奇天烈な発想に行動力。お客さまの喜びのために
つくばで、ザ・マミィの林田洋平さんのインタビューを終えた取材陣。次の取材先は、守谷にあるシーフードレストラン『メヒコ』だ。移動の車内で平岩編集長が言う。「林田さんは、このあとどうされますか。つくば駅か、それともご一緒に、フラミンゴを見ながらカニピラフが食べられる『メヒコ』に行かれますか?」。
そして我々は「興味あります」と言ってくれた林田さんを、半ば監禁状態で『メヒコ』に向かう。ザ・マミィは単独ライブのチケットが売り切れるまで自ら小部屋に閉じこもる、通称・監禁という販売芸でおなじみ、とはいえだ。
『メヒコ』に到着。営業本部事業部次長の橋本雅宏さんは、創業者が仕事でメキシコに行った際、海辺に群棲しているフラミンゴの美しさに感動したという話から「だからフラミンゴなんですよ」と教えてくれた。「感動」から「だから店内でフラミンゴを飼育する」の間に、「メキシコ」から「守谷」くらいの距離を感じるし、高度経済成長期の夢や勢いも感じる。
「殻付きと剥き身、どっちがいいですか?」と、ふいに私に問いかける編集長。おそらく食べやすいのは剥き身が乗せられたほうであろうが、メキシコでフラミンゴの群れに感動し、自分がレストランを開店する際にフラミンゴをお客さまに見てもらおうという奇天烈な発想と実際にフランゴルームを作った行動力、その後約30年同じ飼育員さんが大事に大事にフラミンゴを育て続けているという継続は力なりを考えると、私だけが楽をするわけにはいかなかった。意を決した。「両方頼みましょう」。
そして、本来なら即帰宅したいタレントと、編集長、ライター、カメラマンが今31羽のフラミンゴに見つめられながらカニピラフを食べている。「女は皆正気じゃない」とちゃんみな先生は歌うが、女のみならず、人間は皆正気じゃない。インタビュー中に林田さんは「(芸人を)辞めようと決めた芸人って、顔で分かる。ちゃんと目の焦点があっている」と話していた。卓上にある「フラミンゴQ&A」シートから得たフラミンゴ豆知識を披露する林田さんの目は、だいぶ遠くを見つめている。
カニのうまみを存分にまとったお米は軽妙な歯応えを残しつつ、あっという間に胃袋へと消える。カニの殻には身がぎっしりと詰まり、そのひと欠片も無駄にしたくない我々はただ黙ってカニの身を剥く。沈黙の中「こんなおいしいカニピラフ食べたことない!」という驚きと「なぜフラミンゴなのか?」という疑問が頭の中で戦う。「お客さまに喜んでもらいたいからだそうです」。既に「フラミンゴQ&A」を我が物にした林田さんが「なぜフラミンゴなのか」という疑問に答えてくれた。
1羽のフラミンゴがすくっと立ち上がると、足元には生まれたばかりの小さくてふわふわした雛(ひな)が。圧倒的な生命の輝きに、我々は正気に戻りかける。「あれはオスですね。ちょっと足が太い」。林田さんだけがまだ「フラミンゴQ&A」の中にいた。
取材・文=西澤千央 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2026年7月号より






