『現代山岳信仰曼荼羅』

現代に受け継がれる修験道のリアル

藤田庄市 著/ 山と溪谷社/ 1800円+税

私は今回、取材で久しぶりに高尾山に登った。そして、恥ずかしながら関東でも随一の修験の山だった事をはじめて知った。実際に、薬王院の境内でお経を上げる山伏の姿を見たとき、彼らの存在に驚きこそなかったが、その内実については何も知っていない事 に気づかされた。
本著は、そんな現代にも息づく修験道のリアルに迫った一冊。修行を実体験したからこそ書くことができる生々しいルポルタージュが紡がれ、髄所に著者の鋭い考察が光る。私にとって未知の領域、というより触れるのも畏れ多いと感じていた世界を、鮮やかな写真と共にまざまざと見せてくれる。
ちょうど高尾山の「富士登山連行」の話があった。薬王院から5泊6日をかけて、様々な修行を経て富士山頂を目指すというものだ。例えば、どう考えても動くはずがない大きさの岩を持ち上げよといわれ、「石の重さは罪の重さ」と教えられる修行。著者は「山伏がやることは傍(はた)から見ればユーモラス」と冷静に語る。しかし、その修行の真意を知れば、行為に基づくがゆえ「理屈を飛ばして教えが肉体化される」ように感じたという。なんとも印象的な記述だ。
この本は、何も山岳信仰や修行を薦めているわけではない。一方で、山に対して畏敬の念のようなものを、漠然とでも抱いている人が多いのも事実ではないだろうか。本著を読んだだけでこう言うのは厚かましいとは思うが、修験道によってその曖昧(あいまい)な感覚が、より確固たる自然崇拝へと昇華していくことがわかるような気がした。(高橋)

『徒然絵つづり百人一首』

大田垣晴子 著/ 京都芸術大学東北芸術工科大学出版局藝術学舎/ 1300円+税

誰もが学校でふれたであろう百人一首。本書はその百首を、手書きの歌本と著者による現代語訳、込められた情景をイラストで解説した一冊。大人になり改めて歌を読むと、意外に共感できたり、言葉遣いの巧みさに気付かされたりと、多くの発見があり楽しい。「百人一首 奈良の旅」などコラム付き。学び直しにぜひ。(町田)

『4コマで日本史 日本をみなおす50の視点』

小越建典 著 中里裕司 監修/ 山川出版社/ 1600円+税

50のテーマで日本の歴史と文化をわかりやすく紹介。「4コマ」とはいえ漫画ではなく、一つのテーマが見開きで4つのビジュアル図版で構成されているのだが、各テーマを端的に説明していて読みやすい。テーマも〇〇時代ではなく、「神道」「侘び」「粋」など説明しにくいものも結構あり、感心すること多し。(土屋)

『江戸東京に遺る勝海舟の足跡 史跡から見えた知られざる勝海舟』

三澤敏博 著/ 日本橋出版/ 1800円+税

勝海舟の、注目されることの少なかった維新後の足跡を辿った史跡辞典。港区、千代田区を中心に、海舟にまつわる史跡は実はたくさん。現在は違う建物になってしまった場所も、所在地とともに写真や資料付きでガイド本としても楽しめる。見慣れた景色の中にも、激動の時代があったことを教えてくれる一冊だ。(吉岡)

『散歩の達人』2021年3月号より

『散歩の達人』本誌では毎月、「今月のサンポマスター本」と称して編集部おすすめの本を紹介している。2020年も年の瀬にさしかかり、いよいよそれを一斉公開する時が来たと言えよう。ひと月1冊、選りすぐりの12冊を年末年始のお供に加えていただければ幸いである。