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profile:湯沢祐介(ゆざわ ゆうすけ)
1980年東京都生まれ。
月に500匹以上のペット撮影を手がける。
七色の声を使い分けてわんちゃんの気を引き、猫じゃらしで猫を操りながら撮影するペトグラファー。
その巧みな猫じゃらしさばきから「猫じゃらしの魔術師」の異名を持つ。
写真教室講師、原稿執筆、テレビ出演、レンタルフォト撮影など多岐にわたる活動をしている。著書多数。

気付かれずにこっそり撮るのがポイント!

野良猫スポットに行く時も、たまたま野良猫を見つけた時も、まずは遠目から様子をうかがいます。野良猫がじっとしている時は徐々に距離を縮め、野良猫が移動している場合は尾行をします。どちらの場合も野良猫に気付かれないようにする事がポイント。こちらに気づくと細い道に入ったり塀を乗り越えて見失ってしまうからです。

野良猫がこちらを意識していないリラックスした状態が野良猫らしい姿を撮るための条件なのです。

こそこそと尾行しているとちょうど階段を登り始めたので、すかさずシャッターを切りました。後ろ脚の肉球もちょうど見えてかわいらしいですよね。歩いている姿を撮る時は距離が離れているので望遠レンズを使うといいですよ。

さて私が野良猫を撮る時のテーマの一つとして「こっそり感」を意識しています。

これは野良猫の生活を人間がこっそりと覗き込んでいる感じを表現するために重要なテーマです。

毛づくろいをしているシーンもこの写真のように前ボケとして植物を入れる事で猫の世界を覗き込んでいるようなこっそり感を出す事が出来るのです。

望遠レンズで遠くから撮ると前ボケが入れやすい。
望遠レンズで遠くから撮ると前ボケが入れやすい。

植え込みの方へと歩いていく野良猫を発見。しばらく様子を見ていたらガリガリと爪研ぎを始めました。

木を使って爪研ぎをする姿は家猫の爪研ぎとは一味違うワイルドさがありますよね。

このシーンは狙って撮れるものではありません。野良猫を見つけて長い時間観察していると、稀に見る事が出来ます。被写体を見つけ、辛抱強く待っていい瞬間を撮るという野良猫撮影は野生動物撮影と共通する部分が多いです。

こちらを睨む鋭い目線がたまらない

遠くからこっそり狙っていても半野生の野良猫はこちらに気づきます。

そんな時はこちらを鋭く睨みつける姿も撮りましょう。

こちらに気付き、睨みつける猫さん。この表情がたまりません。
こちらに気付き、睨みつける猫さん。この表情がたまりません。

目があってもこちらがこれ以上近付かなければ「敵ではない」と判断してその場に留まってくれます。急に動いたり物音を立てると驚いてしまうので立ち去る時はゆっくり動くように心がけましょう

公園内をウロウロしていると同じくウロウロしている野良猫を見つけました。

どこに向かうのかな?と尾行していくと花壇に入り土をホリホリし始めました。

何をするのかもうお分かりですね?

このあと掘った穴に排泄して穴を埋めて何処かへ消えて行きました。こんな姿も野生っぽくていいですよね。

私が思う「撮れたらうれしい野良猫写真」

野良猫撮影をしていて個人的に撮れたら嬉しい写真はこちら。

木登り猫です。

猫は木登りが上手ですが、その姿を見る機会は意外と少ないのです。

木のそばで野良猫を発見すると登ってくれないかなとドキドキしながら待ちます。

実際に登っているシーンを見た時はテンションが上がりますが、猫に悟られないように平静を装いましょう。木が多い公園などで撮影する時は木の上を探す事もお忘れなく。

街にいる野良猫を撮ろう

半分野生の野良猫は街中でも出会えます。野良猫が多い街を歩いていると高確率で遭遇しますよ。

街中で撮る野良猫写真は、公園など緑の多い場所で撮るのとは違った魅力があるので挑戦してみましょう。

魚屋の前を歩く野良猫。
魚屋の前を歩く野良猫。

私が好きなのは綺麗な街並みよりもちょっと淋しげな、ちょっと汚れたイメージの写真です。その方が野良猫のたくましさが表現できるからです。

家と家の間の細い路地。この小汚さが美しい。
家と家の間の細い路地。この小汚さが美しい。

民家においてある瓶のお水をぐびぐびと美味しそうに飲んでいる猫を発見。

よほど喉が渇いていたのか人が近くを通っても気付かずに飲み続けていました。

こんなシーンも街の野良猫ならではですよね。

街中で野良猫を撮る時は周りにいる人やお店などの邪魔にならないように注意しましょう。

また他人の敷地内に入るなどの迷惑行為はしないように、モラルを持って撮影に挑んでくださいね。

この仕事をしていると「犬と猫どっちが好きですか?」と言った質問をよく受けます。どちらも好きですがどちらかを選べと言われたら「猫」である!幼少期から動物好きだった私ですが、ペット飼育禁止のマンションに住んでいたため、犬や猫を飼うことができませんでした。そんな私の動物と触れ合いたい欲求を満たしてくれたのが、近所に住み着いていた野良猫。近づいてきてスリスリする子がいたり、適度な距離を取る子がいたりと性格は様々。その自由な振る舞いがとても愛らしく思えたものです。そんな少年時代を過ごした私は近所の散歩はもちろん、初めて行く場所でもついつい野良猫を探しながら歩いてしまうのです。ペトグラファーという肩書きで活動している私がペット以外に一番多く撮る被写体が野良猫です。そこで今回はペットと野生動物の中間に位置している野良猫を探すコツをお話しします。
前回は野良猫探しのコツをお話しましたが、今回はいよいよ野良猫撮影の基本のお話です。野良猫は半分野性の生き物なのでペットとは撮影の仕方が違います。私も野良猫撮影の時は緊張感を持って撮影しているのですが、その方法を話す前にまずは私が野良猫撮影で使用している機材をご紹介しましょう。私が使用するレンズは70-200mmの望遠レンズ、24-70mmの標準ズームレンズがメインです。望遠、標準のズームレンズが2本あれば十分ですが、さらに50mmや85mmの単焦点レンズがあればより美しい写真を撮る事ができます。狙う被写体に合わせてこれらのレンズを使い分けて撮影します。カメラは小型軽量なミラーレス一眼がオススメです。

写真・文=湯沢祐介