節約と旅

我が家の電子レンジが壊れた。
上京して10年あまり使っていたのだから、しょうがない。長年の相棒を失った寂しさと新しい家電が買える嬉しさを、2:8の比率で抱え、ウキウキで家電量販店へ向かった。こちらにあるのは石窯で焼いたみたいにピザが作れるオーブン付き、こちらは高性能センサー付きのハイテクレンジ。家電の進化は凄まじい。私の使っていたのは化石だったのか?あっけにとられながらセールスマンの話を聞いていたら、まんまと予算オーバーの高性能オーブンレンジを購入していた。

旅行に行ける日が来たときのために、残しておいたお金はどこへ行ったのだろうか。そう考えていると、出かけられないストレスが沼の化身になって現れて、私を飲み込む。あぁ、旅に出たい。今すぐ。

節約と旅を両立できる場所を求めて、向かう先はただひとつ。

アンテナショップだ。

予算1000円!旅のルール

ここでアンテナショップを巡る1000円旅、略して「せんたび」のルールを説明したい。

・予算1000円
・予算内ならなにを買ってもOK
・オーバーしたら、自腹

1000円ポッキリでご当地を堪能する品を買う。これだけだ。

島根県ってどんなところ?

日比谷駅から徒歩2分ほど。『しまね館』は日比谷シャンテの地下一階にある。島根県はまだ行ったことがないので、広報担当の錦織さんにお話を聞いてみる。

錦織さん:「島根県は中国地方の北部に位置し、日本海に面しています。有名なのは出雲大社と世界遺産に登録された石見銀山。名物は出雲そばと豊富な海産物です。

しまね館の物販スペース“ご縁市場”では、日本酒やビール、食品、伝統工芸品など、1000点以上の特産品が揃っています」

お酒も海産物も揃っているとは、嬉しいではないか。錦織さんに案内され、ぐるりと見て回る。

海産物豊富=酒のつまみだらけの店内

さっそく、未知の食べものに遭遇。練りものっぽいが。

錦織:「赤天といって、県民は朝食のおかずにも、晩酌のおつまみにも食べる練りものです。魚のすり身に唐辛子を練り込んでフライにしています」

続いて、焙りわかめ。海苔か昆布かと思いきや、わかめとは意表をつかれた。

錦織:「くしゃっと崩してご飯にかけても、そのまま炙って食べても美味しいです」

海産物が豊富だからか、酒のつまみになる食べものが多い気がする。今のところ、嬉しさしかない。

錦織:「海産物でいうと、のどぐろが人気です。特にのどぐろ丼のネタ12枚入りは毎回売り上げランキングのトップ5に入るくらい売れています」

これもほぼ酒のつまみじゃないか、と心の中でツッコミを入れながら、錦織さんの案内はまだまだ続く。

錦織:「しまね館は、移住の相談ができる窓口や、ランチやスイーツが食べられて日本酒も試飲できる“ご縁カフェ”があります」

最終的に飲める店だった。ありがたすぎる。旅行へ行くときは、酒蔵見学と地元スーパー巡りが必須な私にとって、夢のような場所である。

錦織:「飲み比べセットがあり、物販スペースでご購入いただいたお酒をお持ち込みいただけます。島根県は日本酒の発祥の地ともいわれていて、酒蔵がたくさんあります」

錦織:「お店では県内で30蔵あるうちの29蔵を扱い、約90種類の日本酒を揃えていますよ」

島根県が大好きになってきたぞ!!

呑み&味比べセット(赤) 1500円。
呑み&味比べセット(赤) 1500円。

有無を言わさず、呑み&味比べセットを注文。日本酒とおつまみが3種類ずつ食べられ、日本酒は4種類の中から選べる。そのときの旬のものや限定酒が入ることもあり、今回はしぼりたての生原酒をいただくことができた。乾きもののおつまみも豪華で酒が進む。1000円の予算オーバーなのだが、店内での飲食は見逃してほしい。

飲み終わったら、ほろ酔いで「1000円、1000円〜!」とウンウン唸りながら、品物を選んだ。

1000円で購入したのは以下の通り。

・チーズ入り赤天 324円
・あご野焼き 194円
・天穏 カップ酒 305円
・???の味噌汁 214円

計4点でしめて1037円!

「???の味噌汁」は最後に紹介するので、お楽しみに。

自宅にあった島根県のイメージキャラクターしまねっこちゃんと。どうだ、可愛かろう。
自宅にあった島根県のイメージキャラクターしまねっこちゃんと。どうだ、可愛かろう。

天穏は明治4年(1872)創業の酒蔵、板倉酒造の銘柄で、飲む人の心を穏やかにする味わいを目指している。清らかな酒質を生み出す出雲杜氏の技法、山陰吟醸造りを用いており、清らかで口当たりのやわらか。するりと入って、後口にやさしい甘味が広がる。

赤天はフライパンなどで焼いてから食べるのが良いと聞き、網で焼いてみる。香ばしい匂いが漂い、チリチリと衣の油が音をたてる。

購入した分を半量ずつ盛りつけてみた。
購入した分を半量ずつ盛りつけてみた。

チーズインの赤天はとろ〜りチーズがとろけて、いい感じ。唐辛子とカレー粉が少量入っているため、ピリ辛でいい酒のつまみだ。あご野焼きも県民のソウルフードともいえるカマボコで、アゴが落ちるほど美味しいことから“あご”と呼ばれるトビウオ入りなのだそう。

1000円でこんなに豪華な晩酌と、味噌汁がゲットできるなんて合格点ではなかろうか。

最後の〆は、しじみの味噌汁! 島根県にある宍道湖ではしじみ漁が盛んに行われており、漁獲量は日本一なのだそう。貝の旨味たっぷりの赤だしをすすり、胃をじんわりと温める。これで明日も元気に酒が飲めそうだ。

と、ここで終わるのがベストとわかっていても止まらないのが酒飲みの悲しい性。以下は1000円の予算をオーバーしても買いたかった、はみ出し購入品を紹介する。

1000円オーバー!はみ出し購入品

のどぐろ丼のネタ12枚入り(1296円)。ほかほかご飯に海苔をちぎり入れて、盛り付けた。
のどぐろ丼のネタ12枚入り(1296円)。ほかほかご飯に海苔をちぎり入れて、盛り付けた。

広報担当の錦織さんが売れている!と推してくれ、何が何でも買いたくて、つい。塩で少ししめてあり、旨味が凝縮している。驚いたのは、これと一緒に食べたご飯と日本酒まで極上の味わいに感じたことだ。いつもの酒、いつもの米が数倍美味しく感じる、本物は主役でありながら脇役のレベルもグンと引き上げてくれるのだ。刺身が12枚も入っているお得感もあり、これは買って得したといえよう。

あゆ うるか(1404円)。
あゆ うるか(1404円)。

うるかは鮎の内臓の塩辛。特有の香りと苦味がある、ちびちび舐めたい珍味だ。里芋の煮物の味付けに使うと一気に深みがでる。

今回のアンテナショップ巡りは、酒にどっぷりの旅であった。都合上、紹介できなかった品もまだまだたくさんある。ぜひお店を訪ねて、みなさんも旅に出てほしい。

『日比谷しまね館』店舗詳細

日比谷しまね館
住所:東京都千代田区有楽町1-2-2 日比谷シャンテ地下1階/営業時間:11:00~20:00/定休日:日比谷シャンテの休業日に準ずる/アクセス:地下鉄日比谷駅から徒歩2分、JR・地下鉄有楽町駅から徒歩6分

取材・文・撮影=福井 晶