は、掛川、本山、狭山、八女、串間または都城、知覧と産地の違う茶葉6種をブレンドしたオリジナルの煎茶。さし湯が魔法瓶でついてきて、三煎目まで楽しめる。自分のペースで二煎、三煎と飲み進められるので、総合的に見ればコストパフォーマンス抜群、というかリーズナブル過ぎるのではないか。数えてみたところ、湯呑み6杯分いただくことができた。
抹茶パンやほうじ茶パンなど、お茶を使った特製パンは小腹満たすのにぴったり。緑茶のドリンクとペアリングするとおいしさが掛け算で増す。
訪日観光客に限らず、東京観光、デイリーな打ち合わせやブレイクタイムにもオススメだ。
『チャヤ1899東京』店舗詳細
昭和の空間をそのまま残す『フォーク喫茶 香林坊』でいただくご主人の渾身の一杯
虎ノ門駅から徒歩4分、新橋駅からだと徒歩8分ほど。事務所ビルの列の中に忽然と現れる昭和の一軒家が『フォーク喫茶 香林坊』だ。
その昭和のちょっとミステリアスな雰囲気が漂うお店に足を踏み入れると、全体がセピア色に染まった細長い空間が奥に伸びている。入り口のガラス窓や両側の壁には、アルバムジャケットが貼られ、調理場の手前にはDENONのレコードプレーヤー。
ポットの上に置かれたコーヒーフィルター。そこにお湯を注ぐご主人。まるで粉の上に雫をたらしていくように、少しずつ、本当に少しずつ、まるでコーヒー豆を湿らすようにお湯を落としていく。同じ姿勢でほんの少しずつお湯をたらすこと約10分。ポットに溜まったコーヒーを火にかけて温めなおし、ようやくブレンドコーヒー一人前が完成する。
ご主人のペースと店内に流れるフォークソング。この店には独特な時間が流れている。
『フォーク喫茶 香林坊』店舗詳細
レトロな純喫茶『喫茶フジ』。サラリーマンも子供に還る、なつかし系のホットケーキ
JR新橋駅西口を出て目の前にあるニュー新橋ビル。エスカレーターで地下1階に降りると、1971年創業の『喫茶フジ』がある。ガラス張りなので待ち合わせにも便利だ。
昔から人気のサンドイッチやホットドッグ、ブレンドコーヒーやウインナーコーヒー、レモンティーも昔と変わらぬ味だ。
なかでも分厚くいかにもフワフワでおいしそうなのは窯焼きホットケーキ750円。コーヒーまたは紅茶付きだ。ホットケーキの上にはカップとお揃いの焼印が押してある。温かいうちにマーガリンを乗せると、じわっと溶ける。さらにメイプルシロップをたっぷりかけ一口大に切って食べてみると、ふんわりとして弾力があり、卵と牛乳のやさしい味わい。子供の頃、母が焼いてくれたような、なつかしい味がした。
この店はオーナー自ら「サラリーマンのサボり場」と語る通り、テレビ、Wi-Fi、電源コンセントも完備している快適な空間だ。東京都の受動禁煙防止令に則した分煙設備を完備しているから紙巻きタバコ・電子タバコがもちろんOK。愛煙家も嫌煙家もくつろげるスペースだ。
『喫茶フジ』店舗詳細
おいしいコーヒーと煙草が楽しめる小さくて温かい空間『cafe VAN』
『cafe VAN』は新橋駅から徒歩7分、新橋5丁目の雑居ビルが立ち並ぶ一角に忽然と現れる。近づいてくと、お店の外にも小さなカウンターがあり、店先でコーヒーと煙草を楽しむ数人のお客さんの姿が見える。
木目の扉を開け店内に入っていくと、そこに広がるのは意外なほど明るくカラフルな空間。壁はアイボリーに統一されているものの椅子はすべて赤。そこに小さな白いテーブルがいくつか置かれている。10人ほど入ればいっぱいになるような小さくて心地よい空間である。
メニューの中心となっているのは、多くのお客さんが煙草と共に楽しむ一杯のコーヒー。店内でもテイクアウト用のカップで提供される形だが、その手軽さからは想像できないほどの奥深さ。一口飲むと思わず「あー」と息が漏れるようなおいしさだ。これは愛煙家でなくてもたまらない。
元機動隊のマスターのやさしくて気さくな人柄に惹かれてさまざまな人が集まる『cafe VAN』。定期的にミニコンサートも開かれている。
『cafe VAN』店舗詳細
ランチタイムがにぎわう知る人ぞ知る路地裏の名店『珈琲 メルシィー』
地下鉄御成門駅A3a出口から徒歩6分ほどにある『珈琲 メルシィー』。白い壁と緑の椅子が清々しい。店の様子からてっきり新しいお店なのかと思いきや、元々は1931年新橋1丁目に創業した老舗喫茶店『新橋キムラヤ』。創業以来、新橋駅の日比谷口からすぐの場所で営業し地元の人たちから親しまれてきたが、かつて支店として営業していた新橋6丁目にある現在の場所に2008年に移転したそう。店主はちゃきちゃきの新橋っ子だ。
新橋のキムラヤ時代からあるモーニングは8時~10時50分まで実施。トーストに目玉焼き、サラダ、ヨーグルト、コーヒーで700円。
近隣のサラリーマンたちで特ににぎわうのが11時~15時のランチタイムで、メニューはハンバーグ950円、冷静豚しゃぶ950円、ロールキャベツ1000円、唐揚げ950円、メンチ950円の全5品。シンプルながらひとつずつ丁寧に作られていて、ソースやタレで味変できるから、毎日でも飽きない。プラス100円でコーヒーor紅茶が付く。
『珈琲 メルシィー』店舗詳細
手芸を楽しみながらドリンクやスイーツも楽しめるニットカフェ『森のこぶた』
虎ノ門駅から徒歩5分、虎ノ門ヒルズビジネスタワーのすぐ近くにあるニットカフェ『森のこぶた』。全面ガラス張りの明るい店内には、手芸作品やこぶたグッズが数多く展示されていて癒やしの空間となっている。
「カフェとして一番大切にしていることは、安心安全なものをお出しすること」とオーナーは語る。トマトやブロッコリー、きゅうりなど、サラダで使っている野菜の一部は、お店の入っているビルの屋上でオーナー自ら栽培しているそう。
ランチタイムの人気メニューはキーマカレーランチ980円。深みのある辛さで、さらに温泉たまごをまぜると、辛さが穏やかになり、より濃厚なカレーの味を楽しめる。
ランチタイムが終わった午後は、ニットカフェとして、テーブルでドリンクやスイーツを楽しみながら編み物などの手芸をしたり、手芸仲間と情報交換や雑談を楽しむことができる。スペースを用意しているだけではなく、初心者向けにニット塾を開催するなど、手芸を楽しむ人たちを応援して趣味の世界を広げる手伝いもしている。
『森のこぶた』店舗詳細
令和にオープンしたとは思えない純昭和スタイルの喫茶店『喫茶 気まぐれ』
新橋駅の目の前のニュー新橋ビルの3Fにある『喫茶 気まぐれ』。昭和スタイルど真ん中の雰囲気の喫茶店なのに令和になってからの開店と聞いてびっくり! 山口県出身のママさんが周南市にある喫茶店『赤鬼』で食べた焼きめんのおいしさが忘れられず、お店を出したそう。
看板メニューの焼きめん1200円は、山口県でご当地グルメとして有名な瓦そばをヒントにして考案された超レアメニュー。細打ちうどんを焼いて、あつあつのジンギスカン鍋にのせ、その上に焼いた牛肉と大量の錦糸たまごと刻みのりをトッピングし、かつお出汁のつゆにつけていただく。
昔ながらの喫茶メニューも充実していて、定番のナポリタン900円やオムライス950円も大人気だそう。ボリューム満点のモーニングは和風830円と洋風780円の2種類。ランチではカレーやオムライスなどがお得なセット1100円でいただける。
『喫茶 気まぐれ』店舗詳細
取材・文・撮影=丸山美紀(アート・サプライ)、パンチ広沢、羽牟克郎、夏井誠