「早起きラジオ体操会」発足!

昭和の小学生は夏休みも早起きだった。ラジオ体操に通うというミッションがあるからだ。昭和3年(1928)に「旧ラジオ体操第1」が制定され、ラジオ体操放送が始まった。昭和5年(1930)には全国初の「早起きラジオ体操会」が佐久間公園(千代田区神田佐久間町)で発足。昭和7年(1932)には「もっと激しい運動を!」という青壮年の声に応えて「旧ラジオ体操第2」が誕生した。この年のラジオ体操放送聴取率は48%というからすごい。一方で第二次世界大戦後、新しく制定されたラジオ体操の中継放送が再開されたのは昭和26年(1951)の松葉公園(台東区松が谷)。そう、ラジオ体操の歴史は千代田区と台東区の公園にあるのだ。

「ラジオ体操中継放送再開の地」である松葉公園。なお、こちらのラジオ体操会は元日も含め、年中無休。小雨程度なら決行するというから、うーん、気合入ってます……。
「ラジオ体操中継放送再開の地」である松葉公園。なお、こちらのラジオ体操会は元日も含め、年中無休。小雨程度なら決行するというから、うーん、気合入ってます……。

昭和の風物詩、ラジオ体操は令和の世でもまだまだ元気

午前6時、松葉公園を拠点に活動するラジオ体操会のメンバーが集まってきた。松源寺の住職で同会会長の佐々木素孝さん歴史(84歳)によれば、この場所でラジオ体操が始まったのは昭和6年(1931)。お立ち台の上で模範演技を見せる副会長の荒井孝雄さん(85歳)は「やっぱりラジオ体操効果だろうね、肩凝りなんか一切ないよ」と笑う。みなさん毎朝顔を合わせることで地域のつながりも密接になり、年1回の懇親旅行も行っているそうだ。

元気よく体を動かした後は、佐々木会長から煎茶が振る舞われる。この日は梅干しがサービスで付いてきた。
元気よく体を動かした後は、佐々木会長から煎茶が振る舞われる。この日は梅干しがサービスで付いてきた。
50年以上も前のペナントを持つ副会長の荒井さん。
50年以上も前のペナントを持つ副会長の荒井さん。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目前に控えた東京都もラジオ体操に目を付けた。小池都知事はオリンピック開催期間に合わせて職員全員でラジオ体操を行う「みんなでラジオ体操プロジェクト」を発表したのだ。また、JALや大林組といった大企業も職場でのラジオ体操を導入している。全国ラジオ体操連盟、かんぽ生命保険などが主催する「1000万人ラジオ体操・みんなの体操祭」は2019年が58回目で、7月28日に開催された。会場となる駒沢オリンピック公園総合運動場に全国のラジオ体操愛好家が集結。ラジオ体操版甲子園のような熱気に包まれるだろう。なお、イベントの模様はNHKで生放送される。一年でラジオ体操がテレビ中継されるのはこの日だけ。貴重な瞬間だ。昭和の風物詩といえるラジオ体操。松葉公園で出会ったお年寄り同様、令和の世でもまだまだ元気なんです。

もうすぐ100年! ラジオ体操の歴史

1925年(大正14)

アメリカの生命保険会社・メトロポリタンライフでラジオ放送による健康体操が行われる。

1927年(昭和2)

海外の保険事業視察から帰国した逓信省簡易保険局(現在のかんぽ生命)・進藤企画課長が『逓信協会雑誌』に「健康体操放送を開始せよ」と題する論文を発表。

1928年(昭和3)

天皇陛下即位を記念する国民的事業として簡易保険局が中心になり、「旧ラジオ体操第一」を制定。東京中央放送局からラジオ体操放送が始まる。

1929年(昭和4)

ラジオ体操放送が全国ネットになる。

1930年(昭和5)

神田万世橋署の面高巡査が佐久間公園で「早起きラジオ体操会」を開始。

1932年(昭和7)

青壮年向きの体操として「旧ラジオ体操第二」を制定。全国ラジオ体操の会が始まる(延べ参加人員2593万人)。

1939年(昭和14)

厚生省が国民の体力向上を目指す「旧ラジオ体操第三」を発表。

1948年(昭和23)

第二次世界大戦の影響を受けてラジオ放送が中止。

1951年(昭和26)

現在の「ラジオ体操第1」を制定。放送再開の中継が台東区の松葉公園から行われる。

1952年(昭和27)

職場向けの「ラジオ体操第2」が制定される

1962年(昭和37)

全国ラジオ体操連盟創設。
11の都市が持ち回りで開催する「1000万人ラジオ体操祭」がスタート。

1978年 (昭和53)

ブラジルでラジオ体操会が発足。

1999年(平成11)

国連の「国際高齢者年」にちなんで「みんなの体操」が制定される。

2003年(平成15)

ラジオ体操が「2003毎日スポーツ人賞文化賞」を受賞。

2018年(平成30)

東京都が「みんなでラジオ体操プロジェクト」を始動。夏季は都庁職員も職場でラジオ体操を行うことに。

取材・文=石原たきび 撮影=佐藤七海(編集部)
『散歩の達人』2019年7月号より