【コースガイド】

駅前の観光案内所に寄って行くと便利。コース上に危険な箇所はないが、いちおう山道なので、登り下りは慎重に。尾根道には岩場もあるので、足元はトレッキングシューズ必携。『めしや大磯港』は昼夜とも開店前から待つので、早めの到着を(予約不可)。

アクセス

JR・私鉄品川駅からJR東海道線で約1時間の大磯駅下車。
※大磯城山公園に行く場合、帰りはバス利用が便利。公園から東に徒歩3分の「城山公園前」から神奈中バス「平塚駅北口」行きなどで約5分の「大磯駅」下車。

湘南平の展望台から相模湾を望む。中央に見える川は花水川、左手に江の島、三浦半島の奥には房総半島が見える。
湘南平の展望台から相模湾を望む。中央に見える川は花水川、左手に江の島、三浦半島の奥には房総半島が見える。

大正時代後期に建てられたちょっとレトロな大磯駅に降り立つと、右手の道、真ん中のほぼまっすぐな道、そして左へ行く道の3つがある。道はすべて湘南平に通じているが、今回は真ん中の道を歩いて東海道から旧東海道に入り、まず高来神社(たかくじんじゃ)へと向かう。

高来神社の裏手の高麗山周辺は「高麗山県民の森」と呼ばれ、常緑広葉樹の自然林が広がっている。高麗山の森は幕末までは高麗寺の所有。明治維新により御料林となったので伐採されなかったのだろう。
高来神社の裏手の高麗山周辺は「高麗山県民の森」と呼ばれ、常緑広葉樹の自然林が広がっている。高麗山の森は幕末までは高麗寺の所有。明治維新により御料林となったので伐採されなかったのだろう。

旧東海道は車がほとんど通らないことと、道幅も広いので、散歩には最適な道。さすが江戸時代の幹線道路だ。斜めになって立っている江戸時代の松並木の下を歩いて高来神社へ。神社の真裏の山が高麗山(こまやま)になる。

高麗山へは神社の裏手から登るが、男坂と女坂の二通りの道がある。まだ歩き始めたばかりなので、体の動きがいまひとつ、ということで楽な、いや安全な女坂を上がることにする。

周りに目を向けると深い森。常緑広葉樹の自然林で、天然記念物になっている。30分もしないうちに山頂へ到着。山頂には江戸時代まで高麗寺があったところで、寺の礎石などが今も残っている。

展望台からは海、山、街並みの絶景が広がる

湘南平の展望台から富士山方面の眺め。左手のぽっこりした山は金時山、その左側が明神ヶ岳になる。
湘南平の展望台から富士山方面の眺め。左手のぽっこりした山は金時山、その左側が明神ヶ岳になる。

高麗山からはほぼ平坦な尾根歩きになる。展望はないが、豊かな森が周囲を覆っていて、歩いていて気持ちがいい。

1時間ほどの尾根歩きを終えると浅間山(せんげんやま)へ。ここから富士山を遥拝したという浅間神社の祠が立つ。前方に巨大アンテナが見えてきた。湘南平に着いたようだ。
広場へ出ると視界が一気に広がった。最初に目に飛び込んできたのは、左手の相模湾に浮かぶ伊豆大島の島影。思ったより近い。次に江の島。三浦半島、その奥に房総半島が見える。双耳峰の富山(とみさん)も判別できる。

浅間山の手前の尾根道に広がる場所。取材時はスイセンが咲いていた。エノキの巨木がある。
浅間山の手前の尾根道に広がる場所。取材時はスイセンが咲いていた。エノキの巨木がある。

広場には不思議な形をした建物。それは展望台で、ネットで誰かが、「サザエのつぼ焼きのような形」 と言っていたが、まさにその通り。サザエの階段を上がって展望台へ。

見晴らすと富士山、表丹沢の山並みや秦野の街並み、箱根の山や伊豆半島などなど、海と山と街並みの競演が始まっていた。

1 旧東海道松並木

江戸時代に植栽された松並木が残る

東海道五十三次の8番目の宿場があったところが大磯で、いくつかその面影が残っている。写真の松並木は山王町のもので、大磯中学校付近には200mほどの松並木が残る。

2 高来(たかく)神社

参勤交代の折に諸大名も参詣

元は高来寺といい、明治時代に入り高麗神社と改称し、その後に現在の高来神社となる。歴史は古く、養老元年(717)に行基が創建したとも伝わる。鎌倉時代には幕府の保護を受け、高麗山の山中には多くの寺院が建てられ、江戸時代には東照大権現が合祀された。

3 高麗山

奈良時代に渡来人が住んでいた地

高来神社の裏手にある標高168mの高麗山山頂には、江戸時代まで高麗寺があった。奈良時代に高句麗から逃れてきた王族が周辺に住んだことからこの名がついたようだ。

4 湘南平展望レストラン Flat(ふらっと)

味よし、展望もよしの絶景店

三浦市の三崎のマグロを使った、まぐろカツカレー 1250円。地アジのフライバーガー 1150円などもグッド。
三浦市の三崎のマグロを使った、まぐろカツカレー 1250円。地アジのフライバーガー 1150円などもグッド。

2015年にオープンした、展望台の中にあるお店。相模湾と富士山が両方望める、展望のいいレストランだ。地産地消型のメニューが魅力で、テイクアウトのカレーパンも人気。

●11:00~16:30LO(11:00~14:30はランチタイム、14:30~カフェタイム)、水・第3火休。☎0463-67-9887

展望のいい店内。
展望のいい店内。

5  旧島崎藤村邸

最晩年の2年を過ごした質素な家

引き戸には、今や貴重な大正ガラスが使われている。
引き戸には、今や貴重な大正ガラスが使われている。

藤村が昭和16年(1941)に移り住んだ居宅。71歳で亡くなるまでの2年間をここで過ごした。ここを藤村は「静の草家」と呼んで、絶筆となった『東方の門』を書き続けた。近くに政財界の大別荘がある中、藤村の家は小さな平屋でつつましいものだった。

●9:00~16:00、月休。入館無料。☎0463-61-4100(大磯町産業観光課)

冠木門に割竹垣で囲まれた風情ある玄関。
冠木門に割竹垣で囲まれた風情ある玄関。

6  めしや大磯港

大磯港の隣に構える、漁協直営の人気店

取材日(平日)のメニューは、金目鯛の塩焼きのランチ2200円。寒ブリの刺し身とイワシの唐揚げがつく。
取材日(平日)のメニューは、金目鯛の塩焼きのランチ2200円。寒ブリの刺し身とイワシの唐揚げがつく。

大磯港のすぐそばにある、いわば魚専門食堂。創業した2009年当時から人気の店で、開店前に並ぶことも多い。昼と夜のメニューはちょっと違うが、旨さは同じだ。

●11:00~14:00・17:00~20:30LO、水休。☎0463-62-1755

漁師小屋のような渋い外観。
漁師小屋のような渋い外観。

【歩き足りない人へ】大磯城山公園と旧吉田茂邸

富士山の展望台もあるかつての2大邸宅跡

吉田茂が昭和19年(1944)ごろから亡くなる1967年までの晩年を過ごした旧邸。2009年の火事で焼失したため復元した建物もあるが、写真左のサンルームは当時のまま。
吉田茂が昭和19年(1944)ごろから亡くなる1967年までの晩年を過ごした旧邸。2009年の火事で焼失したため復元した建物もあるが、写真左のサンルームは当時のまま。

大磯駅から3㎞西にある公園。東海道を挟んで北が旧三井別邸地区で、南が旧吉田茂邸地区。旧三井別邸地区はシイやカシなどの豊かな森の中に茶室や大磯町郷土資料館などが点在する。湘南平から下山するなら、そのまま約2㎞歩けば到着。

取材・文・撮影=清野明
『散歩の達人』2021年4月号より