『大相撲と鉄道 きっぷも座席も行司が仕切る!?』

東京駅のイメージは横綱の土俵入り!?

木村銀治郎 著 能町みね子 イラスト/ 交通新聞社/ 990円+税

「相撲 鉄道」でネット検索したって大した情報は見つからないし、もしやこれは! とクリックにクリックを重ねても最終的には「相模鉄道」情報でしかなかった、というのはすでに過去の話だ。今ならば、角界&鉄道界に新風を吹き込んだ名著『大相撲と鉄道』をネタモトとした、力士たちを運ぶ相撲列車(改めて、字面が相模鉄道とほぼ一緒)のあれこれ、例えば「地方場所や巡業での移動のためのきっぷは行司が手配」「グリーン車に乗れるのは十両以上の関取衆」「とはいえ、お尻が大きいとグリーン車に座れない」といった興味深いネタにぶつかる。
大相撲と鉄道の関係性を新たに掘り起こしていることも、この本の特徴だ。『散歩の達人』2021年5月号の大特集「東京駅・日本橋」にまつわる話でいうと、東京駅を設計した辰野金吾は大の相撲好きであり、東京駅は横綱の土俵入りをイメージした設計とも言われているそうだ。実際に丸の内側に降り立ち駅前から振り返ると、腰を割って両手を広げてせり上がる豪快な不知火(しらぬい)型の横綱土俵入りのような駅舎が見られるし、さらに、東京駅中央ヴォールト頂部(正面頂部に取り付けられたオブジェ)には、関取のシンボルである大銀杏(おおいちょう)を結い上げた頭部と、両手を大きく広げた不知火型土俵入りをモチーフにしたものが飾られているので、散歩のついでにぜひ実物をチェックいただきたい。
著者は現役幕内格行司にして鉄道ファンである木村銀治郎氏。挿絵は、『散歩の達人』本誌連載「ほじくりストリートビュー」でもおなじみ、相撲愛好家としても知られる能町みね子氏による。加えて、能町氏が書いた峰崎親方(元幕内三杉磯。銀治郎氏の師匠で、今年5月定年)へのインタビューコラムで明かされる、大らかであった当時の相撲列車にまつわる爆笑エピソードもお見逃しなく。(平岩)

『東京レコード散歩 昭和歌謡の風景をたずねて 追歩版』

鈴木啓之 著/ 東京ニュース通信社/ 2200円+税

街と音楽、このふたつは“掘る”楽しさがよく似ている……そう気づかせてくれるのが本書だ。2016年に発売した昭和歌謡の舞台を歩くコラムの増補版。東京の街にゆかりのある楽曲の紹介・解説のほか、著者の思い出や散歩ルポもふんだんに盛り込まれ、街歩きガイドとしても必携。いつもの散歩に新たな旋律が加わるはず。(中村)

『土地の記憶から読み解く早稲田 江戸・東京のなかの小宇宙(ミクロコスモ)』

ローザ・カーロリ 著 大内 紀彦、フィリッポ・ドルネッティ 訳/ 勉誠出版/ 2970円+税

♪都の西北 早稲田の――江戸時代から現在に至る歴史や文化的基層を、地図や図版とともにまとめた一冊。かつて“郊外”であった集落から展開される江戸・東京の分析は実にユニークで、イタリアの大学で教鞭をとる著者ならではの視点が光る。建築物ではなく土地にこそ宿る、空間と時間を紐解く面白さが詰まっている。(町田)

『蔵を継ぐ 日本酒業界を牽引する5人の若き造り手たち』

山内聖子 著/ 双葉文庫/ 682円+税

酒蔵の跡取りと聞くと、順風満帆なイメージをもってしまうけれど、ここで登場する若き蔵元たちはむしろその逆。この本は、先代との不和や経営難を乗り越えて家業を守り、さらには日本酒界をリードするまで至った5人の熱きドキュメントだ。赤裸々な話も次々に飛び出す所に、著者との信頼関係もうかがえる。(高橋)

『散歩の達人』2021年5月号より

『散歩の達人』本誌では毎月、「今月のサンポマスター本」と称して編集部おすすめの本を紹介している。2020年も年の瀬にさしかかり、いよいよそれを一斉公開する時が来たと言えよう。ひと月1冊、選りすぐりの12冊を年末年始のお供に加えていただければ幸いである。