ルーツは創業者の祖父が作った味。『中国ラーメン揚州商人目黒本店』
『中国ラーメン揚州商人』は、現在1都3県に37店舗を展開しているチェーン店だ。その1号店である目黒本店が権之助坂の途中にオープンしたのは1990年のこと。
創業者である現会長の祖父は上海や南京に近い中国・揚州の出身。大正9年(1920)に日本に来た祖父は、北千住で中華そば店を開き、父が店を継いだ。創業者は幼い頃から祖父や父が作る中華料理を食べて育ったのだ。その味が『揚州商人』の原点でもある。
常時30種類以上もあるというラーメンの中でも、いちばん人気があるのがスーラータンメン。『揚州商人』のスーラータンメンは創業からしばらく後に、賄いから生まれたメニューだ。
酸っぱくて辛いのが癖になる。とろみのあるスープに、玉子、豚肉、椎茸、竹の子、白髪ネギが入っていて香りもいい。
『中国ラーメン揚州商人目黒本店』店舗詳細
豚骨から一転、中華そばに。『中華そば むら田』
山手通りの目黒警察署そばにある『中華そば むら田』。店主の村田拓宣さんは以前豚骨ラーメンを作っていたが中華そばに転向。「おいしさに終わりがないんですよ」と魅せられた中華そばについて話す。
温度計を確認しながら作る澄んだスープは、その日によって火を入れる時間が変わる。ほんの5分で仕上がりに大きく差が出るからだ。もちろん化学調味料は不使用。醤油ダレは4つのメーカーから取り寄せた醤油、みりんと酒だけを混ぜたストレートな味わいだ。
福島県『羽田製麺』に特注した北海道のゆめちからを使った細いストレート麺は、口当たりはソフトだが芯が強く食べ応えも抜群。
特製そば1080円には分厚い豚バラのチャーシューが2枚、そして鶏チャーシューが1枚。豚バラチャーシューは硬くなるのを避けるため、片側の脂部分だけを炙って、香ばしさを出している。
『中華そば むら田』店舗詳細
トロント帰りのシェフが作る洗練された一杯『Ramen Break Beats』
店主の柳瀬拓郎さんは、イタリアンやフレンチ、和食の修業をしたのち、カナダへ移住。コロナ禍をきっかけに自作ラーメンに没頭するようになり、帰国してラーメン店『Ramen Break Beats』を目黒に開いた。
店では自身の出身地である福岡や九州の食材を多用している。醤油ラーメンのスープに使っているのは、熊本のブランド地鶏、天草大王。天草大王は水炊きによく使われるが、実は昭和の初期に一度絶滅。その後、熊本県農業研究センターによって復元された幻の鶏なのだ。
特上醤油らぁ麺には群馬のブランド豚であるせせらぎポークのロースを使った低温スモークチャーシュー、フライドえのきに、プルプルしたワンタンなどがトッピング。厳選した素材に調理人として培ってきた技術と知識を駆使した具がたっぷり楽しめる。
『Ramen Break Beats』店舗詳細
昔懐かしさと現代的なギミックが同居『中華そば 竹むら』
『中華そば 竹むら』がイメージしているのは、昔ながらの中華そば。ナルトが中央にトッピングされているあたり、直球で中華そば好きのノスタルジーをくすぐってくる。
スープは大山鶏の丸鶏とガラ、親鳥を寸胴鍋に入れ、真昆布と干し椎茸をプラスして10時間煮込んだもの。濁らないように注意してとった鶏清湯スープと全粒粉入りの細いストレート麺の組み合わせも特徴だ。ストレートな醤油味のスープは、鶏油と合わさって、ほんのり甘みを感じる。みりんなどの甘い調味料は使っておらず、昆布と大山鶏が甘みの元とのこと。
いちばん人気の特製中華そば980円は、チャーシューが4枚、メンマが4つ、味玉にネギ。ナルト以外の具材も中華そばらしいラインナップがうれしい。
『中華そば 竹むら』店舗詳細
宮崎ご当地麺の辛麺を目黒で。『辛麺屋 一輪 目黒店』
辛麺とは九州、宮崎のご当地麺だ。発祥は1980年台後半。宮崎県の中でも延岡市で生まれたといわれている。辛麺を東京で広めたいと2017年にオープンしたのが『辛麺屋 一輪 目黒店(からめんや いちりん めぐろてん)』だ。
『辛麺屋 一輪』は麺がこんにゃく麺、中華麺、うどんの3種類から選べる。こんにゃく麺の原料はこんにゃく芋ではなく、そば粉と小麦。実は盛岡冷麺と同じ麺で、盛岡から仕入れられたものが使われている。
そもそも辛麺が誕生したとき、盛岡冷麺をあたたかく食べようという発想から生まれたという説もある。東北のご当地麺が宮崎で予想外の変化を遂げ、新たなご当地麺として発展したようだ。もちろん辛さがポイント。辛さのレベルは唐辛子なしの0から25、そしてマグマという最高レベルまで用意されている。
『辛麺屋 一輪 目黒店』店舗詳細
有名店の懐かしい醤油ラーメンは健在。『支那そば 勝丸』
かつてテレビ番組でも何度も取り上げられ、『新横浜ラーメン博物館』にも出店し大行列。人気を博した『支那そば 勝丸(しなそばかつまる)』は1972年に屋台から始まったラーメン店だ。
現在は目黒の店だけとなったが、店主後藤勝彦さんのラーメンへの情熱とこだわりは変わらない。
「今は豚骨ラーメンが人気みたいだけど、私は醤油ラーメンへのポリシーと使命感があるんですよ」と力強い。
スープは豚の骨を2種類、そして鶏ガラをたっぷり使っている。昆布や煮干しも加えて、9時間ほどかけてとっている。香り高くスッキリした醤油味のスープは、煮干し由来の微かなえぐみが加わっている。濃度のほとんどないスープにぎゅっと噛みごたえのある太めの縮れ麺がよく絡む。シンプルなのに、複雑さのある味わいにほっとする。確かに子供のころ食べたような懐かしさが感じられる。
『支那そば 勝丸』店舗詳細
駅徒歩1分もうれしい芳醇系鶏白湯『麺屋 藤しろ 目黒店』
『麺屋 藤しろ 目黒店』は大山地鶏の丸どりと鶏ガラを白濁するように潰しながら8時間かけて炊いた、味の濃い白湯スープが特徴だ。
ラーメンとつけ麺は麺が随分違って、ラーメンの麺は細くて低加水のいわばパツパツ系。つけ麺は中太で艶がある。製麺所まで違う。「つけ麺の麺は味が強いやつを使っています。そのままで食べてもおいしいんですよ」と店主の工藤泰昭さん。艶のあるつけ麺の太麺はコシが強く小麦の味を楽しめる。
スープは、洋食出身の店主のアイデアで焦がした牛スジを加えている。お酢も加えているので、複雑な味わいに仕上がっている。
つけ麺のスープは、冷めたら焼き石を加えられる。最後まで温かく、しかも香ばしさが増すのでぜひ試して欲しい。
『麺屋 藤しろ 目黒店』店舗詳細
もちもちした自家製麺を使ったワンタンめんが人気。『支那ソバ かづ屋』
『支那ソバ かづ屋』は、大きなワンタンが6つ入ったワンタンメンがおいしいお店として知られている。ワンタンにはよく練られた豚ひき肉がたっぷり詰まっていて、つるっとした皮も特徴。『かづ屋』は麺も、ワンタンの皮も、サイドメニューとして人気の餃子の皮も自家製だ。
様々な素材が使われているスープは、複雑さがあるがスッキリした味わいに仕上がっている。麺のもちもちとした歯応えとツルっとした喉越し。店主が自家製麺で目指すのは「弾力のあるコシ」とのこと。
近年『かづ屋』には小さい子どもを連れた家族が来店することが多くなったという。都内のラーメン店としては店が広い。通路に余裕があるので、ベビーカーでも入れると口コミが広がったようだ。家族連れが多くなったため、子供用の椅子も準備している。
『支那ソバ かづ屋』店舗詳細
東急目黒線不動前駅から徒歩8分
ブランド地鶏メインのスープに滑らかな麺のコンビネーション『麺や維新』
『麺や維新』のスープは、比内地鶏、名古屋コーチンの鶏ガラをベースに、豚のゲンコツで厚みを出し、最後の仕上げに羅臼昆布や秋刀魚節などの乾物類をブレンドしたもの。秋田のブランド鶏、比内地鶏は簡単には手に入らない。オーナーが何度か産地・秋田の工場に交渉して仕入れられるようになった貴重なものだ。
丁寧にとったスープに加えるかえしは2種類の火入れしていない生の醤油と、さらに別の醤油で全部で3種類。3年熟成みりんも加えている。油は比内地鶏の鶏油。上品でまろやかな口あたりで、ラーメン全体のおいしさを引き上げている。麺は三河屋製麺製。細めの平麺で舌触りも喉越しもいい。人気があるというワンタンも、薄めの皮に鶏むねのひき肉がたっぷり。食べ応えがあるのに、中の肉汁とともにつるっと吸い込めるように滑らかなのがたまらない。
『麺や維新』店舗詳細
取材・文・撮影=野崎さおり