鍵は「ポータブルデスク」にあり
突然ですが、これがなんだかわかりますか?
残念ながらちょっと違う。こちら、「机上台/ポータブルデスク」という商品。
本来の使用目的は、まさに机上台。デスクの上に置き、その上で作業をすることで、背筋が伸びて姿勢が良くなり、集中力がアップするというもの。もともとは子供用に開発されたものらしいが、大人たちからも続出した「欲しい」という声にこたえ、このようにシックなデザインのものが発売されたのだそう。
大手通販サイトで偶然見つけ、これだ! と思った。というのも、チェアワーク最大のネックは、デスク。もちろんPCを膝の上に置いてだって作業ができないことはないが、より安定した作業台があれば効率が上がることは間違いないだろう。そこでこのポータブルデスクだ。つまり、これを膝の上に置き、デスクとして使ってやろうというわけ。はたしてこれが大正解で、何のストレスもなく仕事が可能なことが判明した。ちなみに価格は、僕が購入した時で3000円程度。
そして、このポータブルデスクがすごいのはそれだけじゃない。
これを外すと、なかのボックスをスッと引き出すことができる。
つまり、普通にカバン代わりに使えてしまうというわけだ。
中身は、ノートPC、マウス、モバイルバッテリーとケーブル、財布、交通系ICカード&キーケース。まったくもって美しく、過不足のないラインナップ。
HOW TO チェアワーク
チェアワーカーの1日は、働く場所を探すところから始まる。仕事はもとより、その日働く場所すらも自分で選ぶ。チェアワーカーとはそんなわがままな人種でもあるのだ。
朝の日差しを浴びながら広い公園を歩く。コロナの影響で家にこもる時間が長くなり、運動不足気味の体に良いことは間違いない。しかもふと、今日の仕事に関するまったく新しいアイデアが思い浮かんだりする。日々目に映る景色、周囲の環境を変えることは、仕事の面でもプラス効果が大きい。
シェアオフィスならぬ「チェアオフィス」と呼んでみてもいいかもしれない。
先述したように僕はフリーライターなので、必ずしも常にWi-Fi環境は必要ではない。例えば今書いているようなオーソドックスなWEB記事の場合、テキストエディタによる執筆作業。それから、自分の撮った写真をPhotoshopというソフトを使い、加工やトリミングする作業。そのふたつができれば問題なし。むしろ常時ネットが繋がっていると、無駄にSNSなどを覗いて時間を浪費してしまいがちで、チェアワークのほうが集中できるくらいだ。原稿が完成したらスマホのテザリング機能を使い、一式を納品すれば完了。
もしも頻繁なWEB会議があったり、常時ネット接続されていることが必須であるワーカーの場合は、ポケットWi-Fiを利用するというのも手かもしれない。
あるチェアワーカーの1日
最後に、僕のある日のチェアワークの様子をドキュメントでお伝えしよう。この日は、そんなにボリュームの多くない記事執筆を3本こなせばOKという予定。
ここは近所の公園の奥地にある人の少ない穴場で、僕のお気に入りの仕事場のひとつ。
まだ残ってくれていた紅葉が、随時目の疲れを癒やしてくれるシステムとなっている。
1本目の原稿を2時間ほどで書き上げ、いったん近所のコンビニへ買い出しに行ってコーヒータイム。こんなフットワークの軽さもまた、チェアワークの利点といえるだろう。
さて、次なる原稿にとりかかる前に、場所を変えよう。気軽に移動ができるのはチェアリング最大の魅力のひとつ。これまたお気に入りの、見晴らしの良いスペースにやってきた。
場所が変われば気分も変わる。気分が変われば新しいアイデアも生まれる。それでも仕事をしていれば、煮詰まってしまうこともある。そんなときはどうすればいいか?
途中ちょっと苦しんだが、チェアワーク効果かだんだんノッてきて後半は順調に進み、2本目の原稿も完了。そろそろお腹も空いてきたけど、ラスト1本の原稿はいちばん軽いやつだ。よし、この勢いで片づけてしまおう!
それじゃあ今度は、開放感のある原っぱに場所を移して……。と、ここでとある媒体の担当編集者から電話がかかってきた。このタイミング、きっと明日が締め切りの原稿の進捗確認だろうな。
「はいもしもし。はいはい。あ、そちらの件ですよね。問題なく進行していて、明日にはお送りできると思いますので!」
「………………」
トラブルが発生すれば天候すらも味方にするのが一流のチェアワーカー。取り急ぎ、締め切りを勘違いしていた原稿を夕方までに大急ぎで仕上げてメールし、あらためて電話連絡すればなんとかなるだろう。これから書く予定だった1本は、そのあとでもなんとかなるはず。
突如ランチに行く余裕はなくなってしまったけど……あ! そういえば、今日はマウスを使わない予定でスペースが余っていたので、ポータブルデスクの引き出しにこんなものをほうりこんでおいたんだった。
朝、家を出るときに何気なく持っただけだったんだけど、これがいわゆる「虫の知らせ」というやつか。大あわてでほおばったら、急いで仕事だ!
結果、なんとか夕方には間に合って事なきを得た。これもチェアワークで機敏に立ち回れたおかげ。もしも今日チェアワークをしていなかったらと考えるとゾッとする。
というわけで、ここまで読んでもまるで冗談のようにしか感じていない読者の方も多いかもしれない。それもそのはずで、まぁ正直冗談ではあるんだけど、「ワーケーション」で画像検索すると、もっと冗談みたいな写真がいっぱい出てくるのも事実。
本当にこんな働きかたをする日があったってぜんぜんいいと思うし、少なくとも僕は、これからもたまにはチェアワーカーとして活動していこうと思っています。
撮影・文=パリッコ
【チェアリングとは?】
・チェアリングとは、アウトドア用の折りたたみ椅子を持って屋外に出て、公園や水辺などの好きな場所に置き、そこをひとときのパーソナルスペースとして好きなようにすごす行為。
・装備が多すぎるとキャンプやバーベキューに近づいてしまうので、なるべく手軽に。
・なので、コンビニやトイレが近くにあると便利。
・そのお手軽さゆえ、気分次第で次々場所を変えてゆけるのも魅力。
・騒がない、汚さないはもちろん、例えば街には、お酒を飲んでいる人間を見るのが嫌な人もいる。「周囲の人々に威圧感を与えない」をモットーとした場所選びを。
↓ご興味があればこちらの入門書もどうぞ。