培った技術とイタリア産素材を組み合わせた本場の味
『Rita.』という店名は、利他が由来で「おいしい料理で幸せな気持ちになってもらいたい」という意気込みを込めた。オーナーシェフの稲垣由生(いながきゆうせい)さんがナポリで働いた名店『Starita(スタリータ)』にも響きが似ていることが決め手になったという。「.(ドット)」がついているのは、この店をスタートに発展していきたいという願いが込められている。
稲垣さんはイタリア料理歴25年余り。2006年にナポリで行われた世界最高峰のピッツァの祭典PIZZA FESTのテクニカル部門で最優秀賞を受賞した経歴の持ち主だ。ナポリでも研鑽を積み、2022年に独立して『Rita.』を開いた。
稲垣さんは「ピッツァは、シンプルな料理なので、同じ材料やレシピでも人によって違うものができるんですよ」と話す。ピッツァの生地は、敢えてイタリア産の小麦を選択。3種類をブレンドして、24時間以上かけてゆっくり発酵させている。チーズや具材も、ほとんどイタリアの食材を使って、これまで培った確かな技術で本場の味を蒲田で再現している。
ピッツァの大会で賞も獲得した実力者の稲垣さんだが、ピッツァの職人というよりもイタリア料理のプロとして日々厨房に立っているそう。パスタや前菜はもちろん、お肉の煮込みやローストといったディナーのメインとなるひと皿も時間と手間をかける。
調理するにあたって、すべての材料を一つひとつ計量しながら調理するわけにはいかない。その分感覚を研ぎ澄ませ、火の大きさにも気を使って、変化を見極めている。特にパスタは、ソースの油分と水分をしっかり乳化させ、麺に絡ませることを意識する。提供した瞬間は熱々で、その後も温度や一体感のある状態が保たれるようにと気を配っている。
平日はカジュアルに、週末はコースで贅沢ランチ
平日のランチは、ピッツァかパスタを選び、サラダ、ドリンク、デザートが付く。ピッツァは5種類前後、パスタは3種類ほどから選べる。サラダは、前菜が添えられていることもあり、『Rita.』を初めて体験するにはぴったりだ。
週末や祝日のランチは、2人分からのコース仕立て。その日によって内容が違う季節の前菜の盛り合わせは8種類前後とたっぷり。加えてサラダにハーフ&ハーフが可能なピッツァ、パスタにデザート、ドリンクも付くという盛りだくさんの内容だ。おいしいものでおなかいっぱいになってもらいたいという気持ちが表れている。
品数や量に限らず、『Rita.』は、店名通りサービス精神旺盛なお店だ。本格的なピッツァのお店ではあまり見ない選べるハーフ&ハーフや、4種類の味を組み合わせるクワトロスタジオーネも提供しているのも、来てくれた人を喜ばせたいというシェフの真摯な思いの表れだ。
「当然手間もかかりますし、具が違うから焼き方にも配慮が必要です。でも2種類が選べたり、いろんな味が楽しめたりするとうれしいですよね」と稲垣さん。
クワトロスタジオーネの準備作業を見せてもらうと、当たり前だがソースや具、チーズなどをのせる作業が普通のピッツァの4倍近く必要だ。ただ、実際に焼き上がったクワトロスタジオーネが目の前に出されると、味や見た目の違いにワクワクする。
アルバイト先での出会いが導いた料理人の道
稲垣さんが料理の世界を目指したのは、夜間の学部に通っていた大学時代のこと。学費を工面するためにアルバイトをした飲食店で出会った料理人の姿に魅せられた。「どんな作業も速くて正確できれい。自分もああいう風にできるようになりたいと思ってのめり込みました」。魚のおろし方、野菜の切り方、肉の掃除、火入れなど料理の基本はその師匠から教わった技術が今につながっている。
目標にしたいと思える大人に出会って料理の道を志した稲垣さん。お店では経営者として若いスタッフと一緒に働く立場になったが、今後も現場に立ちながら、お店をリードしていきたいと話す。
ストイックともいえる稲垣さんの姿勢は、お店の雰囲気作りにも反映されている。「店内はあえてシンプルな雰囲気にして、スタッフも白いエプロンと白いTシャツを着用しています。その分、出てきた料理が華やかでおいしい。そこからスタッフや店全体にも興味を持ってもらえたらうれしいですね」。
平日はもちろん、蒲田での休日に、いつもよりゆっくりランチを楽しみたいときに『Rita.』を訪れてみてはいかが?
取材・撮影・文=野崎さおり






