Looking like the color of the sky《空の色に似ている》

線路沿いの路地の脇にあったベニヤ板の〈空色看板〉です。

ペンキの剥離したところから下地の白色が露出し始めている感じが、背景の空を流れる雲と見事に呼応しています。

カメラのファインダーを覗きながら、ふと『空の色ににている』という少女マンガのタイトルが頭に浮かびました。50代以上の熱心なマンガ愛読者ならきっとご存知でしょう。1980年代の日本の少女マンガなのに英国19世紀のラファエロ前派を思わせる耽美な作風と緻密な描画で人気を博しながらもわずか12年間で執筆をやめてしまった伝説のマンガ家・内田善美の代表作のひとつです。

マンガの内容とは関係ないのですが、以来この手の看板を目にするたびにこの詩的なフレーズが思い起こされるようになりました。これは水色というよりやはり空色といったほうがしっくりくると思うのです。

Looking like the color of the sky No. 2《空の色に似ている2》

町内会の看板です。地域のイベントや防災のポスターなどを掲示するものなので催事が少ない時期だと余白が生まれてしまいます。

白だと汚れが目立つから何か色を塗ろうと思ったときに選ばれる塗料の人気カラーのベスト2は目に優しいグリーンと、心も爽やかなスカイブルー……なのかどうかは知りませんが、実際に緑色や空色の掲示板は町内会の自作看板に多い気がします。

この掲示板は催事の閑散期なのか張り替えの途中なのか全面に空色が露出していました。けっこう年季が入っているのでそのうち立て替えられそうな予感がしますが、次もやっぱり空色のような気がします。

Looking like the color of the sky No. 3《空の色に似ている3》

大学の構内で開催される行事のポスターを掲示するためにこの日だけ出されたスタンドです。

じつは本来の掲示物は向こう側に貼られていて、この写真は裏側なのですが、みごとに空の色に似ていたのでカメラを向けました。写真に収めてみると雲ひとつない青空が実際以上に色鮮やかに映り込んでしまいました。

お手製のものだけでなく工業的なプロダクトとしても空色が好まれるのはもしかしたら防水用のブルーシートなどにも共通した理由がありそうです。

Take after the color of the sky《空の色に似ていく》

看板のブルーが褪色して微妙に薄くなっている様子がちょうど空の色とかぶりました。褪色は現在進行形なのでこれは《空の色に似ていく》と名付けましょう。色褪せて薄汚れた看板のはずなのに、流れる絵の具のように風景に溶け込んだ姿が見事です。

Captive sky《囚われた青空》

住宅地の駐車場にあった看板ですが、何かの理由で掲示内容が古くなったのでしょう。取り外さずに上から塗りつぶしてしまえという乱暴な処置のわりに、その色は優しいライトブルーを選んでしまうあたりのギャップが萌えポイントです。

曇り空の下でもこの四角い部分にだけ青空がキャプチャーされているかのような光景は、マグリットの絵画のようにシュールでした。

Sky painting on the duct cover《ダクトカバーに青空》

《囚われた青空》を屋内でも見つけました。

駅の通路の壁面に仕組まれたエアコンのカバーの上に小ぶりの掲示板が取り付けられています。掲示物がなくなったまま空色のボードとして残存しているのですが、ちょうど目の高さにあるのでまるで空の絵が掛けられているようです。

空は「そら」と同時に「くう」とも読めるので、これは空虚を描いた無の絵画ともいえるでしょう。

Sky camouflage house《空の色に似せた家》

こちらはブルーに塗られた壁に残された白のガチ無言板。あまりにガチな出来栄えも絶品ですが、やはり気になるのはブルーの壁のほうではないでしょうか。

この個人住宅は外壁ばかりでなく鉄筋コンクリート造の家屋も色鮮やかなスカイブルーで全面塗装されていました。ずいぶんと思い切ったことをしたものですが、それでもこの無言板だけは白く残したことに拍手を送りましょう。

Just like the color of the sky《空の色に激似ている》

最後は番外です。この看板、どんなふうに見えますか?

肉眼でも一瞬文字の部分に穴が開いているのかと空目してしまいましたが、実際は文字の青い塗料がかすれてランダムに白地が露出した状態が、偶然にもこの日の空と雲の様子と被っているのです。

文字は普通に読めるので無言板ではありませんが、あまりにも空の色と似ているので、もはや何が書かれているかは目に入らなくなってしまうあたり「限りなく無言板に近いブルーの文字看板」に認定したいと思います。

 

文・写真=楠見清