昭和の喫茶文化に現代的な感覚を掛け合わせた空間
交通の便がよく、駅の南北に商店街があるため暮らしやすい中野エリアは、サブカルチャーの発信地としても知られている。その象徴と言えば、駅の北側にある複合商業施設「中野ブロードウェイ」だろう。
駅の北口から中野ブロードウェイの1階を真っすぐ通り抜け、横断歩道を渡ったところにあるのが『不純喫茶ドープ 中野店』だ。店舗は水色の軒先テントが張られたビルの2階で、階段が歩道に面しているためわかりやすい。
階段をあがる前に、まず食品サンプルの棚に目がとまる。コーヒーやクリームソーダ、ナポリタンといった純喫茶っぽいメニューに交じって、ウイスキーのサンプルを発見。お酒も扱っているから「不純」なんだ、と妙に納得した。
会社全体を統括する村澤巧(むらさわたくみ)さんは「『せつない気持ちのゴミ捨て場』というコンセプトのもと、2020年7月29日にオープンしました」と語る。
「昭和の喫茶文化に現代的な感覚を掛け合わせた空間としてスタートしています。中野という街はカルチャー性と日常性が共存しているため、この世界観を自然に受け入れてもらえる街だと感じ、出店しました」
レンガ模様の壁から照明器具、装飾品まで、昭和の香りが漂う店内に流れる音楽は、日本のヒップホップ。昭和感と現代感が絶妙なバランスで調和した空間だ。そのため「喫茶店利用だけでなく、撮影場所としてもご利用いただいています」と村澤さんは言う。
「ご来店されるお客さまは20~30代が中心ですね。SNSをきっかけに初めていらっしゃる方が多い一方で、空間や雰囲気を気に入って繰り返しご来店くださる方も多いです」
昔懐かしいクリームソーダと普通じゃないバナナサンデー
メニューには、プリンやパフェといった甘味、ホットコーヒーやクリームソーダなどのドリンクを中心に、食事やお酒もそろっている。今回は村澤さんのイチオシ、クリームソーダ ブルーハワイ770円と、普通のバナナサンデー1050円を注文した。
なお、お酒を使用した不純なクリームソーダ各種820円や、不純なバナナサンデー1100円などのアレンジメニューもある。休日や夕方以降に来店したときは、不純なバージョンを選んでみるのもいいかもしれない。
スタッフの谷さんがクリームソーダ ブルーハワイと、普通のバナナサンデーを用意してくれた。調理のポイントを聞くと、「とにかく見た目のよさを突き詰めて、常に高いクオリティで出せるように意識しています」と笑う。
村澤さんいわく「喫茶店の定番メニューをベースにしながら、見た目だけでなく、良い意味でこれこれ、と思っていただける味を意識している」そうだ。写真映えするビジュアルに目を奪われるが、もちろん味にも気を配っている。
さっそくクリームソーダ ブルーハワイをいただこう、と思った直後、どこから手をつけるべきか悩む。てっぺんのバニラアイスが大きすぎて、グラスに口をつけて飲むのは難しい。かといって、スプーンでアイスをつつくと、ソーダがあふれてしまう
ややあってストローがあることに気付き、まずはソーダを飲んでからアイスを食べることに決めた。が、そのときにはすでにグラスからこぼれたソーダでテーブルがびしょびしょに……。これには谷さんも「皆さん、こぼしながら飲まれています」と苦笑い。
肝心の味は、ブルーハワイというだけあって、かき氷を思わせるどこか懐かしいテイスト。ラムネのような甘さと炭酸の刺激とともに、トロピカルなフルーツの風味も感じられる。バニラアイスのまったりとしたミルク感とも相性がいい。アイスを食べるとソーダが飲みたくなり、ソーダを飲むとアイスが食べたくなる。
続いて、普通のバナナサンデーに取り掛かるものの、こちらも一筋縄ではいかない。縦半分にカットされたバナナの上にバニラアイスが3つ。アイスの上にはホイップクリームとサクランボがタワーのように盛られ、全体にチョコソースがかけられている。バナナから手をつけたらタワーが崩れるのは明らかなので、右端のタワーのてっぺんから食べ進めていく。
ほんのりビターなチョコソースが、ホイップクリームとバニラアイスの甘さを引き立てる。タワーの下のバナナには、チョコソースやバニラアイスがかかっており、ちょっと贅沢なチョコバナナのよう。
さらにバニラアイスの下、カットされたバナナのあいだには、ラスクが入っていた。ラスクをかじると、香ばしい風味とともにチョコソースやバニラアイスが染み出して、これだけでも立派なスイーツだ。「ラスクは揚げているだけ、味なしで入れているんですよ」という谷さんの言葉には驚かされた。
普通のバナナサンデーは、「普通の」というネーミングに反してボリューミーでありつつ、飽きがこない構成だ。クリームソーダを含め、思わず「これこれ」とうなずきたくなる、懐かしくて安心する味わいを堪能できる。
買って帰りたくなるオリジナルグッズも見逃せない
唯一無二の空間づくりと個性的なメニューの数々で、来店する人の心をつかんで離さない『不純喫茶ドープ 中野店』。同店の今後の目標と展望を村澤さんに聞いた。
「今後もご来店いただいた方の記憶に残るような空間であり続けたいですね。食品サンプル作り体験、グッズ展開、撮影場所の貸し出しなどを含め、当店の世界観をより多くの方に楽しんでいただける展開を続けていきたいと考えています」
店内で販売されている各種グッズは、ECサイトでも購入できる。谷さんを含むスタッフが着用しているTシャツ3900円のほか、店内に貼られているポスターは全5種類あり、1枚600円(シワなどが入っているB品として販売)。ポスターの絵柄はランダムだ。オリジナルのドープステッカー1枚110円もある。ちなみに飲食の代金を含めて会計はキャッシュレスのみ、現金は使用できないのでご注意を。
店内を見渡すと、ブラウン管テレビやレコードプレーヤー、クマの氷削り器(かき氷機)など、いまはあまり見かけなくなったものが目にとまる。そんなノスタルジックな雰囲気を取り入れた空間も、現代の若い世代に刺さっている。この事実は、奇をてらったような一過性の流行ではない。一度味わえばまた味わいたくなるメニューを提供する、確かな実力の賜物なのだろう。
取材・文・撮影=上原 純







