130年以上続く老舗茶農園の新たな挑戦

まい泉のある原二本通りから一本入った、静かな場所に店を構える『カネ十農園 表参道』。店内に入ると、フロアを一周するようにぐるりと囲ったカウンターが目に入る。

そう、この店はカフェを併設したお茶屋さんなのだ。体験型日本茶ティーサロンとして2018年にオープンした同店は、2019年に日本茶の可能性をさらに広げるべく、メニューやオペレーションを刷新してリオープンを果たした。お茶のほかに、この店でしか食べることのできない季節のお茶を使ったスイーツも提供しており、日々多くの人が訪れている。

カネ十農園は、1888年に静岡県牧之原市で創業した歴史ある茶農園。日本最大の茶産地としても知られる牧之原台地に、今では約27ヘクタールもの広大な茶畑を所有し、130年以上お茶づくりに携わっている。

そんなカネ十農園の最大の特徴は、土づくりから生産、選別、火入れ、加工、そして販売までの全工程を、一貫して自社で行っている点だ。そうすることで、農園が目指す「新鮮で風味豊かな茶葉」を作ることができるという。

長い間、卸を中心に事業を展開しているカネ十農園だが、社長の代替わりをきっかけに、2016年からオリジナル茶葉の販売も開始。「新しく自分たちで、直接お客さんの手に届く商品を作りたい」という想いからスタートし、今では牧之原で連綿と受け継がれてきた製茶法だけでなく、国内外の新しい技術も取り入れた9種類の茶葉が販売されている。

農園の想いが伝わるお茶

オリジナル商品を販売し始めた当初は、多数のブレンドティーなどの茶葉を展開していたという。だが、時を経るごとにカネ十農園のテーマである“牧之原から芳醇なひと時を”に通じる農園の想いや気持ちを伝えていきたいと、それらが伝わる商品のみに厳選していったようだ。その想いは、商品名が書かれたプレートに添えられている、お茶の説明や製造過程のエピソードなどからもしっかりと伝わってくる。

カネ十煎茶2160円(缶入)、1512円(袋入)、1296円(ティーバッグ)。

そんな選ばれし9種類の商品の中で、最も代表的な商品がカネ十煎茶である。茶葉以外にも、通常は仕分けされてしまう茎や、製茶の際に出る粉も含んでいるため、「畑まるごと味わえる」と、店長の加藤大地さんは説明する。また、カネ十煎茶は収穫したばかりの生茶葉をじっくりと時間をかけて蒸し上げる、牧之原発祥の製茶法を採用。そのため、渋みもやわらかく、芳醇さが際立った味わいで、まさにカネ十農園のテーマを体現したお茶に仕上がっている。煎茶のほかには、棒茶や焙じ茶、玄米茶、季節限定のシーズナルティーなどが並ぶ。別売りで販売しているギフトボックスを購入すれば、自由に詰め合わせることも可能だ。

別売りで販売しているギフトボックス220円(2個セット)、275円(3個セット)。

お土産や贈り物にも喜ばれそうなパッケージデザインは、明治時代以降に広く伝わったとされる輸出茶ラベル・蘭字(らんじ)をモチーフにしている。加藤さんによると、「その歴史を知るお客さんにとっては懐かしく、若いお客さんにとってはおしゃれに映る」ようだ。

店長の加藤さん(右)とスタッフの前山田さん(左)。

『カネ十農園 表参道』では、加藤さんらが「作り手の人たちが大切に作り上げたお茶を、いかに多くの人に届けられるか」を使命に、日々さまざまなアイデアを出しながら、徐々に認知度を広めてきた。スイーツ目当てに訪れたお客さんが、帰りにお茶を購入する流れも生まれているとか。「若い人にも日本茶の可能性をこれからもっと伝えていきたい」と話す加藤さんの想いが確実に伝わっているようだ。

『カネ十農園 表参道』店舗詳細

取材・文・撮影=柿崎真英