手塚理美
てづかさとみ/東京出身の俳優。小学生のころからジュニアモデルとして活躍し、映画、舞台、ドラマと幅広く活動。2025年に芸能事務所から独立、フリーに。趣味は散歩。Instagram:tezuka_satomi
夏の訪れを感じる6月の火曜13時、東武東上線志木駅の改札で待ち合わせ。
手塚 はじめて志木駅で降りました。
——改札を出てすぐに商業施設がいっぱいで、毎日の生活に便利そうですね。さて、このあとは、いつもだとおにぎりめがけてダッシュですが、今日はおにぎり屋さんをガチロケハンのコースに組み込んでいません。
手塚 リサーチで、『桔(きつ)の実』さんというおにぎり屋さんを見つけたんだけど、私の好きなシンプル梅干しがあるかどうか分からない。だから、思い切って、おにぎりなしにしてみようかなって。
――おにぎり呪縛なし! 私はちょっとうれしいかもです。
手塚 新河岸川沿いにあるあじさいロードをめざしてテクテクいきましょう。それと、志木ってかっぱ伝説のある街なんですって。途中でかっぱさんに会えたらうれしいわね。
志木駅から北へ向かって大通りを歩く。「しきのまつり」を扱う酒屋『三崎屋』をのぞくが、あいにくの休み。おにぎり店『桔の実』も休み。
志木には、寺の和尚に助けられたかっぱがお礼に大きなフナを届けたという民話が伝わるようで、今やかっぱは街のシンボル。像やイラストがあちこちにある。
——そこに、「生うどん1玉90円」って張り紙があります。
手塚 なんだか、ヒットな予感しない? お酒の自動販売機もある!!
——お邪魔してみましょう。
手塚 雰囲気もあって、ステキなお店。生うどんは、絶対においしいと思う。美香さん、買っていっちゃう?
お店は『角長商店』という食料品店だった。生うどんは、このあと1日持ち歩くことに不安を感じる。店番をされていた方いわく、18時くらいまでなら開いているかもしれないというので、また戻ってくることにする。
そこから、地域の産土神(うぶすながみ)として、古くから氏子の信仰を集めてきたという敷島神社へ。境内には「志木のお富士さん」と呼ばれる田子山富士塚も。裏手にまわって、新河岸川の土手に出る。
手塚 たっくさんのアジサイさん! ここがあじさいロード(新河岸川あじさいロード)ね! アジサイの見頃って逃しがちだけど、お天気もいいし、タイミングばっちり!
富士下橋(赤橋)を渡り、新河岸川沿いの「いろは親水公園パークセンター」脇を通り、いろは橋を戻って、「旧村山快哉堂」へ。「村山快哉堂」は明治10年(1877)に建築された、店舗や住宅の機能を備えた店蔵。火曜休館。脇の『Bakery & Cafe DAISY』というカフェにて、冷たいビールでひと休み。
手塚 ぷは~。のども乾いていたし、グラスがきれいだからなのかしら、ビール、最高においしい♡
——このあとは、手塚リストによると『マルケンミート』さんですね。ここから歩いて、30分はかかります。
手塚 ふふふ、『マルケンミート』さんには「はたざくらカッピーコロッケ」という名物があって、しかも、買ったその場で揚げてくれるみたいなの。
——資料には、「志木市の長勝院旗桜(ちょうしょういんはたざくら)にちなんで、ジャガイモのコロッケの中に桜の花びらをあしらい、さらにかっぱ伝説をイメージしてキュウリの柴漬けなどを入れた、ピンク色の鮮やかなコロッケ」とあります。
手塚 超楽しみ~。
住宅地の真ん中に『マルケンミート』はあった。地域のお肉屋さんの雰囲気。しかし、肝心の「はたざくらカッピーコロッケ」は、日曜にしか販売がないとの話(お手間がかかるそう)。「宗岡の高倉健」を名のるご主人がつくった焼き豚と、ほくほく揚げたてのコロッケだけを買った。
手塚 コロッケはおいしいけど、カッピーコロッケが食べられなかったのは、めっちゃ残念。
——まだ17時ちょいです。急いで戻れば、あれに間に合います。場所は、さっきGoogleマップに登録しました。私についてきてください!
来た道とは違う道をくねくね戻る。「こっちの道の方が早いんじゃない?」との手塚さんからのサポートよりもGoogleマップに信頼を寄せ、競歩みたいなスピードで歩く。
——ぜえ、ぜえ、やっと着きました!
手塚 もしかして、ここ『飯田酒店』さんじゃない?
——そうです。お店は閉まっていますね。お休みかな? お酒に関するイベントをやっている酒屋さんで、一度来てみたかったんですよね~。
手塚 美香さん! 生うどんでしょ、さっきの生うどんを買いに、18時までに戻るんでしょ!
——そうでした! 私、コロッケを食べてから、完全にビールの口になっていて、なに考えてたんだろう!
急いで折り返した『角長商店』。18時の5分前だったが、扉はぴっちり閉まっていた。足をひきずりながら、志木駅近くで、悲しみの反省会。
手塚 今日は、お休みのお店も多かったし、いろいろかみあわない日だったわね。でも、このちぐはぐ感こそガチロケハンの面白いところ。とはいえ、カッピーコロッケもなし、生うどんもなしで、ダブルダメージ(笑)。美香さん、少し飲んだら元気になった?
——元気になるために、何杯必要かをはかりかねています。
手塚 志木にはまた来なくっちゃね。
後日談。『角長商店』に電話。電話に出てくれた方は「うちのお店は、いつまで残っているか分かんないよ」と言いながら、江戸時代の嘉永2年(1849)の創業であること、庭には狐が埋まったお稲荷さんがあることを教えてくれた。そして、お店は閉めるのはだいたい17時だそう。
構成=H岩美香(編集部)
『散歩の達人』2026年9月号より








