中野ラーメンの玄関口『上海麺館』

迫力の専用中太麺がもっちり、特製鶏つけそば。

中野駅の北口から徒歩1分。サンロードのすぐ脇に朝の七時から湯気が立ち、のれんがかかる。木札に書かれた製麺技能士・鳥居憲夫の名前が輝くこちらは、中野に看板を出して約100年になる製麺所・大成食品直営のラーメン店。2014年に開業した『上海麺館』だ。

スープに合わせて作られる麺のこだわりを、ぜひ楽しみたい。細麺から極太麺、パツっと歯切れの良いストレートに、もっちりとした縮れ麺。取材時だけでも限定を含めて五種類の麺を使い分けていた。夜明けどきから仕込む鶏白湯のスープも人気だ。住人にも勤め人にも「いらっしゃいませ」の声をかけ、「ごちそうさま」の満たされた挨拶を受け取る職人たちの店は、中野のラーメン文化の玄関口だ。

木枠にすりガラスの仕切り板も、風情すら感じる雰囲気の良さ。

『豚そば鶏つけそば専門店 上海麺館』店舗詳細

住所:東京都中野区中野5-63-4/営業時間:7:00〜10:00・11:00〜20:00(日は11:00〜20:00)/定休日:無/アクセス:JR・地下鉄中野駅から徒歩1分

明るい旨さの魚介とんこつ『麺屋 はし本』

人懐こい笑顔の橋本健太朗さんは大勝軒シンガポール店の立ち上げも。その際のスパイスが辛ラーメンに生きている。

駅から徒歩で7分、真っ白いのれんに客足の絶えない人気店『麺屋はし本』。マスクの下からでも笑顔のわかる店主の橋本健太朗さんが、大勝軒での修行時代や、シンガポール店の立ち上げなど、すべての経験を取り入れ表現する。

魚介とんこつWスープと分類されるスープは三河屋製麺の中太の麺によく絡み、橋本さんの気さくな気持ち良い接客のように、コクがあるのに重くなくグイグイと食べ進めてしまう。分厚いチャーシューはしっとりと柔らかく、食べ応えも抜群。「おいしいと感じたものを最大限おいしく作り込むこと」が橋本さんのモットー。スタンダードな素材で丁寧に構成されている『はし本』のラーメンが食べたいと、遠くから足を運ぶお客さんたちがその旨さを証明している。

しっとりと食べ応えのあるチャーシュー。カナダ産七色豚というナチュラルポークだ。

『麺屋 はし本』店舗詳細

住所:東京都中野区新井1-25-4/営業時間:11:30〜16:00(2021年6月より)/定休日:日/アクセス:JR中野駅より徒歩9分、西武新宿線新井薬師前駅より徒歩10分

ラーメンはフレンチ!『ただいま、変身中』が変身し続けるワケ

タイ一匹にカキ五粒入りのスープは、濃厚だが脂っこさのないヘルシーな後味。

ラーメン店というよりバーのようなカウンターに、照明、ブレンダーで泡だてたムース状のスープにそそり立つ薄切りのバゲット。少しの小麦感と、密度ある表面にスープがよく絡む麺は老舗の『大橋製麺』と作り上げたオリジナルの麺だという。低温で仕上げた鮮やかなピンクのしっとりとしたチャーシュー、炙って濃密な味わいとなった牡蠣、やわらかく薄く立ち上がるバゲット。麺の合間にバゲットをスープに浸していただくとトッピングの工夫が、この一杯をまるで軽いコース料理のように表情豊かにしていると気がつく。

フレンチの技術とルックスだが、ラーメンとしか表現できない一品をつくりあげている。「ラーメンもフレンチでしょう」と、ちょっとだけニヤッとしながら答える元・星付きフレンチのシェフの、本気のエスプリをみた。

ラーメンの気持ちのようなセリフが気になる「ラーメンだって変身したい」という券売機のひとこと。

『ただいま、変身中』店舗詳細

住所:東京都中野区中野5-53-3/営業時間:11:00〜15:00・17:30〜20:00 /定休日:無/アクセス:JR・地下鉄中野駅より徒歩5分

甘味処でいただく乙なラーメン『富士見野』

滑らかに延びる、ちゃんと杵つきのお餅だなとしみじみ味わう。そう「ちゃんと作っている」昔ながらのうれしい懐かしさなのだ。

「縁日の日には開けているからね」と言われてそうか新井薬師の門前町かとハッとする、昔ながらの商店街。ここに3代目の石山さんご夫婦が営む甘味処『富士見野』はある。初代が1934年(昭和9)に甘味処『富士見野』を開店してから約90年、この場所には親が連れてきた赤ん坊が、いつの間にか連れ合いと、そのまた子どもを連れて食べに来る。そんな気心の知れた、安心感がある店だ。

おすすめは、当代の石山繁さんがリニューアルした鶏出汁醤油の透明なスープと、甘味処ならではの餅を使った餅入りラーメン。杵つきの滑らかな焼き餅にスープが染み入り絶品。お腹に余裕のある向きは、ぜひご一緒に本職の甘味をどうぞ。大福からあんみつまで、毎日仕込んだあんこにお餅、頂かぬ手はないでしょう。

本業の一番人気、クリームあんみつができました。自家製のあんこが上品においしい。

『富士見野』店舗詳細

住所:東京都中野区新井1-31-5/営業時間:10:00〜20:00(売り切れ次第で早めの閉店あり)/定休日:月(祝の場合または8のつく縁日の場合は営業、翌火休)/アクセス:JR・地下鉄中野駅から徒歩10分、西武鉄道新宿線新井薬師前駅から徒歩7分

ビストロシェフが作る清湯豚骨白醤油拉麺『LABO麺』

フレンチのコンソメと同じ技法を使うスープ。ともかくおいしい粗切り焼売添え。

中野駅の南口、ちょっと意外なほどに小じゃれたレンガ道の商店街に、実際しゃれたカフェのような店舗がある。ここで清湯豚骨白醤油拉麺というラーメンが食べられるのは、実は一種の奇跡的なタイミングでもあるのだ。2020年4月、オープンから6年を迎えようとしていたビストロ『root』は緊急事態宣言の時短要請を受けて休業を余儀なくされた。そんな混乱の中、ひとりのフレンチシェフが、かつてこだわりすぎて実現できなかったラーメンを完成させる。豚骨をコンソメスープを作る技法「クラリフェ」で透明に濾(こ)し、昆布と豚骨のスープを合わせ、鶏の粗挽きで凝固させた透明な清湯豚骨に旨味の露のような白醤油で仕上げた。澄んだスープの上で鮮やかにその味を発揮するのは、低温仕上げのチャーシュー、ポルチーニのペーストだ。

2021年9月現在、昼は『LABO麺』、夜は『root』として営業。夜はコース料理のシメでラーメンをいただける。

レンガの通りに映える明るい木造店舗。夜は『root』の看板が輝く。

『清湯豚骨白醤油拉麺 LABO麺』店舗詳細

住所:東京都中野区中野3-36-5/営業時間:11:00~15:00・17:00~20:00/定休日:火/アクセス:JR・地下鉄中野駅より徒歩2分

玉を中心に綿密に計算された調和『玉 バラそば屋 中野店』

味噌バラそばはもともと冬だけの限定メニューだったが、力を増してイチオシメニューに昇格。(写真=店舗提供)

どんぶりいっぱいに広がるバラ肉の柔らかさと甘み、ヒタヒタと迫る塩とんこつスープの塩っけ、それらを統べる玉(卵黄)の輝きを溶き放つと、渾然一体となった調和が訪れる……。見た目の肉々しさやあっさりとしているが塩が立ったとんこつスープが、実は綿密な計算の中でぶつかり合わずに小宇宙(コスモ)を生み出すのだと気づいた瞬間の喜びである。

また、そのバラ肉の柔らかさと甘みをコアにした、味噌バラそばにそそりたつ香味野菜の山も愛おしい。シンプルにして大胆な力強さを味わってほしい。

店長の小松さん、胸に刻まれた「GYOKU」の社名が誇らしい輝きだ。

『玉 バラそば屋 中野店』店舗詳細

住所:東京都中野区中野5-59-14/営業時間:11:00〜20:00/定休日:無/アクセス:JR中央線・地下鉄丸ノ内線中野駅より徒歩4分

上品な旨味が広がる優しい鶏スープ『鵺 NUE NOODLE DINING』

炙りの厚手チャーシューの、ほろりとスープに馴染んでいく様までが美しい。(写真=畠山美咲)

真っ黒なファサードをまとった『鵺 NUE NOODLE DINING』では端正で優しい、手間を惜しまぬ美しささえ感じる鶏白湯そばを味わえる。スープはベタつきもなく鶏の臭みもない、上品な旨味が広がる優しい鶏スープ。次に炙りが香ばしいチャーシューをかじると、厚手の肉がホロっと崩れる。そこにスープがしっとりと染み込み格別の味わいとなるのだ。

一方で気になるのはマスターの背後にある、この明らかに「好きなヒトが選んだ」希少揃いのモルト。「バーで飲んだお客さんが、ラーメンと一緒に頼む酒がビール一択なのもどうなんだろうか」と思いつくあたり、マスター喜田さんの気遣いと、ウイスキー愛が垣間見える。緊急事態宣言の前は明るい飲み屋街からシメの一杯を求めてやってくる酔客も多かったが、現在はその落ち着いた雰囲気に惹かれ、女性客も多く訪れる。

パッと見ただけでイチローズモルトに厚岸がそれぞれ数種。好きじゃないとおすすめや説明ができないからと喜田さん。

『鵺 NUE NOODLE DINING』店舗詳細

住所:〒164-0001 東京都中野区中野5丁目36−14/営業時間:11:30~14:30 ※変更の場合あり/定休日:月・火/アクセス:JR中央線・地下鉄東西線中野駅から徒歩5分

旨味特濃&ヘルシー鶏白湯『麺匠 ようすけ』

あっさり鶏チャーシュー、ポタージュのようなスープ。添えられたレモンは味の風景をパッと変える。

濃い味で「旨い」と言われてもどこか罪悪感を感じることがある。しかし、ここ『麺匠ようすけ』の鶏そばは、口の周りがパリパリになる程に濃厚なポタージュ的鶏白湯スープを纏いながらも、ヘルシーさへの信頼がある。低温調理の真っ白な胸肉と、コクのあるモモ肉の二種類の鶏チャーシューに、刻んだ玉ねぎが甘さと爽やかさを出している。レンゲを差し込むと濃厚なスープが、少しちぢれた麺をコーティングするように絡んでくる。テーブルに貼ってあるのは、この鶏白湯スープの開発者でオーナーのようすけ氏による熱いメッセージ。そこから垣間見えるのは素材と健康へのこだわりだ。“ヘルシーさ”に厳しい女性客も多く来店していることからも、病みつきになる濃厚な味とコントラストをなすヘルシーさを目指す姿勢が両立しているのが良くわかる。

罪悪感を感じずに濃い味を楽しみたいよくばりさんは、是非一度試してみるべきだ。

 

鶏白湯のスープをベースに七変化する、バリエーションあるメニューも魅力だ。

『麺匠ようすけ』店舗詳細

住所:東京都中野区中野5-57-2/営業時間:11:30〜20:00/定休日:なし/アクセス:JR中央線中野駅より徒歩4分

煮干しと鳥の二枚看板+α『鶏そば 煮干しそば花山』

半熟の味玉は「マキシマムコイタマゴ」の濃厚オレンジ色。全粒粉の香ばしい萱野製麺の細麺のこだわり。

「コクとキレがしっかりしているでしょう。薩摩シャモの筋肉質な出汁なんです」と満面の笑顔で語るラーメン事業部長の塚本一宏さん。声高に謳うことはしないが、高級素材や健康志向な調理法を当然のように取り入れている。「透明な鶏清湯スープ、脂は少なくシャープなさつまシャモの出汁を無添加で出す」という細やかなこだわり。

高齢の方にも優しい鶏そば、腕白なお子さんのお腹を満たすつけそばなど、ファミリーで来てもそれぞれの好みにあわせられるのがまたうれしい。
まずは大看板、しかし他も負けていない全て直球勝負。

『鶏そば 煮干しそば花山』店舗詳細

住所:東京都中野区中野3丁目33−15/営業時間:11:00-20:00(緊急事態発令期間)/定休日:無/アクセス:JR・地下鉄中野駅より徒歩3分

普通のラーメンのレベルが普通じゃない『五丁目ハウス』

海苔は多めにトッピングしましたが、黒々と立派な家系の華。

『五丁目ハウス』は、濃厚とんこつ醤油ラーメンの系統ではあるけれど、白米無料、海苔、ほうれん草、テーブルには高菜と生姜とお酢に擂り胡麻、唐辛子のセットと、ものすごくオーソドックスに家系の構造といえるのだ。しかしスープもチャーシューもそのバランスが“絶妙”なのである。

こだわってる、ってとこはなくて「この街にこんなお店があったらイイな」を作っているという菅野さん。並盛り680円の破格の価格もそのひとつ。「唯一こだわってるって言えるのは、海苔かな、季節ごとに種類を取り寄せて調整してる。家系は海苔でしょう(笑)」と、余裕ある笑顔を見せる。

「家系以外も色々作っていいとこ取りして食べたい味をつくっただけ。普通ですよ」。その“だけ”を完成させるのは見えない努力かセンスなのか。ちなみに、テーブルでのお冷やは水ではなく口をさっぱりとさせるルイボスティをブレンドしてるとのこと。そういうとこだぞ、この店の普通は。

さらっと、カウンターから出すお冷は口をさっぱりさせるルイボスティだったりするのがニクい。

『横浜家系らーめん 五丁目ハウス』店舗詳細

住所:東京都中野区中野5-56-15 三京ビル103/営業時間:11:30〜15:00(2021年9月現在は昼のみ)/定休日:不定休(Twitterで最新の営業日は告知)/アクセス:JR・地下鉄中野駅より徒歩5分

文=畠山美咲 写真=荒川千波