クルマもなか、バイクもなか、電車もなか
まず自動車型のもなかについて見てみたい。トヨタ自動車のおひざ元である愛知県豊田市では、市内の多くの和菓子店で自動車もなかを販売している。その中でも『つたや製菓舗』の「幸せのくらうん最中」は、その名の通りトヨタの代表的な車種「クラウン」をかたどったもなかで、高級感漂うデザインとなっている。
SUBARUの企業城下町として知られる群馬県太田市の『伊勢屋』でも、「スバル最中」が販売されている。1961年の発売以降、時代とともにかたどられる車種が変わっており、現在の「スバル最中」はレガシィB4がモデルとなっているとのことだ。
乗り物もなかは、単に生産地にちなんだものとは限らない。鈴鹿8耐など主要なオートバイレースが行われる鈴鹿サーキット近くの『とらや勝月』では、疾走するライダーをかたどった「ライダーもなか」が販売されている。
電車もなかは、路面電車やモノレールなど小型車両をかたどったものが多い。「都電もなか」(菓匠明美)、「江ノ電もなか」(扇屋)、「多摩モノレール最中」(高幡まんじゅう松盛堂)などの電車もなかは、車両のイラストが描かれた小箱に入れられており、もなかを食べ終わった後も電車遊びが楽しめるようになっている。
バルブもなか、けん玉もなか……
これら乗り物を「工業製品」という観点で見ていくと、工業製品をかたどったもなかも数多くある。滋賀県彦根市は地場産業としてバルブ生産が盛んであり、このバルブをかたどった「バルブもなか」(風月堂)が販売されている。また、現在のようなけん玉の形が生み出されたのが広島県廿日市市であることから、市内では「けん玉もなか」(和洋菓子ながお)が販売されている。こうしたもなかによって「へぇ、彦根ってバルブ生産が盛んなんだ」「廿日市ってけん玉発祥の地なんだ」と知る人も多く(私もそのうちの一人である)、もなかが地域産業に貢献している良い例であると言えよう。
しかし、もなかは日持ちがしない
このような変わった形のもなかを探し求めることは、私にとってはもはや旅の目的の一つとなった。これを私は「もな活」(もなか活動の略)と呼ぶ。とは言え、何も遠くに行く必要はない。地元の和菓子店にこそ、普段は気づかない「形の変わったもなか」が潜んでいるかも知れないのだ。近場を巡って素敵なもなかを発見する「もなか散歩」を多くの人に勧めたいところなのだが、それにあたっては何点か注意しておかなければならないことがある。
まず、もなかは余り日持ちがしない菓子であるということだ。土産用に真空パック詰めされているもなかもあるが、餡が詰められた瞬間からもなかの皮は湿気を吸っていく。たとえば私は以前、関西旅行に行った際に尼崎で「ホームラン最中」(尼銘)を購入した。野球ボール型のもなかに魅力を感じたからである。店員さんには「すぐに食べてくださいね」と言われたのだが、旅の途中ということもあり、翌日帰宅するまで持ち歩いてしまった。その結果、もなかはすっかりシナシナになり、こちらの気持ちもすっかりシオシオのパーになってしまった。「もなかを入手したらすぐに家に帰る」ことを心掛けたい。
もなかを崩さずに運搬する画期的手段
また、もなかの皮は大変崩れやすい。贈答用の箱詰めになっているもなかはともかく、自らのお土産用に1個2個購入するといった場合には持ち運びに大変気を使う。
そこで提案したいのが「もなか用箱」を持ち歩くことである。日の出町の『幸神堂』で「山荘最中」を購入する際、恐る恐る持参した紙箱(たぬきもなかが入っていた箱である)を差し出すと、店員さんが快く応じてくれた上、包装紙まで掛けてくれた。大変ありがたいことである。
問題があるとするならば、箱を持ち歩くとカバンの中でかさばることだろうか。しかし私は最近、その解決策を見出した。それはサンドイッチケースなどの「折り畳める箱」である。これならばカバンにも忍ばせやすく、いつ素敵なもなかに出会っても崩さずに持ち帰ることができる。
ぜひ皆さんもカバンにサンドイッチケースを忍ばせて、「もな活」に参加してみませんか。
絵・取材・文=オギリマサホ