ホテルシェフ仕込みのハンバーグ定食を食べに

扉の前に立った瞬間に「いい!」と思える店構え。
扉の前に立った瞬間に「いい!」と思える店構え。

吉祥寺駅から歩いて5分ほど。ビルの細い階段を上がった2階に『喫茶 ロゼ』はある。深緑の扉にウサギがお辞儀した営業中の札。なにより、店の看板が味があって可愛らしい。

店内に入ると店主の深山隆与さんと妻の佳代子さんが迎えてくれた。取材した2020年現在76歳の深山さんが店をオープンしたのは38歳のとき。その前は、デパートの食堂で料理人として働いていて、名物のハンバーグもそのときに覚えたものだという。「先輩にホテル出身のシェフがいて、作り方を教えてもらったんです。それを自分流にアレンジして看板メニューにしました。味付けは少しずつ変化させているけど、創業から作り方はずっと変わらないよ」と深山さん。

店内は純喫茶らしいゆったりとした空気が流れていて、重厚なイスの背もたれに寄りかかかって一息つく。現在は15席ほどの広さだが、10年前までは吉祥寺の別の場所で40席以上入る広さで店を営んでいたのだそう。「移転しても、そのままの雰囲気を残したくて、店の装飾やテーブル、椅子など、なるべく前の店のものを使っています」(深山さん)。

お客さんは周辺で働く人が多く、遅い時間でもランチが食べられるよう時間に関係なく同じメニューを提供。21時まで営業しているので、夜もわんぱくな定食が存分に堪能できる。定食目当てに通う昔なじみの常連もおり、「高校生のときから通っていたお客さんが、もう50歳のおじさんになっているんですよ」とうれしそうに話してくれた。

妻がつけた店名「ロゼ」

冷蔵庫の上にあった色気のある看板。
冷蔵庫の上にあった色気のある看板。

店名は妻の佳代子さんがつけたもの。「前の店は外観がレンガ造りになっていて、椅子やテーブルも深い赤のような、ピンクのような色でした。それを見て、ロゼワインみたいだと思って」と佳代子さん。「『喫茶 ロゼ』!なんて素敵な名前なんだ」と思っていたら、その由来まできっちりオシャレではないか。ますます好きになってしまう。

デミグラスソースがかかったハンバーグで、ご飯をかき込む

自家製ハンバーグ1000円。自家製ハンバーグには、味噌汁、ご飯、香の物がついていて、プラス200円でコーヒーか紅茶が飲める。
自家製ハンバーグ1000円。自家製ハンバーグには、味噌汁、ご飯、香の物がついていて、プラス200円でコーヒーか紅茶が飲める。

ご飯に味噌汁にハンバーグ。コンソメスープや平らに盛られたライスもいいけれど、“THE定食”の堂々たる佇まいに拍手を送りたい。

ハンバーグとデミグラスソースの最強タッグに野菜炒めが加勢してくる。
ハンバーグとデミグラスソースの最強タッグに野菜炒めが加勢してくる。

たっぷりの野菜炒めの上に、ジャンボサイズのハンバーグが横たわっている。肉々しくジューシーで、胡椒やナツメグがしっかり効いている。最近は、世の中にスパイスカレーや、味の濃い食事が増えたので、少し味を濃くスパイシーに仕上げているのだそう。

オリジナルのデミグラスソースはハンバーグにたっぷりからめて、ご飯と一緒に口の中へ。わしわし食べるのが加速していく。ソースは野菜炒めまで侵食していて、ハンバーグの肉汁も混ぜ込んで、最後まで幸せを噛み締めて食べ終える。

200円で味わえるコーヒータイム

定食を食べ終わったら、定食に200円プラスで飲めるコーヒーも味わってほしい。少しスパイシーなハンバーグと甘いデミグラスの余韻を、心地よく包んでくれる。鼻にコーヒーの香りがぬけて、心の中で“大満足”の文字が踊る。

今度訪ねるときは、もうひとつの名物クリームソーダも頼んでみよう。「グラスに入ったグリーンのオーソドックスなクリームソーダですよ」と聞いたら、ほっとけないもんね。

『喫茶 ロゼ』店舗詳細

住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-14-1 2F/営業時間:11:00~20:00/アクセス:京王井の頭線・JR中央線吉祥寺駅から徒歩4分

取材・撮影・文=福井 晶