『戦国、まずい飯!』

食を通して知る、戦国の世の暮らしぶり

黒澤はゆま 著/集英社インターナショナル/840円+税

炊いた米を乾燥させ、石うすでひいた「干し飯」。干した里芋の茎を味噌で煮込んだ「芋がら縄」。そして雑草「スギナ」。戦国の飯とは、どうにも食欲のそそられないものばかりだ。
そんな戦国時代の食事に注目したのは、歴史小説家でもある著者・黒澤はゆま。なんでも1987年の大河ドラマ『独眼竜 政宗』を観て、「同じものを食べてみたい!」と思ったのがきっかけだとか。本書はそんな曲者である著者がさまざまな文献を渉猟し、戦国の食にまつわるエピソードを9つの食材ごとに紹介。赤米に糠(ぬか)味噌、はたまた牛肉と、そのテーマは多彩だ。
ところで読者の皆さん、こんな経験ありますか。久しぶりの実家で、母手製の料理。食べ始めたはいいけど、なんだか物足りないような。やむなく母の目を盗んで醤油を一垂らし。これでちょうどいいやとしてニンマリしていると、背後には、我が子の無礼なふるまいに怒り心頭の母が……というのは私の体験談ですが(お母さま、この場を借りて謝ります)。
似たようなエピソードは、なんと徳川四天王のひとり、井伊直政にもあるという。天正10年(1582)、当時21歳だった直政は、宴で出された料理に「薄味だ」と不満を垂れる。すると徳川家の重臣、大久保忠世(ただよ) にこう諭された。「お前がいずれ従える士卒・農民の食事とは、こういうものだ」。貧しく飢えに苦しむ者たちの心に寄り添えという教訓。今も昔も、食事には感謝の心を忘れてはいけないなあ。
というわけで、やってみました。戦の際、家康が家臣に勧めた生米の水浸し。う~ん、素材の味が、生きている……。(田代)

『にっぽん建築散歩』

小林泰彦 著/山と溪谷社/1400 円+税

著者の小林泰彦さんは、私が愛読していた山と溪谷社「skier」の表紙のイラストを長年飾っていた方で表紙の隅に「ヤスヒコ」と書かれたサインでおなじみ。本書はそれとは異なる繊細なタッチで描かれた全国30エリアの名建築をめぐる散策と街のイラストルポ。歩行距離3~10kmで半日散策にぴったりの一冊だ。(佐藤)

『東京の美しい本屋さん』

田村美葉 著/エクスナレッジ/1600円+税

33の新刊書店や古書店の、こだわりや思いが詰まった素敵な空間を紹介する。本屋さんの棚を眺めていると、思いがけない本に目がとまり、頭の中を見透かされたような気がしたり、不意に知らない世界に連れていかれるような時もある。ビジュアルがきっかけでも、そんな出合いのある“美しさ”を楽しむ人が増えたら。(渡邉)

『わたしの好きな街 独断と偏愛の東京』

SUUMOタウン編集部 監修/ポプラ社/1400円+税

不動産情報サイト「SUUMO」の「SUUMOタウン」に掲載された著名人と街にまつわるエッセイとインタビューを厳選し、まとめた一冊。エリアは東京にしぼり、ルイ53世、みうらじゅん、東村アキコら総勢20名が語る。心を打たれたのはライター・雨宮まみさんの西新宿。亡くなる3カ月前にしたためた街への思い。一読を。(町田)

『散歩の達人』本誌では毎月、「今月のサンポマスター本」と称して編集部おすすめの本を紹介している。2020年も年の瀬にさしかかり、いよいよそれを一斉公開する時が来たと言えよう。ひと月1冊、選りすぐりの12冊を年末年始のお供に加えていただければ幸いである。