生活感と高揚感が混じり合う商店街の雑居ビル。その一室で営む隠れ家的古着店
下北沢駅の改札を抜けると、駅前には広場がある。その向こうに大きなスーパーマーケットが見え、買い出しに訪れる周辺住民や飲食店を営む人など、客足が途切れる様子はない。歩いていくと、近くに小劇場が点在し、開場前なのか入り口に列ができている。さまざまな目的を持った人たちが行き交い、生活感と高揚感が混在するエリアに古着店『UTA』はある。
雑居ビルの横から階段を上ると『UTA』の入り口が現れる。店内はこぢんまりしているが、文字通り足元から天井まで商品でいっぱいだ。ロサンゼルスで仕入れたものをはじめ、国内外の古着が充実。四方八方を囲まれ、どこから見ようか迷うのも楽しい。
古着は8割がレディースで、60年代から最近のものまで揃う。ビンテージのアクセサリーなど、アート作品のような小物にも興味をそそられる。ブランドものも多いが、「デザインがおもしろければノーブランドでも積極的に仕入れます」と店主の池田剛さん。確かに、「これはなんのモチーフ?」と会話のきっかけにもなりそう。
まるで宝探し気分!古着やアクセサリーなど膨大な商品からお気に入りを探す
かつて、演劇に携わっていたという池田さん。90年代には舞台の設営や照明を手伝うため、下北沢にもよく来ていたのだとか。2000年には、妻の出身地である長野県松本市で古着店を開業。2002年、なじみのある下北沢で姉妹店として『UTA』を始めた。
2000年前後の下北沢は、まだ再開発が本格化する前で、ごちゃっとした昔ながらの街並みが残っていた。ディープな空気が漂い、その残り香は『UTA』の店内でも感じられる気がする。
「でも、人出は今の方が圧倒的に多いんですよ。お客さんも、いろんな人が来てくれるようになりました」
日本人客は「かわいい」「かっこいい」と直感で選び、外国人観光客はブランドものを探しにくる人が大半だという。
古着を選んだら、それに合わせてアクセサリーを探すのもいい。細かい図柄を施したものや動物モチーフなど、何か一つ身につけるだけでアクセントになる。手の込んだ細工はビンテージならでは。膨大な量を集中してチェックしていると、まるで宝探しをしているような気分になる。
コーディネートのコツを聞くと、「直感でいいと思います」と池田さん。確かに、組み合わせをあれこれ考えるのも楽しいが、結局はその服を着て気持ちが上がるかどうかが肝心だ。古着初心者の場合は、まず一つ、お気に入りを見つけるのがおすすめ。アクセサリーやバッグなど、小物だと挑戦しやすいかもしれない。
ルールは無用。古着ならではのデザインや質感を好きなように楽しんで
池田さんがセレクトしてくれたのは、毛糸で編んだ葉っぱやどんぐりで飾り付けられたニットカーディガン。ボタンも毛糸で編まれた葉っぱになっていて、現代の大量生産ではかえって作るのが難しいはず。アメリカで仕入れたもので、古着のニットならではのくたっとした柔らかい質感もいい。これを着てぜひ秋の散策にでかけたい。
ニットカーディガンが主役の組み合わせだが、せっかくならバッグもカラフルにしてはどうだろう。ビビッドカラーのピンクが映え、気持ちがさらに華やぐ。大粒のイミテーションパールなど、飾りがあしらわれたチェーンは、ニットの葉っぱと互いに個性を主張し合い、にぎやかな印象。そのおかげで、実に楽しげなコーディネートになっている。
ケミカルウォッシュのジーンズは、80年代のアメリカ古着。ダメージ加工が施された味わい深い一品だ。フェミニンなアイテムも、これを合わせればカジュアルダウンすることができる。そんな発見のおかげで、ファッションに対する気負いがなくなっていく。
懐かしさを感じる下北沢を体現するような、カオスな魅力があふれる『UTA』。感覚を刺激し、興味の幅をぐっと広げてくれる。価格帯が比較的リーズナブルなので、普段はしないファッションにも挑戦しやすくてうれしい。マニアはもちろん、初心者にとってはまだ見ぬ世界を見せてくれる店だ。
取材・文・撮影=信藤舞子







