【ミュージアム】市谷の杜 本と活字館

まさに本と活字のテーマパーク!

外壁の色も時計の文字盤もわずかな手がかりから復元した建物。

大日本印刷市谷工場の旧営業所棟を活用した文化施設が2021年2月に開館。大正15年(1926)に建てられ“時計台”と親しまれた建物を復元し、レトロモダンな雰囲気と細部までこだわった装飾が魅力だ。印刷所が併設されているのも特徴で、リアルな仕事風景や貴重な資料、ハイテクを駆使した展示物を通して活版印刷と本づくりの工程を学べる。企画展やワークショップ、カフェとさまざまな楽しみあり。

透明のタッチパネルを操作して文選に挑戦できる展示も。活字を拾うプロの速度を体感。
期間限定の秀英初号明朝(抹茶ラテ)、秀英明朝L(カプチーノ)200円、黒蜜きなこラテ250円。
ジャンボ活字のベンチ。
印刷所エリアに鎮座するのは、復元された戦前の平台印刷機。

こんな体験できます

2階の制作室にて卓上活版印刷機でのしおり印刷体験、リソグラフ印刷機とオリジナルスタンプを使ったポストカード制作のワークショップあり。開催は1日各2~3回で、来店当日申し込み(1人1日1回まで)、無料。

スタッフお手製のポストカードももらえる!

『市谷の杜 本と活字館』詳細

住所:東京都新宿区市谷加賀町1-1-1大日本印刷内 /営業時間:11:30~20:00(土・日・祝は10:00~18:00)/定休日:月・火/アクセス:JR・地下鉄市ケ谷駅から徒歩15分

【ミュージアム】印刷博物館

ドラマチックな印刷史は見ごたえあり

印刷を中心とした人類の視覚伝達の歩みをたどるプロローグ(導入路)。

国内外の印刷物や活字、道具や機械など、約7万点もの資料を収蔵する専門ミュージアム。2020年開館20周年を機に展示内容の多くを「印刷の日本史」にフォーカスした。仏教の中で印刷の多様性が育まれた古代・中世から現代の印刷までじっくり見せる展示はドラマチックで奥が深く、実に見ごたえがある。印刷工房では活版印刷に使われた歴史的名機を間近に見学でき、活字に直接触れて活版印刷体験も!

約400年前に制作された嵯峨本『徒然草』。手書きのような滑らかな漢字とひらがなだが、木活字による印刷だ。
奈良時代から始まる日本の印刷史。展示は4つの大きな時代区分を設けて展開する。
広々とした展示室。弧を描いたガラス面の奥は印刷工房だ。
徳川家康が慶長年間に作らせた駿河版活字。日本初の銅活字で国の重要文化財だ。
戦前、日本に4台しかなかったというアメリカ製のベントン父型・母型彫刻機。活字を鋳造するために必要な母型を製作する。

こんな体験できます

印刷工房の活版印刷体験は、活字を選んで(文選)、並べて版を組み(植字)、イギリス製のアダナ印刷機を使って印刷する。空白を作るにも部材が必要でバランスの調整が難しいが達成感あり。季節により体験内容は異なる。要予約。

売店には駿河版活字を模した砂糖もあります!(学芸員 宇田川さん)
この日体験できたのはコースターの印刷。

『印刷博物館』詳細

住所:東京都文京区水道1-3-3 トッパン小石川本社ビル/営業時間:10:00~18:00(入館は~17:30)/定休日:月(祝の場合は翌)/アクセス:地下鉄有楽町線江戸川橋駅から徒歩8分

【活字鋳造】佐々木活字店

活字づくりの都内最後の砦!

馬棚(うまだな)から活字を拾う佐々木さん。「活字製造はバリをしっかり取ってきっちり刷れることが一番大事」。

大正6年(1917)、活字鋳造職人の初代が始めた活字製造販売店。活字は鉛、アンチモン、錫の合金を350℃の火で溶かし鋳造されるものだが、作り手は減り、今では都内でほぼ唯一の貴重な存在で新宿区地域文化財に登録される。活字の所有数は700万本以上とも! 現在は製造のみならず印刷まで行う。「活字を大量に使って印刷ができるのが、活字を作れるうちの強み」と4代目の佐々木勝之さん。

店正面。店名の書体は強いて言うなら店で使用する丸呉竹体か? 活字は5本から購入でき、明朝体で1本45円~。
自動で活字ができる鋳造機。7台が現役だ。
植字台で活字を版にする会長(佐々木さんの父)。
活字製造に欠かせない母型がぎっしりの引き出し。

こんな商品あります

活字組版のブックカバー(文庫サイズ・2色入り)550円は、宮沢賢治『春と修羅』の文を8つのサイズの明朝体活字を使って印刷した。

『佐々木活字店』詳細

住所:東京都新宿区榎町75/営業時間:9:00~18:00/定休日:土・日・祝/アクセス:地下鉄東西線神楽坂駅から徒歩10分

【活版印刷】嘉瑞工房

300書体の欧文活字を巧みに操る

半世紀以上現役というドイツ製のハイデルベルク印刷機と髙岡さん。

1956年創業。特化しているのは、日本では珍しい欧文活版印刷。世界各地から集めた膨大な欧文活字を使い、名刺から封筒、格式ある招待状や賞状類まで、海外でも通用する本格的な端物印刷物を主に制作する。活字は書体だけで約300種類もあるとか。「国柄や用途、贈り相手などにより適した書体は違うので種類が豊富にあるんです」と2代目代表・髙岡昌生さん。国際化の今だからこそ頼りたい知識と技術だ。

「R」の周りに装飾があしらわれたデコレーションタイプの活字。
ニュージーランドの骨董的な木活字。
ステッキという金属のケースに組まれるのは、“散歩の達人”の日本語とローマ字。
髙岡さんの著作、欧文組版の基礎とマナーの手引書。中国語版もある。

こんな活動あります

『本づくりハウス』は、髙岡さんが理事を務める本づくり協会の拠点。製本教室や会員向け図書室も準備中。併設する『美篶堂』ショップにてオリジナルグッズも販売。要予約。☎03-5946-8819

『嘉瑞工房』詳細

住所:東京都新宿区西五軒町11-1/営業時間:9:00~18:00/定休日:土・日・祝/アクセス:地下鉄有楽町線江戸川橋駅から徒歩6分

【特殊加工】真美堂 手塚箔押所

付加価値を生む光沢と立体感

手塚さん(中央)と弟・喜雄さん、息子・隆継さんによる家族経営だ。

1957年の創業から特殊印刷加工の箔押ひとすじ。創業時はカメラ用革製品を取り扱ったが、現在は主に書籍のカバー。「細かい文字、箔が乗りづらい紙に泣かされることもある。でも付加価値をつける大事な役目。丁寧に取り組むまでです」と3代目の手塚博雄さん。1999年からは機械と技術を生かし、点字印刷にも着手。オリジナルカレンダーは日本文具大賞のデザイン部門・優秀賞受賞作だ。

点字印刷に使うのは、亜鉛素材でできた凸と凹の版。「ありがとう」と書かれている。
平圧機という機械にロール状の箔と銅製の凸版、用紙をセットしてプレスすれば、熱と圧力で箔を接着できる。

こんな商品あります

2015年版から製作するバリアフリーカレンダー。浮き出し加工された立体的な文字と点字が並ぶ。3520円。

『手塚箔押所』詳細

住所:東京都新宿区天神町66/営業時間:9:00~18:00(土は~13:00)/定休日:日・祝/アクセス:地下鉄東西線神楽坂駅から徒歩7分

【製本】博勝堂

新旧技術の両輪で製本は無限大!

ページ順にそろえる最新式の丁合マシンをバックに、渡邊さんと父で相談役の博之さん。
黒色のシックなオリジナルユニフォームの襟元には、特殊製本に欠かせない刷毛のワンポイントが。
風通しのいい窓辺に下げられるさまざまな大きさの刷毛。馬毛が多い。

こんな製品作ってます

製品の柱の1つ、和本。蛇腹折りの朱印帳は有名寺のものも多く手がける。布の表紙の折り込みも美しい仕上がり。

『博勝堂』詳細

住所:東京都新宿区西五軒町9-1/営業時間:8:00~17:00/定休日:日・祝(土不定)/アクセス:地下鉄有楽町線江戸川橋駅から徒歩6分

取材・文=下里康子 撮影=原 幹和
『散歩の達人』2021年12月号より